ダルビッシュを彷彿とさせる長身右腕と仙台育英の中軸担う1年生内野手に注目

　2023年も熱戦が予想される宮城の高校野球。その主役となりうる選手たちを野手、投手1人ずつ厳選した。

湯浅 桜翼内野手

　昨秋の東北大会を制し、今春のセンバツ出場が濃厚となっている仙台育英（宮城）。明治神宮大会でも強さを見せつけており、2023年は例年以上に期待値が高まる1年となるだろう。新チームは投打ともに甲子園優勝を経験した2年生が多く残っているが、そんな中、打線の軸を担っている1年生がいる。攻守にわたってセンスが光る逸材・湯浅 桜翼内野手だ。

　身長168センチと小柄ながら、思い切りの良いスイングは魅力的。センターから右方向を意識したしぶとい打撃ができ、パンチ力や勝負強さも兼ね備える。昨秋の県大会は2、3回戦は9番、準々決勝以降の3試合は5番でスタメン出場。打率.417（12打数5安打）、7打点と好成績を残した。5安打の内訳は三塁打3本、二塁打2本で、うち4本は打点付き。2回戦・仙台商戦での決勝2点適時三塁打、準決勝・仙台三戦での試合を決定づける3点適時三塁打など、5試合中4試合で適時打を放ち存在感を示した。

　東北大会は3番、5番、9番と様々な打順を任され、打率.273（11打数3安打）ながら、2対1で勝利した能代松陽（秋田）との準決勝で決勝打を放つなど活躍。また明治神宮大会では2試合ともに3番で起用され、その名を全国にアピールした。1回戦の沖縄尚学（沖縄）戦は5打席立って4度出塁し、9回には1死二、三塁の好機で中前に弾き返す同点の2点適時打をマーク。鮮やかな一打で試合を振り出しに戻し、4点差をひっくり返すサヨナラ劇を呼び込んだ。

　準決勝の大阪桐蔭（大阪）戦は敗れたものの、9回に相手のエース左腕・前田 悠伍投手（2年）を攻め1点差に迫った。湯浅は無死一、二塁の場面で変化球を打ち返し、またしても中前へ運ぶ適時打に。高校ナンバーワン左腕の呼び声高い前田相手に、速球を続けられたあとの変化球を捉える1年生離れした打撃を披露した。

　守備の安定感も売りで、遊撃を守る山田 脩也内野手（2年）との二遊間も鉄壁だ。甲子園連覇を目指す仙台育英にとって、すでに欠かせない選手の一人となっている。

ハッブス 大起投手

　12年ぶりのセンバツ出場を当確としている東北のキーマンは、この男だろう。今年のドラフト候補にも挙がる最速145キロ右腕・ハッブス 大起投手（2年）だ。OBのダルビッシュ 有投手（パドレス）に憧れて東北に進学し、1年から注目を集めてきた。

　昨秋の県大会は3試合で先発。3回戦の佐沼戦では6回1安打12奪三振無失点と圧巻の投球を見せた。一方、準決勝の利府戦は制球に苦しみ、3回1失点で降板。特に課題が露呈したのは2回で、この回は2死から自らの失策で走者を許すと、その後死球、四球、四球と3連続四死球を与え押し出しで1点を失った。自己最速145キロを計測したことは明るい材料だったが、「力み」が出すぎたマウンドでもあった。

　仙台育英との決勝でも先発を託されたが、試合の直前、佐藤 洋監督から「8割の力で投げてみろ」との助言を受けた。その言葉を信じ、「楽しむことを意識して、力を抜いて自分のリズムで投げた」というハッブスは、大一番で6回1四死球無失点の好投を演じる。走者を出しても本塁を踏ませないエースらしい投球で、仙台育英に土をつけての優勝をたぐり寄せた。

　東北大会は先発、中継ぎで全4試合に登板。聖光学院（福島）との準決勝では2番手でマウンドに上がり、6.0回無四死球1失点の快投で決勝進出に貢献した。ただ、準決勝以外の3試合は11.2回を投げ与四死球が8と、やはり制球面での課題も残る大会に。高校最後の1年に向け、まだまだ伸び代はありそうだ。

　佐藤監督は昨秋最も成長した選手としてハッブスの名を挙げており、周囲からの期待は高まるばかり。まずは今春、聖地で偉大な先輩・ダルビッシュを彷彿させる背番号1の姿を披露したい。

（記事：川浪 康太郎）