Column

聖隷クリストファーの無念、イチロー氏の指導など東海地区の高校野球3大ニュースは?

2022.12.25

秋季東海大会準優勝の聖隷クリストファーがセンバツ選出から漏れる

聖隷クリストファーの無念、イチロー氏の指導など東海地区の高校野球3大ニュースは? | 高校野球ドットコム
2021年の秋季東海大会で準優勝をおさめた聖隷クリストファー

 この春の第94回選抜高校野球大会の出場校が発表され、全国的にも最も話題になって、論争にもなったのが、東海地区の2校目の選出だった。

 センバツ出場校選考の重要な参考資料となる前年の秋季東海地区大会は静岡勢同士の決勝となった。県大会決勝の再戦となったが、県大会同様に日大三島聖隷クリストファーを下した。それでもこれで、東海地区の2枠としては日大三島は内定、聖隷クリストファーもほぼ確定というのが大方の見方だった。

 ところが、いざ発表を迎えると、準決勝で日大三島に敗退した大垣日大が「両校を比較して、甲子園で勝てるチームとして力がある」ということで2校目として聖隷クリストファーを抑えて選出された。このことが、大きく問題となって、「選抜の選考基準が曖昧」とか、「密室の選考会の実際のところが見えない」などの声も上がってきた。「地域性で静岡2校を避けた、ということであればまだ納得できた」というような意見もあったという。そうしたことが報じられて、社会的な問題にもなるくらいに取り上げられていった。一部では、「聖隷クリストファーを甲子園へ出場させよう」という署名運動まで起きたくらいだった。

 もっとも、そのことで選考結果が変更されることはなかった。

 大垣日大は、センバツでは初戦こそ21世紀枠で出場した只見(福島)に快勝したが、2回戦では星稜(石川)に敗れた。それでも、初戦突破を果たしたことで、何とかその責務は果たしたといってもいいであろうか。

 センバツに選出されなかった無念さを何とか夏には自力で勝ち上がって晴らしたいという聖隷クリストファーだった。しかし、静岡大会準決勝で静清に屈して春夏通じて初の甲子園出場という悲願達成はならなかった。

[page_break:県立岐阜商、三重、愛工大名電が夏の甲子園2年連続出場]

県立岐阜商、三重、愛工大名電が夏の甲子園2年連続出場

聖隷クリストファーの無念、イチロー氏の指導など東海地区の高校野球3大ニュースは? | 高校野球ドットコム
有馬(愛工大名電)

 東海4県のうち、3県で夏の選手権は2年連続優勝となった。岐阜県の県立岐阜商、三重県の三重、そして愛知県の愛工大名電だ。これは、過去を遡ってみても非常に珍しいケースともいえる。このことは、近年の傾向の一つでもある、現場での二極分化の現象の表れではないかとも思われる。

 連続出場そのものは、決して珍しいことではないのだが、東海地区4県のうち3県で連続となるケースは初めてだった。高校野球の全国的な傾向でもあるのだろうけれども、各地区で上位校が固定化されてきていることは確かだ。その顕著な結果として、こうした重複した県での連続出場という現象が起きているということである。現実には、大会の勢いに乗って実現した地区大会優勝であったとしても1度でも甲子園出場を果たすことは、とても難儀なことである。それを、連続で達成していかれるということは、それだけ安定した力を備えているということになる。

 ただ、その一方で東海地区のようなこうした現象が多発してくると、高校野球の二極分化はより進んでいくのではないかと、そんな懸念材料も、なきにしもあらずではある。

 そんな思いをクローズアップさせたということで、このことも大きな今年の東海地区のニュースとして取り上げておきたい。

[page_break:静岡県立富士高校にイチローが巡回指導で現れる]

静岡県立富士高校にイチローが巡回指導で現れる

 学校関係者にも、部員たちにも知らせていない形で、静岡県東部地区の進学校でもある静岡富士に、あのイチロー氏が突然、巡回指導に現れた。イチロー氏は、昨年から高校野球の学校に要請があれば指導に訪れていたが、今年はイチローサイドから「ここに行ってみようか」ということで見つけて訪れているという。そんな中で、12月最初の週末には東海地区で初めてイチロー氏が姿を現したのが静岡県の静岡富士高校だった。

 静岡富士は、県東部の進学校として知られているが、野球部もかつて1979年夏と1987年春には甲子園出場も果たしているという実績がある。現在は部員19人と小世帯だが、2021年に三島南を21世紀枠で甲子園出場に導いた稲木恵介監督が今春に異動してきた。そのことで、「静岡富士は、何かやる存在になっていくのではないか」という声も挙がってきていたところだった。そんな矢先のイチロー訪問だっただけに注目された。

「別段、ボクが依頼したということではないんですけれども…。あちらのマネジャーさんとかスタッフの人がいろいろ調べて選定されているのでしょうけれども、イチローさんが来るという連絡があってからは、緊張していましたね(苦笑)」

 そして、「こうしたことを一つのステップとしていきたい」と、今秋は東部地区予選2回戦で敗退してしまったチームの、次へ向けての大きなモチベーションとしていく意欲である。稲木監督としては、「このことで、ウチを意識して、(中学時代に)野球をやっていた子が入学してきて入部してくれるといいんですけれどもね」と、期待を膨らませていた。

(記事:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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