Column

夏の甲子園を振り返って・他者評価について

2012.09.10

久保田正一本気の心技体

『夏の甲子園を振り返って・他者評価について』

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 甲子園が終わり、秋季大会も各地で始まりました。新たなチームで来春を、そして来夏の甲子園を目指していることでしょう。今回はいつもの投球フォームのお話をお休みして夏の甲子園についてと、前回少し触れました他者評価についてお話ししたいと思います。

しかし今夏の甲子園には素晴らしい投手がたくさん現れましたね。Twitterでは投球フォームについていろいろ呟いていましたが、私が甲子園に観戦に行った日は、あの桐光学園松井 裕樹投手が登板し、しっかりとビデオでチェックさせて頂きました。もちろん課題もありますが、素晴らしい点が多々ありました。

彼の特徴で一番印象的だったのはいわゆる『胸の張り』です。通常の投手であればボールを持つ手が前に出てくるところで彼はまだボールが頭の後ろに隠れボールが出てきません。そしてしっかりと張られた胸を使ってリリースポイントまで瞬時に投げるのです。

 これでは打者はタイミング取りづらいです。よく言う『ビュッとくる』感じですね。そしてもう一つの特徴、それはストレートと変化球の腕の振りが同じ、しかも手からボールが離れてからのボールの軌道が同じなのです。何で打者はストレートを待っていて、手からボールが離れた後にストレートだ、と思ってもそこからボールは曲がりだす、落ちだすという感じだと思います。これは打ちづらいです。

 私はよくバックネット裏で投手が投げた瞬間に球種が何かというのを予測するのですが、松井投手の投球は予測しづらいです。あれだけの三振を取れる理由が分かった1日でした。


 また、野球というスポーツ、競技をしっかりと考え直さなければならないと気づかせてくれたプレーもありましたね。本当に野球って面白い、そして考えてプレーしなければならないスポーツ、競技だと痛感しました。

そこで今回投球フォームの話ともう一つお伝えしたい内容があります。先月少し触れました、『他者評価』についてです。『他者評価』とはいったいどういう意味合いがあるかを説明したいと思います。

 皆さん、試合の判定を決めるのは誰だと思いますか?

 もちろん『審判』です。お分かりだと思います。しかしその判定に首を振るような態度をとる、もしくは判定に不服ということを口に出している選手が少なからずいるということは事実です。多いですか?……

 これはどういうことを意味するのか?

 ある方が『人生は他者評価で生きている』ということを言われました。私はこれを聞いたときまだピンときませんでした。『自己評価』の方が重要なんじゃないか?

 しかしその理由を聞くとしっかりと納得できました。野球だろうが社会人だろうがこの『他者評価』が非常に重要だということを。

 自分が頑張っても相手から評価されなかった場合、よく『俺はこんなに頑張っているのに何で評価してくれないのだ!』という方がおられます。野球で言えば、レギュラーになれない補欠の選手がよく言うセリフのようなものです。

 しかし補欠の選手でもレギュラーを掴み取る選手がいます。そういう選手はどんなメンタリティーなのか?上記のような他者からの評価を批判しません。

 なぜ評価してくれないのか考えます、分析します。もしくは聞きます。そして自分に足りないこと本気で練習します、改善します。するとそれまで評価していなかった他者は評価し出すのです。

 順序が逆なのです。ほとんどの選手が評価してもらったから頑張る、評価してもらわなかったら不平不満を言うのです。これでは上達はしにくいのです。いわゆる結果論。結果に対して行動を変えるだけです。

 人生そう簡単に評価してくれる人はいません。評価してくれなくて当然なのです。私たちは上の立場の人たちから常に評価されているのです。いくら自分が頑張ったと言っても、評価される方から見て頑張ってなければそれはまだまだなんです。

 しっかりと他者評価を受け入れ、それを改善できるように更に頑張れるか?これが野球だけではなく何事にも上達していくポイントだと思います。

 野球であれば監督、指導者、コーチ、部長、試合であれば審判、学校であれば先生、家であれば親、寮であれば寮長、この方々があなたたちを評価するのです。


 有名な話ですが、ある強豪校が満塁からの四球で審判の判定を不満に思った捕手がミットをグラウンドに叩きつけるのです。もちろん審判の評価を受け入れていないことからの行動ですね。そして何とその後の打席で逆転満塁ホームランを打たれるのです。

 しかし対するチームの捕手は冷静でした。同じように際どい判定でも首を振るような動きさえも見せません。淡々と捕球し、投手にボールを返します。審判の評価をしっかりと受け入れているのです。

 この捕手のメンタリティーの違いは何なのか?前者の捕手は『なんで今のがボールなんだよ』と思いながら次のボールを要求します。しかし後者の捕手は『ここはボールなんですね』という考えで次のボールを要求します。

 私はこの差は非常に大きいと思います。後者の捕手は高校卒業後、名門大学でレギュラー捕手として活躍します。決して恵まれていない身体、バッティングも素晴らしいとは言えません…それでも名門大学でレギュラーを取り、全国優勝までしてしまうのです。それはやはりメンタルの影響だと私は思っています。そんな彼は大学卒業後も強豪社会人野球で野球を続けています。

 私の伝いたいことが読んで頂いた方々に伝わったか分かりませんが、少しでもこれを読んで頂いた高校野球選手が、これからの『他者評価』をしっかりと受け入れ、自分自身に足りないものは何なのか?を考えられる選手になって頂ければと思います。そしてこれにはもちろん『自己評価』も重要です。しかし自己評価だけでは足りないのです。自己評価だけで足りているならとっくに成果は出ているはずなのです。

 成果がでていないのならしっかりと他者の意見を聞き入れる。これが成果を上げる一つのポイントだと思います。

 さ~秋季大会(もう終わった地区もあるでしょうが)に向けて、敷いては来春、来夏に向けて自分の課題は何なのか?それを改善するために何をしなければならないのか?身体的や技術的なことだけではなく、今回のメンタル的な意見も参考に、日々の練習に励んで頂ければと思います。

 さ~来春の甲子園に向けて!!!

(今回はシリーズの投球フォームチェックはお休みします。来月お楽しみに!)

 

(文・写真:久保田 正一) 

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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