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「侍ジャパン」の呼び名が誕生 2連覇を飾った2009年WBC

2023.02.28

「侍ジャパン」の呼び名が誕生 2連覇を飾った2009年WBC | 高校野球ドットコム
原辰徳監督

 第2回となったワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、開催前から動きがあった。前年に北京五輪があったため、監督の選出が前年の10月下旬まで決まらないままだった。その監督の選出も、北京五輪と同様に星野氏の名前が挙がった。しかしチームリーダーとして期待されるマリナーズ・イチロー(愛工大名電出身)は「大切なのは足並みをそろえること。(惨敗の)北京の流れから(WBCを)リベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなど不可能」とコメント。レッドソックス・松坂 大輔投手(横浜高出身)も「(WBCを)北京五輪のリベンジの場にしてほしくない」とコメントした。投打の軸のコメントや北京五輪の惨敗の結果から世間の批判もあり、星野氏は辞退した。

 候補として名前が挙がっていた落合氏も辞退。最終的には現役監督の原氏と渡辺氏の二択となり、原氏が就任となった。また、原氏は「今までは監督の苗字+ジャパン(長嶋ジャパン、王ジャパン、星野ジャパン等)で呼ばれるのが通常であったが、自分は「監督の苗字+ジャパン」のように呼ばれるような値の人間ではない」とコメントをして、このWBCから侍ジャパンとして動き始めた。

 しかし、北京五輪の惨事が影響したこともあり、中日が全選手辞退の異例な出来事が起きる。膝の状態を考慮してヤンキース・松井 秀喜外野手(星稜出身)も辞退。ドジャース・黒田 博樹投手(上宮出身)やレッドソックス・斎藤 隆投手(東北高出身)も辞退を表明。ただ、その状況でもイチロー、松坂、マリナーズ・城島 健司捕手(別府大附出身)、レイズ・岩村 明憲内野手(宇和島東出身)、カブス・福留 孝介外野手(PL学園出身)の5人のメジャーリーガーを揃えた。

 このWBCも日韓両国が大会を盛り上げた。この大会まで、大会前からの調整から大会中の試合運び、コンディショニングはこの2国がずぬけていた。日本は前回大会の王者として出場。1次ラウンドの韓国戦では北京五輪で苦しんだ金廣鉉投手を攻略して大勝。順位決定戦では敗れたものの、2次ラウンドに進む。キューバに対してはサイン盗みを逆手に取ったことや、楽天・岩隈 久志投手(堀越出身)が霧の中、ゴロアウトで抑えるなどで2戦2勝して韓国には1勝1敗で準決勝に進む。

 この結果を見ても、2009年WBCから世界野球が徐々に変わりだした。アジアの2強が順当に勝ち上がった中で、メジャーリーガーが不在ながら、前回大会で健闘していたキューバはまさかの2次ラウンド敗退。アマチュアながら野球大国のキューバの強さに陰りが見え始めた大会だった。

 日韓が強さを見せた中で、この大会はベネズエラが意地を見せた。メンバーには後に三冠王に輝いたミゲル・カブレラやサイ・ヤング賞に輝くフェリックス・ヘルナンデス、セーブ新記録のフランシスコ・ロドリゲス、ボビー・アブレイユなどの実績組が揃っていた。さらにNPBでも活躍したホセ・ロペスやジェラルド・パーラも選ばれていた。このメンバーを揃えてベスト4になった。

 決勝を振り返ると、先発の岩隈が好投を見せ、ソフトバンク・杉内 俊哉投手(鹿児島実出身)も好リリーフを見せる。そして、9回はダルビッシュがマウンドに上がる。しかし、制球が定まらず連続四球でランナーを溜めて、2死一、二塁で李机浩のタイムリーで追いつかれる。韓国に流れが行きつつある中で、10回に大会を通して苦しんだチームリーダーが試合を決める。この回先頭の横浜(現・DeNA)・内川 聖一外野手(大分工出身)が林昌勇から右前安打で出塁。続く日本ハム・稲葉 篤紀外野手(中京=現・中京大中京出身)が送る。岩村が繋いで1死一、三塁となる。代打、ソフトバンク・川崎 宗則内野手(鹿児島工出身)が遊飛に倒れて2死一、三塁とした。イチローがこの場面で2点タイムリーを放ち、試合を決めた。イチロー自身「僕は持ってますね。神が降りてきたという感じ。日本中のみんなが注目しているだろうと思って、自分の中で実況して、普段は結果が出ないんだけど、それで結果が出て、壁を越えたと思います」とコメントするほど自画自賛の適時打だった。その裏の韓国の攻撃をダルビッシュが締めて日本が2連覇を果たした。

 大会が開催される前の日本は多くの辞退者がいながら、大会を勝ち進んでいくうちに、国内組とメジャー組の融合の最大化ができた大会だったのではないだろうか。

(記事=ゴジキ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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