センバツ8強に導いた福知山成美・西田友紀主将に聞く
新チームを率いたばかりのキャプテン必見!県8強に導いた主将2014年9月3日
福知山成美で主将を務めた西田 友紀選手。元々口数が多い選手ではなく、プレーで引っ張るタイプだったという。
福知山成美は、個性の強い選手が集った集団で知られる。そういう集団をまとめ上げるには、苦労したことも多かったはずだが、西田選手はをいかにしてキャプテンとして、選手をまとめてきたのか。また、田所前監督に『手本のキャプテン』とまで呼ばれるようになったのか。最後に田所前監督から西田選手へのメッセージも!
言葉よりプレーで引っ張る主将とは
西田 友紀主将(福知山成美高校)
野球一家に生まれた福知山成美の西田 友紀キャプテン。現在、ヤクルトで活躍する西田 明央選手(北照出身)を兄に持つ西田は、1年秋にレギュラーの座をつかむと学年が上がるたびに打撃面でも成長。攻守の要として活躍し、2014年春、チームをセンバツベスト8(準々決勝試合レポート)に導いた。
18年間チームを率いた田所 孝二監督から見ても「手本を示せるいいキャプテン。怒ることもなかったですし、センバツ後も西田が驕ることはなかったですよ」と信頼は厚い。
先輩たちの代が甲子園初戦(試合レポート)で沖縄尚学に敗れ、8月中旬に迎えた新チームの練習初日、キャプテン決めはとりあえずみんな1回やってみろというところからスタートした。
練習開始前、円の中心にいたのは旧チームから試合に出ていたメンバーだった。「西田からやれ」でスタートした日替わり制のはずのキャプテンは、いつの間にか西田が続けてやるようになる。
「順番に回してたんですけど、全然回らなくなって最後は僕がずっとやってましたね。やる人いなかったんですよ。みんな遠慮して」
立候補したわけでも、誰かから推薦されたわけでもなく自然な流れの中、西田が小学校以来となるキャプテンに就任した。
「ずっとやってたんでいつも通りやろかなぁとは思ってました」と抵抗なく受け入れたものの苦手なこともある。
「人前でしゃべるのあんま得意じゃないんで、みんなの前とかで言うのがイヤでしたね。全校の前で言う時とかもあるんですよ…イヤですね(笑)。センバツ前にはキャプテントークっていうのがあってそれがイヤでしたね。部屋入ったら最初は全員無言なんですよ」
決して口数が多い方ではなく、自身も監督もチームメイトも「言葉よりもプレーで引っ張るタイプ」と誰もが口を揃えた。
小学校や中学校と比べて高校野球のキャプテンは「基本的には一緒」と言いながらも、個性が強い選手たちを多くまとめるのはしんどかったという。
福知山成美の部員数は毎年100人を超える。しかも、田所監督曰く「ウチには3拍子揃ったやつはいない」という中で、ベンチ入りを勝ち取ったメンバーは、それこそ一芸に秀でた個性派集団。バントや走塁などチームとしての決め事を徹底している強豪校が多い中、福知山成美の選手は打撃フォームもリード幅も選手によってバラバラ。大所帯をまとめる苦労は、田所監督も感じ取っていた。
「大所帯をまとめるのは、大変です。我が校は地元とのかかわりが強いですから、学校から球場に移動するまでの自転車での移動も、列を乱さずに移動する。ふざけながら移動すれば、すぐに言われますから、そういう意味でも日々まとめる大変さはあったと思います」
それでも、「厳しい言葉をかけながらも、選手をよくまとめていましたよ」と振り返る田所監督。そんな西田の姿をみて、選手たちはキャプテンを強く信頼し、次第にチームの結束力は生まれていった。
[page_break:選抜前の練習試合で大敗、そこで変わった主将、チームたち]選抜前の練習試合で大敗、そこで変わった主将、チームたち
西田 友紀主将(福知山成美高校)
そして今春、選抜出場を決めた福知山成美。近畿地区を代表する強豪校として期待された。しかし、選抜前の練習試合で大敗。田所監督はそこで、厳しく選手を叱った。そこで再び引き締まったチームは選抜ベスト8入り。
西田は振り返る。
「センバツを戦って、全員が、チームとしての自信を持ちました」
しかし、春夏甲子園出場をかけた夏の京都大会。
優勝候補の一角として臨んだものの、初戦の京都学園戦(試合レポート)では、2回に2点を先制し5回に1点を追加するも突き放せず。6回に一死満塁のピンチを背負うと相手の4番に2点タイムリーを打たれリードはたちまち1点に。
予断を許さない展開の中、西田が7回一死一、二塁で打席に立つと、「言葉よりもプレーで引っ張るキャプテン」らしくレフトスタンドにスリーランを叩き込む。この一発で試合を決めると最終的には8対2で快勝。3季連続の甲子園出場へ向けて好スタートを切った。
それでも、チームは4回戦(試合レポート)で乙訓に延長11回逆転サヨナラ負け。最後のミーティングで監督から「こんないい試合が出来て良かった」と言われると、西田は泣き崩れたという。
小学校でキャプテン、中学校で副キャプテンと常にチームの中心にいた西田は高校野球でのキャプテンを終え、
「もうちょっと試合前に話しとけばよかったなぁとは思いますね。どういう感じで進めていくかとか、ゲーム展開とか」と反省もある。
そしてこの夏、新たに誕生した全国3917校の新キャプテンに向けて、西田はこんなエールを送った。
「自分が引っ張って行かないとチームもついて来ないですし、勝つことも出来ないと思うんで、自分から引っ張って行ってほしいなぁと思います」
田所前監督が話す西田友紀主将とは?
西田は1年秋からセカンドのレギュラーで、2年夏ぐらいからバッティングも良くなりました。3年になると飛距離もアップしました。
本人は話すことが苦手といいますが、歴代のキャプテンと比べても、しっかりとしたいいキャプテンですよ。ウチでキャプテンをやる選手は、ユニークなタイプが多かったんですけど、西田はセンバツ後も驕らずに、夏の大会で勝つためにしっかりとプレーでチームを引っ張る。手本で示せるキャプテンでした。
元々、彼は高校入学時は、上で続けるつもりはなかったようです。お兄さんがプロ野球選手でしたから、比較されることは大変だったでしょう。でも、真面目で、努力家な子ですから、メキメキと頭角を現し、主将を務めたことで、人間的にも成長しました。最後の夏が終わった後、大学で続けたいと話していたので、次の舞台での活躍を期待しています。
(取材・構成:小中 翔太)