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2023年の沖縄は北谷に注目!1年生中央大会、新人中央大会で着々と実績積む

2023.01.18

 沖縄県の2023年は九州地区高校野球大会を制した沖縄尚学を中心に回ることが予想されるが、公立校で且つ少人数の部員で「ジャイアントキリング」が狙える注目のチームを、ここでは紹介したい。

1年生中央大会に14年ぶりに出場

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北谷・真喜志

 2022年の沖縄県高校野球1年生中央大会(以下1年生中央大会)はエナジックが初優勝したが、その1年前の同大会に実に14年ぶりの出場を果たしたチームが北谷だ。

 北谷が属する中部南地区は、21世紀になって活躍が光る中部商美里工、伝統校として人気も高いコザなどが強豪校としてその他の大会でも活躍している。まずは2010年から2010年まで、1年生中央大会に出場した中部南地区のチームを挙げてみよう。

2020年 中部商コザ
2019年 中部商コザ
2018年 中部商美里工
2017年 中部商美里工
2016年 中部商コザ
2015年 コザ美里工
2014年 美里工球陽中部商(九州地区高校野球大会出場により推薦枠にて中部商も出場)
2013年 中部商コザ美里工(九州地区高校野球大会出場により推薦枠にて美里工も出場)
2012年 中部商美里工
2011年 コザ北中城
2010年 北中城美里

 2011年からの10年間は、中部商美里工、そしてコザの3チームのいずれかが必ず出場して且つ、1年生中央大会初出場を果たした2014年の球陽以降の2015年からの6年間は、中部商美里工コザしか出場していない。沖縄カトリック普天間宜野湾とともに北谷は、常連3校の壁を崩せないでいた。

[page_break:昭和の頃に言われていた「1年生中央大会の勝者は、最後の夏に勝てない」]

昭和の頃に言われていた「1年生中央大会の勝者は、最後の夏に勝てない」

 「注目のチームを紹介」という趣旨から多少逸脱してしまうだろうが、少しだけ興味深いであろう過去の歴史に付き合っていただきたい。1976年(昭51)に始まった1年生中央大会だが、年月が経つにつれ、ある言葉が徘徊するようになる。「1年生中央大会で勝ったチームは、3年生になる最後の夏で勝てない」。第1回大会から7回大会までの優勝校の、それぞれ最後の夏での最高成績は、読谷コザのベスト8だった。そこに、1980年から夏の選手権沖縄大会で前人未踏の4連覇を果たした興南が、その同年の1年生中央大会も制したのだ。(さらに興南は翌年の9回大会も制し初の同大会連覇を達成)

 1年生中央大会の第8回大会で優勝した興南ナインが、3年生最後の夏となる選手権沖縄大会。準々決勝の名護を7対4。準決勝の与勝を4対3で下し、1年生中央大会優勝校として初めてとなる最後の夏で決勝まで進出した興南であったが、立ちはだかった沖縄水産の前に敗れ去るのであった。
 その沖縄水産が1年生中央大会で初優勝したのが第12回大会。決勝戦で石川を4対2で下した。奇しくも興南と同じく夏の選手権沖縄大会4連覇を達成した年でのことでもあった。

 その翌年の夏、沖縄水産は沖縄県高校野球史に燦然と輝く夏の5連覇を達成。さらに甲子園でも初のベスト4進出と快進撃。まさに不沈艦「沖水丸」。しかし…。12回大会を制したメンバーの最後の夏となる1989年、年号が昭和から平成に変わったにも関わらず、夏6連覇を目指した沖縄水産は準決勝延長11回の末、ライバル興南の前に散ってしまったのだ。

【1年生中央大会で優勝したチームの、最後の夏の成績】

第1回大会優勝:北谷→3回戦でコザの前にコールド負けしベスト16

第2回大会優勝:普天間→準々決勝で優勝した中部工に1対3で敗れベスト8

第3回大会優勝:読谷→3回戦で北山に1対4で敗退しベスト16

第4回大会優勝:コザ→2回戦で沖縄工と1点差の末、敗退

第5回大会優勝:名護→3回戦で名護と1点差の末、敗退しベスト16

第6回大会優勝:与勝コザとの1回戦、延長14回の末、敗退

第7回大会優勝:小禄→ベスト8

第8回大会優勝:興南→準優勝

第9回大会優勝:興南→準優勝

第10回大会優勝:嘉手納→3回戦で石川に0対6で敗れベスト16

第11回大会優勝:沖縄尚学→3回戦で興南に4対8で敗れベスト16

第12回大会優勝:沖縄水産→準決勝で興南に延長11回の末、敗れベスト4

第13回大会優勝:浦添商→3回戦で豊見城南に1点差で敗れベスト16

 1年生中央大会優勝校の沖縄水産に続き浦添商も最後の夏では3回戦で敗退。昭和の不吉な言葉は平成になっても続くというのか。

 1年生で頂点に立ったことで、同級生には負けるはずがないと傲慢になってしまうのだ、とか。色々な言葉が飛び交う1年生中央大会。そんな言葉を払い除けたのはやはり、王者沖縄水産だった。

[page_break:近年では1年生中央大会で勝ったチームが夏も勝つようになってきた]

