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大谷翔平で始まった侍ジャパン初陣・中国戦の収穫は?

2023.03.10

大谷翔平で始まった侍ジャパン初陣・中国戦の収穫は? | 高校野球ドットコム
侍ジャパン・大谷翔平

<WBC:日本 8ー1 中国>◇9日◇1次ラウンドB組◇東京ドーム

 2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の初戦、日本は中国に試合終盤まで苦戦しながらも勝利した。

 日本代表は直近の主要となる、国際大会のプレミア12と東京五輪で頂点に立っている。このWBCで野球の主要大会三冠と3度目の世界一を狙う。

初戦から圧巻の活躍を見せた二刀流・大谷翔平

 緊張感がある初戦の先発は大谷 翔平投手(エンゼルス=花巻東出身)だった。初回から中国打線を完璧に抑えるピッチングを見せた。2回には160キロを記録するなど尻上がりに球速を上げていった。本調子からは程遠く見えたが、圧倒的な実力で抑え込んだ。

 3回にはラーズ・ヌートバー外野手がヒット性の当たりをファインプレーする。それに応えるように大谷は4回を49球、1安打、5奪三振、無失点に抑えた。投手としては実戦登板がないまま、ぶっつけ本番だったが、メジャートップのレベルを見せつけた結果になった。

 大谷を援護したい日本は、初回に村上 宗隆内野手(ヤクルト=九州学院出身)の押し出しとなる四球で先制点を奪った日本だが、それ以降はチャンスに凡退や走塁ミスなどで追加点を奪えずにいた。

 重い雰囲気の中で流れを変えたのは大谷だ。先発投手として中国打線を無失点に抑えていたが、4回裏に1死一、三塁のチャンスで低い弾道が伸びていき、左中間フェンス直撃の2点適時二塁打で追加点を挙げた。この適時打もメジャートップクラスのパワーを見せた結果となった。さらに、8回にもヒットを放ち、マルチヒットを記録した。前回大会は、足のケガが癒えないことから大会前に辞退したが、その悔しさを晴らすかのような初戦の活躍ぶりだった。

 しかし、韓国戦から大谷が勝負を避けられると、次の打者がポイントになっていく。初戦でヌートバーと近藤 健介外野手(ソフトバンク=横浜高出身)の1、2番コンビが、チャンスを作る流れがスムーズだったため、大谷以外でランナーを返せる打者が出てくることが今後の鍵になりそうだ。

国際大会の初戦の難しさとベテラン野手不在の懸念材料を感じられた試合

 この試合は初戦の難しさを感じられた試合でもあった。初回は日本に流れがある中で、村上の押し出し後は強化試合で好調だった吉田 正尚外野手(レッドソックス=敦賀気比出身)が内野フライに倒れ、岡本 和真内野手(巨人=智辯学園出身)も浅い右飛に倒れた。

 国際大会では初見であることやこれまでペナントレースなどでなかなか対戦することのない球速帯だったこともあり、多くの打者がタイミング合わずにいた。

 前回大会も初戦は重苦しい雰囲気だったが、当時メジャーリーガーでありながら、国際大会の経験が豊富な青木 宣親外野手(ヤクルト=日向高出身)が左翼フェンス直撃の二塁打を放ち、先制点のきっかけを作った。さらに青木は追いつかれた後に、守備でもファインプレーを見せてチームを盛り立てた。

 東京五輪も初戦のドミニカ共和国戦で、先制点を許して苦戦しながらも、最終回に頼りになる男の柳田 悠岐外野手(ソフトバンク=広島商出身)が内野安打で出塁し、近藤が繋いで村上の適時打や、甲斐 拓也捕手(ソフトバンク=楊志館出身)のスクイズで追いついた。最後は実質キャプテンの立ち位置だった坂本 勇人内野手(巨人=光星学院出身)のサヨナラ打で逆転勝利し、そのまま勢いに乗って金メダルを獲得した。

 今大会の初戦では、青木や柳田、坂本のようにプレーでチームの士気を上げるベテラン選手がいないことが痛かったのではないだろうか。

 また、相手投手の球速やフォームに合わせて、足の上げ方をすり足に変えながら、対応ができる柳田や坂本はもちろんのこと、ベテランではないが森 友哉捕手(オリックス=大阪桐蔭出身)がいたらスムーズに攻略できていたか興味深かった。

 大会前から野手のベテラン選手不在が懸念材料となり、国際大会の経験が豊富な山田 哲人内野手(ヤクルト=履正社出身)が不振なのも重なった。実際のところ、山田が8回に適時打を放った場面は、声援がすごかった。現メンバーでは、年齢や経験値含めて、この山田が先頭に立つぐらいの気持ちで、野手陣を引っ張っていく存在になってほしいところだ。

 ベテランではないが、世界最高のプロ野球である大谷が投打で活躍を見せたことで、チームが乗っていくことを願いたい。

鈴木誠也が辞退した中、右打者の軸として鍵を握る牧秀悟・山田哲人

 今大会は鈴木 誠也外野手(カブス=二松学舎大附出身)の辞退により、右打者の底上げがポイントになる。

 昨年の強化試合から選ばれている牧 秀悟内野手(DeNA=松本第一出身)が、右翼席に大きなホームランを放った。

 また、不振だった山田哲人も8回に適時打を放ち、復調の兆しが見られた。

 右打者は、岡本や山川 穂高内野手(西武=中部商出身)といった好不調の激しい選手が並ぶ中で、牧や山田のような選手は重要な存在になっていく。本来なら山田をスタメンで起用し、一塁手を牧に守らせて、二塁手を山田にするプランが攻守のバランスが取れるように思えた。

世界トップクラスの投手陣をリードする捕手の重要性

 先発の大谷はもちろんのこと、2番手の戸郷 翔征投手(巨人=聖心ウルスラ出身)は5回からマウンドに上がり、いきなり4者連続三振を奪うなど、3イニングを7奪三振のピッチングを見せた。さらに、湯浅 京己投手(阪神=聖光学院出身)も8回にマウンドに上がり3者連続三振とパーフェクトリリーフを見せた。そして、伊藤 大海投手(日本ハム=駒大苫小牧出身)が最後を締めて中国打線を抑えた。

 しかし、直球の使いすぎや高低の使い方が雑だったため、ホームランを打たれたり、ランナーを出す場面も見られた。これまでの国際大会とは段違いにレベルが高いWBCでは、甲斐のリードも重要さが増している。

 東京五輪ではラッキーボーイになれた甲斐だが、このWBCで侍の頭脳になれるかも優勝への鍵になっていくだろう。

(記事=ゴジキ)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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