Column

神奈川8強に導いた県立相模原・今井 啓太主将が語る

2014.09.03

「キャプテン論」

新チームを率いたばかりのキャプテン必見!県8強に導いた主将2014年9月3日

 神奈川大会ベスト8に残った県立相模原高校の今井 啓太主将に、この夏の自分たちの戦いを振り返っていただきました。

入部してすぐ、1年生が5人に!

今井 啓太主将(県立県立相模原高校)

 元々、僕たちの学年は部員が少なかったんです。それにちょうど、僕たちが入学したのと一緒に、佐相 眞澄先生が川崎北から異動されてきて、入学式の当日に、野球部入部希望者は集められました。「野球を本気でやる気があるヤツだけ、すぐに来い」というようなことを言われたのを覚えています。それで、すぐに集められました。

 当初は9人いたのですが、体の面でやりたくても続けられなくなった選手や、やっぱり、「(野球をやりすぎると)勉強の負担になるから…」というような理由などで、比較的早いうちに、今の5人になりました。

 でも、始まって2カ月くらいのうちに、相談なしに辞めてしまったというのは、ちょっと残念でした。やっぱり、僕たちに相談してほしかったというのはありました。

 僕も、佐相先生のことは知っていました。僕は弥栄中なのですが、その校長先生が、佐相先生と同期だったということもありましたし、中学の時の仲間のお父さんが佐相先生と知り合いだったということもあって、野球への取り組み方とか厳しさは聞いていました。

 川崎北で実績を挙げられたということも知っていたので、厳しいことは承知で、そのつもりで入部しました。自分としては高い志を持って入ったのですが、早々にくじかれました。想像以上に厳しかったですね…(苦笑)。

 そうした中で、何となく僕がこの学年のまとめ役みたいな感じになっていました。
自分でも自覚のようなものはありました。だから、去年の夏に負けた直後、佐相先生から、「明日からは、お前が主将でやれ」と言われた時も、自分としては、「そうだろうなぁ」という気持ちでした。

 今までは、選手同士で決めるみたいな感じでしたが、僕たちは人数が少なかったということもあったと思います。

 そして、すぐに遠征試合を迎えて、考えるもよりも、もう自分がやらなくてはいけないという気持ちでした。それに、僕たちの下の学年は23人と人数も多いですし、下からの突き上げもきつかったですね。
しかも、下級生たちは佐相先生の下でやろうという意識で入ってきていますから、正直、自信を持ってきているヤツもいました。意識も高く、中学から硬式をやっていたという選手も何人かいましたね。

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[page_break:『自分で言える主将になれ』]

『自分で言える主将になれ』

主将としての1年を振り返る今井君

 新チームの最初は、ボロボロでしたね。練習試合が多かったんですが、これまで試合に出ていないヤツも多かったですし、もう無我夢中でした。

 自分では、プレーで引っ張るというほど引っ張れていないと思います。だから、行動で示していくタイプの主将になろうと思って、「言い訳はしないようにしよう。自分の言ったことはきちんとやろう」というつもりでいました。行動で示せば、ついてきてくれると思っていました。でも、なかなか上手くいかないというか、最初の頃は、ついてきてくれないと感じることが多くありました。

 とくに、下級生に対して感じることが多かったですね。僕も、中学から硬式でやってきている選手に遠慮というワケじゃないですけれども、やっぱり、ちょっと気を遣っていたところはあったかも知れません。
自分が、プレーで引っ張っていくタイプではないですから……。

 劇的に変わったのは、冬休みの練習の時でした。年が明けて、新年になって練習が始まって早々の頃だったと思います。

佐相先生に呼ばれて、「このままの状態だったら、ダメだぞ。そこが、このチームが強くなれない原因だ。自分で言える主将にならないといけないぞ」と、いうことを言われました。

 どちらかというとそれまでは、「いいよ、いいよ。しょうがないよ」と許してしまう、優しすぎる自分だったので、そこを指摘されました。それで、自分でもそれ以来、「嫌われ役に徹しよう」と決めました。

