
ウェルネス・富村
沖縄県高校野球3大ニュースでも触れたように、連合チーム初のベスト8に始まった春に沖縄水産が25年ぶりの制覇。その後、興南の選手権沖縄大会と新人中央大会制覇、沖縄尚学の秋季県大会と九州制覇、エナジックの1年生中央大会優勝で幕を閉じた2022年沖縄県の高校野球を総括してみたい。
コロナに悩まされた具志川商、興南、宜野座
ひと冬越した春、沖縄県高校野球春季大会がもうすぐ開幕というところで悲報が襲う。3月20日の大会初日に登場する予定だった具志川商が部員のコロナ感染により出場辞退。それから数日後、昨年の沖縄県高校野球秋季大会を制覇していた第1シードの興南が部員のコロナ感染により同じく出場辞退を申し出てきた。当該野球部はもちろん、野球関係者やファンも涙を飲むまさかの出来事となった。
具志川商、興南2校の衝撃を受け止めた県内各チーム。感染しないようにと細心の注意を払いながら迎えた3年生最後の夏。1回戦全チームが無事に試合を終え、さぁ2回戦と意気込むところで、宜野座が凶報に見舞われる。「諦めないで」。3年生にとって本当に最後の大会。沖縄県高校野球連盟の先生たちも、宮城 岳幸監督に対し最低9人になっても良いから、感染していないメンバーで出場することを打診。監督はじめ、3年生、2年生、1年生が懸命にかからないように注意していたが、1日立ち、また1日とPCR検査で陽性が確認された。ついに9人を割ってしまい、泣く泣く出場辞退。3年生が途方に暮れてしまったが、宮城 岳幸監督は別のことを考えていた。「お前たちをこのままでは終わらせない。とにかくバットを振っておけ!」と指示。今まで1度も嘘をついたことのない指揮官の言葉に戸惑いながらも、素直にバットを振り続けた3年生たちに、選手権沖縄大会が終わって数日後、吉報が届く。春の大会で同じく悔しい思いをした具志川商が名乗りを上げた。そう、引退試合である。
当初は宜野座が2回戦で当たる予定だった興南との引退試合を考えていたが、それはあくまで優勝を逃した場合のみ。そのあとでも、具志川商が手を挙げてくれたことが嬉しかった。会場は地元のかりゆしホテルズボールパーク宜野座球場に決まった。
当日はもちろん村内の方々が大勢スタンドに駆け付け、県内テレビ、新聞も取材に来た。宜野座のメンバーは全て3年生だけで臨んだ。スコアは8対8、両軍ヒットの数まで8本ずつと、天の神様が用意したかのような数字が並び9回引き分け。勝つことはできなかったが、同じくコロナで悩んだ具志川商ナインとガチンコ勝負できたのが嬉しかった。最後は両軍並んで写真に収まるなど、清々しい引退試合となった。