Column

【内野守備上達ドリル・前編】國學院大学 上月健太コーチに聞く「選手の本質を見出すキャッチボール」

2016.10.31

 2012年のドラフトから4年間でヤクルト・谷内 亮太、DeNA・山下 幸輝柴田 竜拓という、いずれも守備力の高い3人の内野手をプロに送り込んでいる國學院大学。彼らの守備を指導した上月 健太コーチに守備の基本から、プレーのスピードアップの秘訣を聞いた。

キャッチボールの1球目に選手の本質が出る

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上月 健太コーチ(國學院大学)

 國學院大の選手たちの洗練された守備の動きを見ていると、徹底した守備練習をされているのかと思うが、上月コーチによるとそうでもないという。

「うちの練習は特に守備に重きを置いてやっているということはないと思います。練習時間の割合も攻撃と守備は半々か、少し守備の方が少ないくらいです。ただ、比重が変わらなくても、守備はすごく集中してやります。ただ漠然と数をこなすとかでなく、キャッチボール1つでも、1球に対するこだわりというのはきっちり持つように言っています。

 キャッチボールを予備運動、準備運動という感覚で始める選手もいるかと思いますが、グラブを持ったらすべてが守備の練習というのが私の考えです。準備は始まる前に自主練習などでやっておき、全体練習としてキャッチボールをスタートさせるときには1球目からビシッと投げるように心掛けさせています。選手にもよく言うんですけど、『1球目にその選手の本質であったり、能力が出る』と考えているからです」

 すべてはキャッチボールから始まるのだ。

「まず準備運動のように投げてから、ここからちゃんと投げます、というのでは、本当の勝負強さは出ないと思うんです。選手によっては、それが力みに繋がって、手だけ力を入れて放ってしまう子もいるので、そういう子には言わないんですけど、技術はあるのに性格的にちょっと気が抜けてしまいがちな子とか、自分はできるだろうと気楽に思っている感じの子には、そういうことを話しています。柴田なんかはそういう意識を持つようになって、実際にそれができるようになって自信をつけていけたという話をしていました。

 どんな選手も試合での最初のプレーというのは緊張しますよね。内野手なら最初に飛んできた打球を上手く捕れたり、送球を放れたりすると乗っていける。逆にそこで思うようなプレーができないと引きずってしまったりする。ファーストプレーから力を出せるように準備しておくことは大切ですし、そこは誰でもできる部分だと思います」

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守備が好きな選手は上手くなる

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上月 健太コーチ(國學院大学)

 キャッチボールが大事なのはどのカテゴリーでも共通していることである。では守備を極めるならば、どういう発想で練習に取り組むべきなのか。

「1つの練習の中で『濃さ』を出そうと思ったら、何気ない所作。そういうところからこだわってやるべきですし、やり方によってすごく良くなったりします。誰も真似できないくらいこだわってやれているかどうか。小さい頃から『守備でゴロを捕ったらすぐ投げなさい』とかって言われてきたと思うんですけど、言われてやっているのと、本当にそうだと思って繰り返しているのとでは、球の持ち替えのスピードやプレーの正確性は変わってきますし、ボールを扱う上手さも違いが出てくると思います。

 ただ数をこなすのではなく、『こだわってやった数』が重要なんです。そういう意欲がある子は上手くなりますね。特に守備は好きか、嫌いかで伸び方が変わってくると思っています」

 やはり守備が上達するには、好きになれるかが大事だということが分かる。次に上月コーチが守備練習で大事にしていることを伺ってみた。

「私が守備練習で特に重視しているのは『ゴロ捕球』です。選手をショートの前あたりに集めて、私がマウンドの横から手でゴロを転がして、それを捕球して送球するという、いたってシンプルなものなのですが、こうやって体を動かせば楽なんだよというのを教えながら、捕ってから投げるタイミング、バランスの良さ、グラブの捕っている位置、捕った瞬間にボールを持ち替えられているかなどを確認するには、この方法がノックよりも適しているんです。

 普段からよく行っていますが、秋のリーグ戦後などは逆シングルにしたり、シングルハンドで捕ったり、ランニングスローをしたりというのも交えながら、守備の練習時間の1時間弱すべてを使ってやったりもします。ベースにしているのはバックホームで、正面から転がしたボールを捕って、正面に投げる。簡単なようで1番難しい動作だと思います。自分の左側に投げるのは楽なんですが、正面に返すのは、ちゃんとした体の使い方をしないとうまくできないので。あとは前方左斜め45度くらいに投げるものをよくやっていますね」

[page_break:打球を予測する]

打球を予測する

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上月 健太コーチ(國學院大学)

 次に内野手にとって大事な打球予測のポイントを伺った。

「右投げの選手を前提に、順にポイントをお教えします。構え方はポジションによって変わるんですが、低すぎず、高すぎず、基本的には360度、全方向に動きやすければ、自由でいい。ちょっと足を前後にしてみたり、ピッチャーが投げるタイミングに合わせて軽く跳んでみたり、集中するときの自分の体が、どういうバランスだと動きやすいのかによって決めればいいと思います。ただ、左右や前だけでなく、後方へも反応できるようにということも頭に入れてほしいですね。

 前進守備を敷いているときの、詰まった後方へのフライとかを今の子は結構、追わない印象があります。それに後ろを意識するのが良いのは、ショートやセカンドは打球に対して真横だけにしか動けないと守備範囲が狭くなります。そこを下がりながら追えるようになると、捕れる範囲がグッと広くなる。広島の菊池涼介選手を見ればわかるように、セカンドは一二塁間の打球を斜め後ろに追いながら捕っても、動作が早ければアウトにできる。仮に追いついたものの打者をアウトにできなくても、ランナーが二塁にいるケースなら本塁に還さずに済む。

 今、うちのセカンドを守っている山崎剛(3年・日章学園)も、下がってもいいというのがわかってきて守備範囲が広がってきました。選手たちにも話す1つのイメージとしては『獲物を狙うライオン』。集中して、力むことなく、どの方向にもサッと動ける。バスケットボールの1対1で相手に抜かれてはいけない場面なんかも似ている気がしますね。

 それから構えは体の構えだけでなく、もう1つ、心構えも大切です。守りはどうしても受け身なんですけど、気持ちの部分では攻めてほしい。そうでなければ良いスタートは切れないと思います。また、スタートに関しては、どう切るかということよりも打球がどの方向に飛んでくるかを予測しながら守ることの方が大事だと思います。バッティング練習のときに守備について見ていれば、こういうスイングのバッターにアウトコースのこういう球が行ったら、こういう打球が来るとか、逆にインコースに行ったら詰まるからこっちに来るとかがわかるようになりますからね。

 あとは打球が緩く転がって来るのか、ビューと勢いよく来るのか、高いバウンドになるのか。これは第1バウンドを意識して見ろと選手たちにアドバイスしています。バッティング練習中の守備では『スタートを切ること、予測することに対する集中力を持て』と言っています。仮に予測が外れて反応が遅れたとしても責めることはしません。そういうときは『割り切れ』と言います。それを考えすぎると勝負しなくなってしまうので。まず自分の勘であったり、こう来るんだろうなという予測を大事にした方がいいと思います」

 後編では、守備がうまくなるためのドリルを紹介していきます!(続きを読む)

(文・鷲崎 文彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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