 自分が変わることで、チームも変わっていけるだろうという気持ちにもなりました。実際、それは感じていました。とくに、下級生に対して、顕著でした。

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[page_break:陽転思考を掲げて]

陽転思考を掲げて

主将を務めて成長したと語る今井君

 下級生に対しては、「コイツらに負けられない」という気持ちがある一方で、「コイツらと一緒に戦いきれなければ、チームは勝っていかれない」という気持ちもありました。それは、同級生みんなが感じていることだったと思います。

 
冬休みに決心して、嫌われ役になるようになってからは、春の練習試合でも、チームが変わっていっているなということは、実感することが出来ました。

 プレーそのものもそうですが、結果もついてきました。下級生も付き合い方が変わって来ましたね。仲が良すぎるとなめられるということになるけど、きちんと節度を持って接してくれました。
 いろいろ言ったあとも、切り替えが利くようになりました。練習ではガンガン言うけれど、練習が終わったら、「帰りにラーメン行こうぜ」なんて言って、一緒に行動できるようにもなった。

 チームのモットーとしては、「陽転思考」というのを掲げていて、ポジティブシンキングということなんですけど、「陽転」という言葉が、チーム全体の合言葉のようにもなっていました。

 それに、佐相先生からも、心を鍛える意味でいろいろ厳しいことを言われてきました。それで、結構メンタルも鍛えられたと思います。これは、入学してきた時に比べて、強くなっていったと思います。

 ベンチからも、ピンチになると「陽転」と書いた紙を掲げていました。自分が変わっていったことで、この、「陽転思考」もチームに、より浸透していったようにも思います。

 この言葉で、一回冷静になろうという姿勢が出来たんだと思います。だから、ピンチになっても「ここは、“陽転”だぞ」とか、打者も追い込まれていったときなんかに、ベンチから、「陽転だぞ」と、声かけられると、それで集中力が出てきたということもありました。

 1年間、主将を務めてきた者として言えることは、「自分がブレないで、自分を信じて堂々としていよう」ということです。自分が迷ってしまうと、それは間違いなくチームにも表れてきてしまいます。

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[page_break:「主将としては、負けた悔しさよりも、やり切った感があります」]

「主将としては、負けた悔しさよりも、やり切った感があります」

主将としてはやり切った感が強いと、今井君

 やっぱり、気持ちが一番大切だと思っています。それは、自分でも秋までの自分と、今年の春からの自分が変われたということで感じています。とくに、夏の大会前に向けての意識は、自分で言うにも何ですけれども、3年生の意識、気持ちは高まっていきました。

 僕たちの学校は、朝練習は原則としてはいけないということになっているんで、自主練習という形でしか出来ないのです。それでも、自主練習には出来る限り早く来ようということを決めたんです。

 学校が開くのが7時なんですけれども、15分にはグラウンドに出てきて、環境整備をしようということにしました。
環境整備は草むしりとか、ゴミ拾いとか、部室掃除とかそういうことです。それを、夏の大会の組み合わせが決まった直後から始めました。

 後輩たちに、何か態度で示していこうという意図でもあったんです。これで、僕たちのまとまりも、チームのまとまりもよくなっていったと思います。もちろん、チームとしてのモチベーションも高まっていきましたから、効果はあったと思います。

 1年間、主将を務めて、やり残したことは、ないですね。毎日毎日、全力を尽くしてやってきていたと思っています。むしろ、充実感があったし、満足感の方が強いです。こうしておけばよかったとか、そういうことは、あまりないですね。冬休みに、自分を変えていけたこと、あれが大きかったです。

 横浜には完敗してしまいましたけれども(試合レポート)、ベスト8に残れたことは満足しています。高校野球3年間をやり切ったという思いは強く感じました。

 陽転思考は、これからの自分の学校生活や人生にも活かしていけると思います。

(取材・構成:手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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