近年では1年生中央大会で勝ったチームが夏も勝つようになってきた

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15年の興南ナイン

 第14回1年生中央大会の決勝は、12回大会優勝の故栽弘義監督率いる沖縄水産vs13回大会優勝盛根一美監督率いる浦添商の顔合わせとなった。結果は沖縄水産がサヨナラ勝ち。「1年生中央大会で勝ったら夏に勝てないから、勝たなくて良いと(ナインに)言ったのだけどね」。沖縄を代表する負けず嫌いの名将栽弘義でも優勝後、苦笑いしながらそう語っていたという。

 年を越した1990年の沖縄水産は、秋季大会で他校を圧倒。今も語り継がれる那覇商との決勝戦で延長17回、4時間4分の死闘を制し優勝。九州地区高校野球大会では敗退するも、翌年の県春季大会では5試合3失点と守りで頂点に立った。

 注目の夏の選手権沖縄大会。初戦となる美里工戦で苦戦する沖縄水産。「やはり1年生中央大会の勝者は…」と、囁かれていたかどうかは分からないが、不穏な思いがよぎる沖縄水産ファンはいただろう。しかし6対4と何とかそのゲームを突破した沖縄水産は、その試合以降の4試合全てで4点差以上をつける横綱野球を見せ2大会連続の頂点に立った。そしてこの瞬間、1年生中央大会で語られていたあの言葉が拭い払われたのだった。その後の沖縄水産、県勢初となる甲子園決勝進出を果たした1990年に続く甲子園で2年連続準優勝したことは言うまでもないだろう。

第14回1年生中央大会大会優勝:沖縄水産→最後の夏優勝

 近年では、1年生中央大会で勝ったチームが夏に優勝することも少なくない。12年間でゼロという当初から比べると、2009年の糸満から2020年の興南までの12年間で4チームが夏の頂点に立ち甲子園の切符を手に入れている。夏には勝てなかったが、2012年の1年生中央大会を制した美里工は、翌年の九州地区高校野球大会で準優勝し、2014年の選抜高校野球大会に出場。1年生中央大会優勝校の甲子園出場校は、同じく2009年からの12年間で述べ5チームとなる。
 もう少し枠を広げて、2015年の興南、2019年の沖縄尚学と新人中央大会準優勝校を含めた、1年生中央大会決勝進出校の甲子園出場回数は、確率が半分以上となる7チームだ。

[page_break:夏のベスト8から新人大会準V]

夏のベスト8から新人大会準V

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永山

 閑話休題。2021年の冬、32回大会以来となる14年ぶりの1年生中央大会出場を決めた北谷は、年明け今年の新人中央大会にも出場したばかりでなく、一気に準優勝まで駆け上がった。その原動力はエース永山 大地投手だ。

 まずは新人戦前の選手権沖縄大会から話そう。北谷は1回戦のエナジックを6対4で下す。2回戦の首里東との戦いでは打線が2ケタ安打をマークし9対1で快勝。続く3回戦では、3年生の知念 柊哉投手が7回無失点と好投し4対0で勝利。夏は19年ぶりとなるベスト8進出を果たした。

 4試合に登板(2試合に先発)した永山は、17.2回を投げて防御率1.53。奪三振率が6.14。K/BBは驚異の12.00を記録した。

 新チームへと移行しての新人大会中部南地区予選で、何と7戦全勝した北谷は17年ぶりに中央大会へ出場。その新人中央大会1回戦、7回コールドゲームで下した那覇戦では、3回に3番・内間 北登が先制打を放つと、4番・真喜志 航も走者一掃の3点適時二塁打。計4点を奪うなど9対0で快勝する。

 続く浦添商戦では永山がバットでも魅せる。初回の2点適時打を含む4打数3安打4打点。投げても8回途中まで無失点に抑えた。
 準決勝の相手は日本ウェルネス沖縄。2回に先制され、初めてのビハインドゲームとなったが、5回にスクイズで1点。6回には根間 悠翔の三塁打で同点とすると、7回に主将の大城 勇人の適時打で逆転に成功。これを守り切り、自身初めてとなる完投勝利を記録した永山。チームは準優勝した第8回大会以来41年ぶりの決勝戦へとコマを進めた。

 大会初優勝を目指す北谷に立ちはだかったのは夏の王者・興南。しかし北谷は先発した永山が5回を1失点に抑えるなど、7回表まで3対1とリードする。だが試合終盤、さすが興南といったところで逆転負けを喫したが、スコアは3対4とわずか1点差の惜敗。地元をはじめ周囲が、健闘したナインに拍手を送る、胸張れる準優勝に輝いた。

 新人中央大会での永山は、全4試合(28.1回)に登板し防御率は0.64と夏に比べて向上。奪三振率は、ぼぼ同じ6.36。K/BBは下りはしたがそれでも5.00と、制球力の良さを十分に発揮した。

 秋季大会でこそ、宜野座の前に敗れベスト16止まりに終わった北谷だが、スタミナとパワーをこの冬で補うことができたならば、2023年の春と夏は、現在14名からなる少数精鋭の北谷が起こす「ジャイアントキリング」が、幾度となく見受けられるかも知れない。

(記事:當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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