第17回 高川学園の野球ノート【第3回】 「最後の夏、始まりの夏に書いたこと」2016年08月13日

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決勝の翌日、中林選手と中野寮監のやりとり(高川学園高等学校)

 ワンアウト二塁。7番の橘谷のショートゴロの間にランナーが三塁まで進み、ツーアウト三塁。そしてバッターは中林に回る。
人一倍、甲子園に強い思いを抱き、ノートを書き続けた。チームが強くなるならば、と嫌われ役も買って出た。ベンチ、スタンド、高川学園を応援する誰もが中林の一打に思いを込めた。中野寮監も祈るような思いでその打席を見つめた。中林の放った一打は、快音を残したものの―レフトの正面をつき、試合は1対2で敗れ夢の甲子園は叶わなかった。

 球場を後にしても涙は溢れるようにして流れ、止まらなかった。
寮に戻りいろいろなことを語り合った。中林がこのときのことをこう振り返った。

「負けたときは悔しくて……でも、いつまでもくよくよしても仕方がない。泣いていても仕方ない。負けてしまった事実は変わらない。だから夕方くらいには3年生で集まって、ここから切り替えよう、と。3年生の寮長がいるんですけど、彼もすごくしっかりしていて、〝毎日掃除をする時間があるけど、いままでずっとやってきた。それをしなくなったりするのは絶対にやめよう〟って。自分たちがいままで続けてきたことはしっかりやり続けて、後輩が自分たちの背中を見てなにかを感じてくれるようにしようって切り替えました」

 その後、掃除をし、もう一度3年生で集まり、労いの会を開いた。話は尽きなかった。中林が部屋に戻ったのは11時前だった。
そして……。彼はいつも通り、野球ノートを手にした。

■7月29日(月)
中野先生を胴上げできなかったこと。それが一番くやしいです。でも中野先生の元で野球ができたこと、素晴らしい仲間と素晴らしい指導者、素晴らしい父親母親家族に出会えたことを誇りに思います。智弘先生には、この野球ノートを始め色々な事を学びました。こんなナマイキな人間を育てて下さってありがとうございました。僕の中で智弘先生は〝日本一〟の存在でした。最後の最後まで自分のそばで支えて下さったことを感謝します。指導者の良いお手本を見さしてもらいました。智弘先生のような指導者になるのが僕の新たな〝夢〟であり、目標です。愛すべき人です。

 本当にお世話になりありがとうございました。この仲間とまだまだ野球がしたかったです。なので、自分が続けて何になるかは分かりません。

「一区切りとして書いておきたかったんです」
中林はそう言った。
「このおかげで決勝まで上がってこれて、このおかげで成長できた。だからそれを記してまた次からっていうように……感謝の気持ちを込めて書きました」

 書いている間、手は震えた。涙がいまにも溢れそうだった。
「でも、なんとか踏ん張って」
中林はこの日のノートの最後にこう付け加えた。

 これからの自分、高川学園の為に、このノートを続けてもよろしいですか?
〝氣〟この字は宝物です。
これからもこんな自分を宜しくお願いします。

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