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【内野守備上達ドリル・後編】國學院大学 上月 健太コーチに聞く「上達のポイントは持ち替えのスピード差」

2016.11.01

 守備特集「内野守備上達ドリル」前編では、「選手の本質を見出すキャッチボール」について、國學院大硬式野球部・上月 健太コーチに解説をしていただきました。後編では、上月コーチに捕球時の流れや持ち替えドリルなどを実際の写真つきで教えていただきます!

気持ちは守るのではなく、攻める

 上月コーチに捕球の仕方や捕球位置について解説いただいた。こちらは上月コーチにモデルになっていただき、捕球の流れ、捕球の仕方を実践してただいたので、画像と上月コーチの説明を読みながら理解を深めてほしい。

【内野守備上達ドリル・後編】國學院大学 上月 健太コーチに聞く「上達のポイントは持ち替えのスピード差」 | 高校野球ドットコム
【捕球時の流れ】

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【捕球時の流れ】

 捕球はだいたい左足が前に出る形で捕ります。ただ、左足を出して捕ると思われがちですが、その前の右足に体重が乗っている段階で、打球にどう入ってどう捕るかを判断して、左足を出しながら捕ると、次に出す右足が出しやすくなります。この右足がスローイングの1番のポイントなのですが、しっかりと投げる方向に踏み出す。方向性もそうですし、バッティングのトップを作った状態と一緒で、力を生むのも右足なんです。そして、続く左足も投げる方向に踏み込んで投げると送球が安定します。

 ただし、気をつけてほしいのが、形ばかり意識して、バウンドを合わせなかったり、その形でなければ駄目だと考えてしまうようになること。普通に出れば捕れるのに、形を作ることがメインになって自分が捕りやすいところで捕らずにエラーしてしまう高校生も見かけます。壁当てとかで、こうやって捕るといった意識づけはするにしても、実際に捕球するときは捕ることに集中してください。

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球を握る感覚○

 球の掴み方に関しては、究極を言えば手を使わないで捕る。力を抜いて自分のヘソの前で優しく拾い上げる感じですね。手を使って捕ろうとするとグッと握ろうとする。そうなると球の持ち替えがスムーズに行いにくい。高校生と大学生のプレースピードの差は、この持ち替えの差によるところが大きいと思います。高校生はだいたいの選手が捕ってステップしてから持ち替える。でも大学のレギュラークラスになると捕って持ち替えてからステップして投げる。あるいはステップしながら持ち替えている。そうすることで早く投げる状態が作れて、素早く、精度の高い送球ができるようになりますし、ジャックルもしなくなります。

[page_break:実践!内野手上達ドリル!]

実践!内野手上達ドリル!

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【持ち替えドリル】

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【持ち替えドリル】

 それが高校生では無理かというと、決してそうは思いません。捕ってから早く投げるということをもっと早い段階から意識、癖をつけておけばできるようになることですし、そのための練習も難しいものではありません。持ち替えのドリルとしては、素手の状態で、少し離れたところから球を下から軽く放ってもらって、自分のグラブを持つ手に当てて、反対の手に落とす。ポン、ポンと、ただ、それだけなんですけど、これが基本になります。

 それと頭にボールを置いて、落ちてくるときにリラックスさせたグラブを持つ手で受けて、サッと反対の手に移す。これも手軽にできる方法です。掴みに行こうとすると捕る位置が安定しなかったり、捕球し損なったり、持ち替えに時間がかかる。ただなんとなくフワッと受け止めるくらいでいいと思っているとパッと持ち替えられる。その力の抜けた、楽な感じを覚えてください。それを守備でも同じようにやって数を重ねていけばコツが掴めてくると思います。

