Column

キャプテンになるべくしてなった男・清宮幸太郎主将の改革!

2016.09.13

 ここまで高校通算67本塁打を放ち、その実力は高校生ナンバーワンスラッガーと呼ぶにふさわしい清宮 幸太郎。今秋から早稲田実業野球部の主将に就任したが、明確な改革により、早稲田実業はより強いチームへと成長を遂げている。そんな清宮の主将としての適性、改革の中身を追ってみた。

球速5キロ増、飛距離5メートル増、体重5キロ増と具体的な目標を立てる

清宮幸太郎(早稲田実業)

 キャプテンになるべくしてなった男だ。清宮 幸太郎は、高校1年生の時からその適性があった。

 昨年、1年生ながらU-18代表入りを果たした清宮。清宮以外の代表選手はすべて3年生。気苦労もあったと思うが、それでも清宮は先頭に立ち、声を出して場を盛り上げ、点を取れば3年生の選手と抱き合って喜んだ。この時から清宮は、チームの一員として全力で戦う姿を見せていた。この世界大会で戦った経験は、清宮にとって、とても大きかった。東京に戻った清宮は、その年の夏と比べても、大人びた姿をみせた。

 スラッガーとして注目される清宮だが、実はチームメイトに対しての気配りは人一倍しっかりしている。練習試合でも、公式戦であっても、清宮は常にチームメイトを励まし、そして、攻撃前の円陣でもチームを盛り立てる。

 さらに、声もしっかり通る選手なので、清宮が指示を出していることが、スタンドから見ていてもよくわかる。

 その指示も的確で、チームメイトも安心して背中を追っていける選手であることは間違いない。

 そんな清宮が、主将として最初に行った意識改革とは?その中身は想像以上に、よく考えられたものであった。まず、清宮は新スローガンに、「GO!GO!GO」というスローガンを立てた。

「GO」は「5」にかかっていて、投手は球速5キロアップ。打者は飛距離を5メートル伸ばす。そして、全員が体重を5キロ増やす、と具体的な目標を立てた。こういった数字的な目標は指導者側が立てるイメージがあるが、選手自らスローガンとして立てるところが素晴らしい。早稲田実業は、年中トレーニングは欠かさないが、具体的な目標を立てるか、立てないかで選手の取り組みようは違ってくる。清宮自身、パワーアップの実現のため、体幹トレーニングのメニューを10種類から20種類へ増やしてきた。

 清宮だけでなく、早稲田実業の選手たちを見ると、体つきが良い。秋の段階でこれほどガッシリしているのかと思わせる選手が多く、ブロック予選では2試合で36得点。さらに、清宮、野村 大樹に加え、前チームから上位打線を打っていた強打堅守の二塁手・橘内 俊治、巧打のトップバッター・福本 翔らも、一段と体つきが逞しくなり、打球の質も変わった。

 立志舎戦で本塁打を放った野村も、「詰まった当たりがスタンドに入っていました」と語るように、詰まってでも本塁打を打てるようになってきている。東京都の会場は全体的に狭い球場が多いため、5メートル飛距離を伸ばすことができる選手が増えれば、どこからでも本塁打を打てる打線になれる。

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[page_break:練習の目的を明確に選手たちに伝えていく]

練習の目的を明確に選手たちに伝えていく

報道陣の質問に答える清宮幸太郎(早稲田実業)主将

 また投手陣も、着実にレベルアップを遂げている。まずブロック予選1回戦では、左腕の石井 豪、右腕の池田 徹の1年生コンビが好投。代表決定戦ではエース・服部 雅生、常時130キロ中盤の速球を投げ込む大垣 洸太が好投。服部はもともと140キロ近い速球を投げ込む投手だったが、服部以外にも、大垣のように力のあるボールを投げられる投手がいる。去年までの投手はコントロール重視の投手が多かったが、今チームは、力のあるストレートを投げられる投手が多い。清宮が掲げた「GO!GO!GO!」が着実に浸透しているのが分かる。

 そしてこのスローガンを選手たちにしっかりと浸透させることができたのは、清宮が練習前に選手たちへ、『この練習の目的はこうで、こういう効果があるから、それをしっかりやろう』と必ず伝えるようにしているのだという。では、なぜ練習前に伝えるのか?清宮は言う。「野球って同じことの繰り返しじゃないですか。

 練習も、試合も。ずっと続けていると飽きがきて、流してしまう。マンネリ化となり、惰性でやっているわけではない。それは、僕自身、そういうことがありました。自分の再確認のためにも、どんな目的を持って、毎日の練習に取り組ませるかを意識して伝えています」

 この話は、清宮の父親であるラグビーのトップリーグヤマハ発動機ジュビロの監督・清宮克幸氏のチームマネジメント術を彷彿させた。

 克幸氏も現役時代は高校、大学、実業団でも主将を務めた。そして今は監督の立場としてチームのマネジメントに携わっているが、そのキャプテンのDNAは、確実に受け継がれているだろう。

 清宮はただ目標を立てたり、チームを厳しく見るだけではない。冒頭で述べたように、チームメイトを励まし、バントを失敗した選手に対しては、「忘れて次に切り替えることも技術だよ」と諭したりと、細かい気配りもできるキャプテンだ。常に明るく振る舞い、声を出して盛り立てる。そんな清宮キャプテン率いるチームの秋季大会での雰囲気はとても良かった。

 次は一か月後、選抜を目指して東京都大会に挑む早稲田実業ナイン。今まで清宮の打撃が大きくフォーカスされていたが、清宮が主将としてどうチームを引っ張るのか、そして清宮の意識改革に触発されたチームメイトが都大会でどんな活躍を見せるのかも見逃せない。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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