Column

ぶれないコーチングが必要(2)

2012.07.26

廣戸聡一の4スタンス理論

第15回 ぶれないコーチングが必要2012年07月19日

伝統的な練習から見えてくる「原理原則」

 連載でも口酸っぱく言ってきましたが、軸をつくるためには走ることが最もいい練習だといえます。しっかり立つ、5ポイントを揃えるというと、なんとなく静止した状態を想像しますが、スポーツでは動きのなかで軸ができなければ何の意味もありません。決して鏡を見ながら姿勢を確認するようなものではないのです。そういう観点からみると、走っている最中には何度も軸をスイッチしながら、立体的な動きを形成しています。この動きが投球にも打撃にもつながることは、以前にも紹介したはずです。長い距離でも短い距離でも、走ることがプレーやケガ予防につながるのです。

 科学的な筋力トレーニングが導入され始めた頃の、こんな話があります。某プロ野球の球団に、とある大学の先生が2月のキャンプの指導に入ったそうなのです。その先生の見立てはこうでした。「野球のプレー特性を考えると、瞬発的な動きのトレーニングだけでいい。こんなに多く走る必要はない」。するとどうでしょう、開幕して数ヶ月もすると、どんどん主力メンバーがケガで離脱していくのです。慌ててメニューを戻して走る量を増やすと、それが改善されていった。やはり、昔から地道に行われてきたことには、それなりの理由があったということなのです。

 最近よく取り沙汰される筋トレの是非ですが、もちろんきちんと行えば効果は見込めると思います。しかし、自己流でやっている選手のほとんどが、正しいとはいえないやり方になっているようです。ところがこれで動きがよくなった、プレーが改善したということが起きてきます。なぜそのようなことになるかというと、決して筋肉がついたからではなく、バランスがよくなったからなのです。重いものを扱うということは、それなりに軸をつくって、姿勢を整えないと挙げることができません。私も選手に高重量のトレーニングを課すことがありますが、それは筋肉をつけるためではなく、むしろ筋肉を使わずに挙げる練習をしているといえるのです。


野球はすべて正面で行う

【正面の大切さとは】

 もうひとつ、とても大切なこととして「正面」の考え方をお話します。
野球の基本はキャッチボールだといわれますが、皆さんは少年時代にどのように教わってきたでしょうか。きっと「相手の胸に投げなさい」とか「捕るときは両手で捕りなさい」といわれてきたはずです。これは本当に重要なことであり、これを無視してしまう選手は絶対に大成しません。むしろ本当に上手い選手はプロになっても両手で、正面でボールを扱います。実際、メジャーリーガーたちは、捕ったあとに胸の前でポンと一度、ボールとグラブを合わせます。聞くと、幼い頃にみんなこう教わっているようで、プロになっても変わらず行っているそうなのです。

 なぜ正面なのかというと、ここでも軸という言葉が出てきます。先に説明したとおり、スピードや連動性、筋出力などは軸がつくられなければうまく発揮できません。そして逆説的にいえば、正面でなければうまく軸は形成されないのです。正面を外れるということは、すなわち軸を外れるということ。安定した力強いプレーをしていくためには、必須の条件となってきます。

 バッティングももちろん正面で行います。ピッチャーとの間合いを「角度」ではかりつつ、インパクトではボールを正面で捕らえます。このとき、軸をスイッチしながら面を入れ替えることで、ボールを力強くはじき返すことができるわけです。

 ここでひとつ効果的な練習法を紹介しましょう。皆さんも一度は使ったことがあるであろう、プラスチックのバット。この非常に軽いバットでスイングを行います。まともに振ろうとすると、なにかおかしな感じがするかもしれません。力みを感じて無茶苦茶なスイングになることもあるでしょう。安定して、他人から見てもスムーズな動きができていれば正解です。

 そして、道着を着るときに使う帯を使ったスイングもおススメします。きれいな面の入れ替えができると、フォロースルーが滑らかな動きになります。ところがうまくできていないと、ビンタを食らったようにバチっと背中を叩くことになります。これがなかなか難しいのですが、できるようになってくるにしたがってバッティングも変わってきます。こうした練習を取り入れながら、正面の大切さを感じてみてください。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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