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    グラブを捕る位置 ○

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    グラブを捕る位置 ×

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グラブを捕る位置 ○

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グラブを捕る位置 ×

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 グラブのどこで捕るかについては、網の少し下あたりが一般的に芯と言われていて、そこで捕っている選手も多いと思いますが、小指側の手首の上あたりの方が安定するように私は思います。グラブの土手のちょっと先あたり。持ち替えも、ここの方が速くできます。打球を当てるというか、勢いを吸収させるような感じで握らずに右手にポンと落とす。グラブの向きも、立てると確かに球は入ってくるんですが持ち替えはしづらい。腕をブランと下げて、そこから外に45度くらい開いた向きがいいと思いますね。

 打球がグラブに収まったら、両肘をヘソにキュッと寄せてから両手を割ってやると持ち替えやすい。トップは自分が投げやすい位置でいいと思います。

[page_break:スローイング時の注意 / どんなプレーがしたいのか]

スローイング時の注意

【内野守備上達ドリル・後編】國學院大学 上月 健太コーチに聞く「上達のポイントは持ち替えのスピード差」 | 高校野球ドットコム

上月 健太コーチ(國學院大学)

 スローイングは、よくしっかり左肩を入れてからと話す方もいらっしゃいますけど、私は内野守備内の距離だと、左肩、左半身をそんなに入れなくてもいいと考えています。むしろ入れると、それを開く動きで送球がバラバラになりやすくなる気がします。もちろん肩の強さは個々に違いますが、左肩は投げる方向くらいに向いていれば、そこからうまくスイッチして良い送球は投げられます。投げ方に関しても極端に言えばアウトになるなら、どんな投げ方でもいいと思います。

 それと、上に暴投するくらいなら、捕る選手がカバーできるから低い球を放れという方も多いんですけど、私の考えは逆です。試合の中で高く暴投されたら痛いミスになることもありますし、確かに受ける側が捕ってやることもできないですけど、練習のときから暴投しないように大事に、大事に低く投げている子は、どんどん放れなくなっていく。

 捕球する側が捕りにくいのも力ないフワッとした送球がワンバウンドになったとき。強く投げた送球はワンバウンドしても、捕る側は球のラインさえ合わせておけばいいので捕りやすいんです。だから選手たちには「気持ちの部分が守りに入って低い球を投げるくらいなら、ビューンと行ってしまえ。それが高くなってしまったなら、投げる角度を変えればいい。角度が変われば、おまえの暴投は良い送球に変わるから」と言っています。

 試合で実際に暴投しても、そこは勝負ですから。勝負をして駄目だったら直せばいい。ただ最初から負けないようにという守りの気持ちでは前に進めない。肝心なときに送球が届かなかったりする。それは悔いが残りますよね。もちろん狙ってワンバウンドで放る場面もあるんですけど、投げるときは怖がらずに投げる。その方が肩も強くなりますし、苦しい態勢から投げるケースでも繰り返していれば体が強くなる。失敗しないようにではなく、まずは勝負する。そこで自分の力で成功すれば自信がつく。アウトを取るためにどう挑戦していくか。やっぱり守備は攻める気持ちが大切なんです。

どんなプレーがしたいのか

 最後にお伝えしたいのは、守備に限らずですが上手くなるためにはこういうプレーがしたいという欲を持つこと。これはプロに入った3人にも共通するところです。谷内は学年が上がるごとにプレースタイルが良くなっていったのですが、その1つの理由として良い選手を見たときに、ああいうプレーがしたいなと思って、自分で試して、できるようにしていったことが挙げられます。柴田もそうでした。うまい人を見ると少しテンションが上がっていました。山下はバッティングですけど、メジャーとかの動画をしょっちゅう見ていました。

 一度、「おまえ、なんちゅう打ち方をしてんだ」と、こっちが驚くときがあって聞いたら「昨日、誰々を見て」ってメジャーリーガーの名前を口にしていました。あいつはよくモノマネもしていましたね。良いプレーを見て、そのイメージを持って自分で考えて、工夫する。そういうことも上達に繋がると思います。

 球児の皆さんもぜひ、今日からの練習で実戦してみてください!上月コーチ、ありがとうございました!

(文・鷲崎 文彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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