「メジャー挑戦物語」

   2010年12月21日

 11月19日、ドジャースが明大・西嶋一記、文徳高野 一哉とマイナー契約したという報道が日本中に流れた。『ドジャースが初めて日本の高校生と契約』――新聞の見出しはサプライズだったが、その裏には実は大きな理由があった。

 この熊本・文徳高の高野 一哉投手は、全国的にみれば無名な存在だが、184センチの長身右腕で九州屈指の素材との呼び声が高かった。今年のドラフトでは指名する球団はなかったが、ドジャースが将来性を見込んで契約に至った。

 ドジャースの日本担当スカウトである小島圭市氏は、熊本に面白い選手がいるという情報を耳にし、高野投手が1年生の冬頃に初めて視察したという。その小島スカウトは、高野投手のピッチャーとしての素質についてこう語っている。

「初めてみた時は、ピッチングをみたということではないのですが、手足が長くて、肩関節も柔らかくて、ピッチャーズスタイル(ピッチャーとしての体型)をしている」という印象だったという。その後、定期的に追い続けていく中で特に注目したのが“ボールを投げるセンス” 。実は小島スカウトは、高野投手について入団会見でこう語っている。

「150キロのボールが投げられるとか、カーブやフォークが凄いとかではありません。今はすべてにおいて(高いレベルの中で)アベレージよりも下ですが、体が強くなっていくとともにアベレージを越えていって、メジャーリーグのマウンドで活躍できるレベルに到達するだろう」

 さらに高野投手本人もこう話す。「今は、全然自分のアピールできるところがないので、これからさらに頑張って(アピールポイントが言えるような)いいピッチャーになりたいです」

 自己分析する中で、角度ある最速144キロのストレート、自慢の縦スライダーにも慢心することがない。そのコメントからも彼がいかに高いところを目指しているかが、うかがえる。

 さらに小島スカウトも、「本人(高野)も今はアピールポイントがないと言いましたが、焦ることなく、一つ一つ体作りをやっていけば、その中で必ず(アピールポイントが)生まれてきます。彼は“ボールを投げるセンス”という教えられないもの(天性の素質)を持っています。強く、大きくなるために、時間を懸けて育ってほしい」と評価していた。

 ボールを投げるセンス(天性の素質)。手足の長さや柔軟性を含めたピッチャーズスタイル。それは、大いなる可能性を秘めた未完の大器ということを指している。ドジャースが高野投手を獲得した理由がここにあった。

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高野 一哉(文徳) 【選手名鑑】
文徳 【高校別データ】

プロフィール

高野一哉
高野一哉(たかの・かずや)
  • 生年月日:1992年11月10日
  • 出身地:熊本市
  • ■ 経歴
    文徳
    地元・田迎小学校野球部で野球を始め、託麻中学時代は野球部(軟式)のエースとして県3位。
    中学時代は部活の他にタレントの井手らっきょ氏が校長を務める野球塾・PBA(プロフェッショナル・ベースボール・アカデミー)に通う。
    文徳高に進学後、1年秋からベンチ入りし、2年秋からエースとして活躍。
    主な成績は熊本市内1年生大会準優勝、2年秋の県大会ベスト4など。
    甲子園出場はないが、しなやかな腕の振りから繰り出される最速144キロのストレートの球筋、キレ鋭いタテのスライダーから大物の匂いが漂う。
    素材的には九州屈指との呼び声が高く、将来性豊かな未完の大器。
    184センチ、78キロ、右投右打。