苦しみながらも連覇に導いたイチローの存在感



イチロー

 これまでのワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、イチロー(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)の存在感が大きな影響を与えたといっていい。

 第1回大会では、普段は冷静なイチローが、韓国戦での闘志を剥き出しにした。その姿勢を見た選手は、士気を高めた。

 イチローがチームをまとめあげたのは、間違いない。2006年WBCは、まだまだ今ほど有名な大会ではなかったが、普段は孤高な印象が強いイチローが代表を引っ張っている姿は話題にもなった。2005年11月にWBC出場の意思を決めてから「王監督を胴上げする」という熱い思いを胸に宿してきた。このイチローについていくように代表はまとまりを見せた。

 初のメジャー組との融合が見られた国際大会は、初代王者として世界の頂点に立ったことにより、日本の野球のレベルの高さを認知させられたのではないだろうか。

 第2回大会では、北京五輪で惨敗に終わった後に星野仙一氏の名前が挙がった際には、イチローが「大切なのは足並みをそろえること。(惨敗の)北京の流れから(WBCを)リベンジの場ととらえている空気があるとしたら、チームが足並みをそろえることなど不可能」とコメント。その後、監督が原辰徳になる流れに変わった。

 決勝戦で放った試合を決める決勝打は伝説とも言われている。

第2回大会で見られたメジャー組の存在感

 第2回大会では、レッドソックス・松坂 大輔投手(横浜高出身)、マリナーズ・城島 健司捕手(別府大付出身)、レイズ・岩村 明憲内野手(宇和島東出身)、カブス・福留 孝介外野手(PL学園出身)のメジャーリーガーを揃えた。

 その中で城島や福留、岩村を下位打線に置く戦術が非常によかった。

 岩村は「実際にメジャー・リーガー3人(福留、城島、岩村)で、下位打線を打つけど、そこで打線の裏の軸になってくれ、とはっきりと言われ、すごくやりがいを感じました」とコメントしている。

 特に岩村はつなぎに徹しながら、ここぞとの場面では、長打を放つなど柔軟な打撃が目立った。開催前は多くの辞退者がいながら、大会を勝ち進んでいくうちに、国内組とメジャー組の融合の最大化ができた大会だったのではないだろうか。

WBC2度のMVPで貢献した松坂大輔



松坂大輔

 松坂の活躍も大きかった。

 特にメジャー移籍後に参加した第2回大会ではキューバに対して、城島とともに異変に気づく。

 相手がコースなどを伝達していることに気付くと、2回から「(捕手の)城島さんが構えたところと、わざと逆に投げた」とコメント。

 準決勝の米国戦では、立ち上がりから制球に苦しみ、2回まで16球のうち9球がボールだった。しかし、試合中に修正し始める。その結果、5回2死まで98球を投げて2失点に抑え、2大会連続の決勝進出に導いた。

 大会を通して、3戦3勝で2大会連続のMVPとベストナインを獲得し、文句なしの活躍で連覇に導いた。

精神的支柱としてチームを引っ張った青木宣親

 2017年の大会では、メジャー組はアストロズに所属していた青木 宣親外野手(日向高出身)が選ばれた。

 メジャーでの経験も豊富な青木が、外国人のフォームの違いに言及している。

 全体練習でも近距離で打撃投手に投げさせるなどの練習を取り入れ、4大会連続のベスト4以上という結果にもつなげた。

 青木が打撃コーチの稲葉氏に送ったアドバイスも興味深い。「外国人投手はモーションが速く、球が動く中で、日本人のようにゆっくりタイミングを取っていると、どうしても間に合わない。だったら、近い距離から(投げる球を)自分のタイミングでどうやったら打ったらいいのか、外国人投手を想定しながらやるということを取り入れた方がいいんじゃないですか」とコメントをしていた。

 さらに緊張感がある初戦では攻守でチームを勢いづける活躍で、チームをベスト4に導いた。

(記事=ゴジキ)