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混戦のカギを握るノーシード・関東一の存在 2023年東京の高校野球を展望!

2023.01.06

混戦のカギを握るノーシード・関東一の存在

混戦のカギを握るノーシード・関東一の存在 2023年東京の高校野球を展望! | 高校野球ドットコム
髙橋 徹平(関東一)

 2023年も秋季都大会の4強である東東京の二松学舎大附帝京、西東京の東海大菅生日大三を中心とした展開になるだろう。ただ、この4校が盤石かと言われれば、必ずしもそうではない。

 秋季都大会優勝の東海大菅生東海大菅生と互角の試合をした日大三は、例年ほどの破壊力はない。チーム全体のレベルの高さでは準優勝の二松学舎大附が1歩リードしているが、先発登板した大矢 青葉外野手(2年)に安定感を欠いた。帝京もエースの高橋 蒼人投手(2年)が崩れると脆さが出た。

 混戦に拍車をかけるのが、関東一の存在である。公式戦の経験者が少なく、秋季都大会ではまさかの2回戦敗退となった。それでも、選手個々のレベルは高いうえに、早期敗退により鍛える時間は長かったので、春以降は巻き返してくるだろう。問題は2回戦敗北により、春はノーシードでの参戦になることだ。

 春季都大会でベスト16以上が夏の大会でシードされる。関東一が春季大会でノーシードになったことにより、春は早い段階で秋の4強を含めた強豪と対戦する可能性が出てきた。関東一がチーム力をどこまで上げ、春季大会はどこと対戦するかは、東東京大会だけでなく、西東京大会の優勝争いにも影響を及ぼす可能性がある。

 それでなくても西東京は実力伯仲である。秋の大会の準々決勝で東海大菅生国士舘に、日大三桜美林に延長戦の末、かろうじて勝った。世田谷学園は秋の大会で関東一に続き、早稲田実業にも勝っている。22年のセンバツベスト4の國學院久我山も、秋はエース・木津 寿哉投手(2年)の不調で本来の力を出せずに敗れたが、優勝争いに加わる力はある。

 東東京にしても、二松学舎大附帝京の2強に加え、関東一、名門復活を目指す日体大荏原修徳東亜学園日大豊山あたりにも力はある。

 さらに混戦を予感させるのが、かなりの強豪校が秋季都大会の1次予選で姿を消していることだ。東東京勢では明大中野豊南都立雪谷都立小山台東海大高輪台上野学園都立高島都立文京都立城東共栄学園などがあり、西東京勢では日大二駒大高明星桐朋早大学院都立富士森日本学園都立昭和などが挙げられる。22年の夏は、秋や春は1次予選で敗れた都立富士森が準決勝に進出した。可能性を秘めたチームは、他にも多くあるはずだ。

[page_break:ビッグな3人+帝京・高橋の投手四天王に注目]

ビッグな3人+帝京・高橋の投手四天王に注目

混戦のカギを握るノーシード・関東一の存在 2023年東京の高校野球を展望! | 高校野球ドットコム
篠﨑 国忠(修徳)、日當 直喜(東海大菅生)、中村 海斗(明大中野)

 22年4月8日、[stadium]江戸川区球場[/stadium]で行われた春季都大会3回戦の修徳明大中野の試合には多くのスカウトが詰めかけ、2年生投手の投げ合いを見守った。修徳篠﨑 国忠投手(2年)は192センチ、明大中野中村 海斗投手(2年)は188センチ。東京の高校野球では稀な、スケールの大きい投手の投げ合いであった。体の大きな投手は仕上がるのに時間がかかることが多い。2人とも22年は夏も秋も結果を残すことはできなかったが、23年は大きく飛躍してほしい逸材だ。

 東海大菅生日當 直喜投手(2年)は、身長190センチの大型投手であるが、秋季都大会の優勝の主役になるなど、既に結果を残している。この日當に篠﨑、中村を加えた文字通りビッグな3人に、1年生の夏から帝京の中心投手として活躍している高橋 蒼人投手(2年)を加えた4人が、東京の投手の四天王といったところだ。彼らによるスケールの大きな投げ合いを期待したい。

 都立雪谷御園 拓摩投手(2年)も身長186センチの大物で、どこまで成長するか楽しみだ。早大学院西山 恒斉投手(2年)、日体大荏原石井 祥太投手(2年)、桜美林の吉田 啓人投手(2年)などに加え、世田谷学園二見 純太投手(2年)、東農大一笹本 理一投手のような左の横手投げの投手も期待したい。

 打者では二松学舎大附片井 海斗内野手(1年)がスケールに加え、うまさもあり際立っている。二松学舎大附には神谷 虎之介外野手(1年)、中川 龍斗内野手(2年)ら力のある選手が多い。

 日大三二宮 士内野手(2年)、帝京稲垣 渉外野手(2年)という強豪校の主将は、勝負強い打撃が期待される。國學院久我山の木津は、エースであり長打力がある一方で、バントも光るものがある。国士舘福 正吉内野手(2年)は、俊足で打撃センスも優れている。

 また日大豊山光永 翔音外野手(2年)も見逃せない。22年の夏の高校総体では競泳の100メートルバタフライなど3冠タイトルを獲得。もともと水泳と野球の二刀流で注目されていたが、22年の高校総体後は、ほぼ野球に専念。秋季都大会は背番号20でベンチ入りした。190センチという長身に加え、水泳で鍛えた肩幅は、広くがっちりしている。北海道の学校などで野球とアイスホッケーの二刀流という話は聞いたことがあるが、野球と水泳の二刀流というのは、あまり聞かない。それでも体のバランスを考えれば、高校生くらいまでは複数の種目をこなした方がいいという見方もある。光永の二刀流は高校球界だけでなく、日本のスポーツ界にとっても注目すべきことだ。その活躍を期待したい。

(記事:大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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