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春2連覇と春夏連覇を同時達成。「最強世代」と呼ばれた2018大阪桐蔭

2023.01.26

春2連覇と春夏連覇を同時達成。「最強世代」と呼ばれた2018大阪桐蔭 | 高校野球ドットコム
山田 健太・根尾 昂・藤原 恭大・中川 卓也

 2018年の大阪桐蔭は、二刀流で甲子園を沸かせた根尾 昂投手(中日)や4番打者として活躍した藤原 恭大外野手(ロッテ)がチームの中心となり「最強世代」と呼ばれた。

 2012年も磐石な体制で優勝したが、この世代はプロ入り選手がなんと4人。根尾、藤原に加え、投手の柿木 蓮投手(日本ハム)と横川 凱投手(巨人)もドラフト指名された。侍ジャパンU-18代表にも、柿木、根尾、藤原と小泉 航平捕手(NTT西日本)、中川 卓也内野手の5人が選出された。2018年の大阪桐蔭メンバーのなかで、プロ入りせずに進学した選手たちも活躍していること考えれば、「最強世代」の名前にふさわしいチームだったことがわかる。

 下記が戦績と選手の成績である。

大阪桐蔭(2018年夏)大会戦績

決勝  :13-2 金足農(秋田)
準決勝 :5-2 済美(愛媛)
準々決勝:11-2 浦和学院(埼玉)
3回戦 :3-1 高岡商(富山)
2回戦 :10-4 沖学園(福岡)
1回戦 :3-1 作新学院(栃木)

大阪桐蔭(2018年夏)選手成績

打撃成績

(左)宮崎 仁斗 打率.435 1本塁打 5打点
(右)青地 斗舞 打率.400 0本塁打 4打点
(三)中川 卓也 打率.280 0本塁打 4打点
(中)藤原 恭大 打率.462 3本塁打 11打点
(遊)根尾 昂 打率.429 3本塁打 5打点
(一)石川 瑞貴 打率.250 1本塁打 6打点
(二)山田 健太 打率.316 0本塁打 3打点
(捕)小泉 航平 打率.263 0本塁打 1打点
(投)柿木 蓮 打率.000 0本塁打 0打点
チーム打率.328

投手成績

柿木 蓮 36回 39奪三振 防御率1.00
根尾 昂 13回 13奪三振 防御率4.15
横川 凱 5回 9奪三振 防御率1.80
チーム防御率1.83

 柿木、根尾、横川の3本柱は、左右のバランスもあり、全員プロ入りした投手陣だ。全員がかなりの実力があるので、非常にバランス良く投手運用ができていた。
 下記が投手陣のイニングと球数の内訳だ。

柿木蓮
1回戦   9回105球
2回戦   1回24球
3回戦   4回66球
準々決勝 4回50球
準決勝   9回155球
決勝 9回112球

根尾昂
2回戦 8回119球
準々決勝 5回95球

横川凱
3回戦 5回78球


 3回戦までは全投手先発させて大会中の調子を見た上で、結果的に柿木が準決勝と決勝は完投している。さらに各投手の登板間隔を、1〜2戦目は中6日、2〜3戦目は中2日にすることで、先発をローテーション化していた。
 野手陣を見ても、根尾と中川は複数のポジションを守れるため、ユーティリティープレーヤーとして起用されていた。
 高校野球でありながら、先発投手のローテーション化や中心選手のユーティリティー化などプロ野球のような戦略を取り入れていたのである。どの高校よりも勝利しながら、選手マネジメントや戦略性も高いことを見ると、大阪桐蔭が常勝チームたる所以がわかる。

 実際、2018年の大阪桐蔭は個人の力のみならず、選手マネジメントも素晴らしかった。
 センバツ後の4月から5月におこなわれた春季大阪大会では、ケガやコンディションに配慮して、エースの柿木や4番の藤原をベンチ外にしながらも大会を制する。続く春季近畿地区大会では藤原が復帰したものの、柿木と宮崎抜きでこの年のセンバツ決勝で対戦した智辯和歌山を下して優勝した。ちなみにセンバツから試合に出続けていたのは、中川、根尾、山田、青地の4人のみ。主力以外も起用しながら、春季大会を勝ち抜いた。この時点で、選手層が厚く主将・中川を中心にチームとしての完成度は相当高かった。

 夏の大阪桐蔭の勝ち上がり方を振り返ると、大阪府予選は非常に苦しい試合がいくつかあった。それが顕著に表れたのが、準々決勝の金光大阪戦と準決勝の履正社戦だ。

 まず、金光大阪戦ではスライダーの切れ味鋭い左腕の久下 奨太投手と鰺坂 由樹投手を交互に投げさせる小刻みな継投策に、わずか2点しか得点できなかった。

 準決勝の相手の履正社は先発として、今大会初先発の濱内 太陽投手を起用。大阪桐蔭にとっては想定外の起用だったことだろう。大阪桐蔭は根尾が先発し、両校の先発が6回まで3安打に抑える投手戦となった。そのような状況で大阪桐蔭は、7回に藤原がチャンスを作り、根尾が適時打を放ち先制。青地 斗舞の適時打などで3点差をつけて優位に試合を進めた。

 しかし履正社は、このままでは終わらず、疲れが見え始めた根尾にたたみ掛けた。7回裏に1年生ながら5番に座り、のちにチームを夏の甲子園優勝(2019年)に導いた小深田 大地内野手(DeNA)の二塁打を足掛かりに1点を返す。8回裏には筒井 大成内野手、西山 虎太郎外野手の連打で1点差。その後、主将の濱内の一塁ゴロで追いつく。さらに、途中出場の6番、松原 任耶内野手が浮いた球を左中間に放ち逆転に成功した。

 1点ビハインドの状況で9回の攻撃を迎えた大阪桐蔭だが、焦る様子は全くなく冷静だった。代打の俵藤 夏冴内野手が安打で出塁し、続く石川 瑞貴内野手のバントミスがあったものの、宮崎、中川、藤原、根尾の連続四球で追いつく。そして、山田が適時打を放ち、大阪桐蔭が逆転に成功。最後はエースの柿木が抑えて、この激戦を勝利した。

 その年のセンバツ準決勝の三重三重(三重)戦でも劣勢の場面をはね返していたが、この試合も勝者のメンタリティーや集中力の高さを見せつけるような戦いぶりだった。

 甲子園出場後は、作新学院戦と高岡商戦は僅差の試合を勝利。沖学園戦と済美戦は逆転勝利した。僅差から逆転勝ちまでバリエーションが豊かな試合展開で勝ち上がり、準々決勝以降は優位に試合を進めていった。

 そして決勝は、この大会の「主人公」だった吉田 輝星投手(日本ハム)を擁する金足農。その勢いを圧倒的な実力ではね返すかのように、13点を奪って勝利。この春夏連覇は史上初の2度目の春夏連覇となった。前年の夏の甲子園3回戦で、仙台育英を相手に9回2死から逆転負けを喫した悔しさを翌年に晴らした。

 2018年の大阪桐蔭は、ビハインドの場面を迎えても必ず追いつき逆転する姿が印象的だった。選手の能力はもちろんのこと、西谷監督と選手の冷静さはまさに「勝者のメンタリティー」を体現していたのではないだろうか。

(記事=ゴジキ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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