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関東一のスラッガーなどが彩った2022年の東京の高校野球を総括!

2022.12.24

負傷者が多い中で際立った関東一・井坪の存在

関東一のスラッガーなどが彩った2022年の東京の高校野球を総括! | 高校野球ドットコム
井坪 陽生(関東一)

 今年の3年生はコロナ禍の中で入学し、入学式ができなかったり、学校行事が中止になったりする中で、高校生活を送った。それとは直接関係ないかもしれないが、選手、とりわけ投手に負傷者が多く、公式戦の経験を積みながら、素質を伸ばしていった選手は少なかった。

 その代表が東海大菅生鈴木 泰成投手(3年)である。昨年のセンバツでの力投をみて、その後の成長が楽しみであったが、昨年の6月にヒジを痛め、手術を経て本格的に復活したのは今年の夏だった。投球は魅力的だったが、実戦での体力が不足していたのか、西東京大会の決勝で力尽きた。若林 弘泰監督が「世代ナンバーワン」と語る逸材。大学4年間で、その実力を示してほしい。

 八王子星野 翔太投手(3年)も1年の秋から期待されていたが、2年生の秋以降、伸び悩んだ。新チーム発足時はエースであった日大三矢後 和也投手(3年)も、この春と夏は負傷により登板できなかった。その一方で、左ヒジの疲労骨折でリハビリ期間があった二松学舎大附辻 大雅投手(3年)は、3年生になって復帰し、最後の夏に花開き、育成で広島に入団した。

 東京の高校球児で、ドラフトで支配下選手として指名されたのは、阪神に3位指名された関東一の外野手・井坪 陽生(3年)だけだった。俊足で長打力があり、投手としても144キロの速球を投げ、身体能力の高さは際立っていた。

凄みを増す二松学舎大附・市原監督の人材活用術

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布施 東海(二松学舎大附)

 甲子園には春は國學院久我山二松学舎大附、夏は二松学舎大附日大三が出場した。センバツで國學院久我山がベスト4に進出した。東京の高校では10年ぶりの快挙である。しかし準決勝では大阪桐蔭(大阪)に完敗した。

 一方、二松学舎大附はセンバツでは初戦で敗退したが、夏は3回戦に進出し、大阪桐蔭に敗れたが好試合を繰り広げた。善戦の立役者は、秋やセンバツではエースであったが、夏は東東京大会から登板機会が少なかった布施 東海投手(3年)であった。思い当たるのは春季都大会の準決勝と決勝戦である。市原 勝人監督は、準決勝の日大三戦で当時は控えの辻を先発させ、決勝の関東一戦ではエースだった布施を先発させた。関東大会出場がかかり、夏は対戦しない西東京の日大三との準決勝にエースが登板するのが普通である。そこでエースの交代が頭の中にあったのかもしれない。それでいて、元のエースの布施のモチベーションを維持して、大事なところで起用する。その用兵術というより人材活用術は、年々すごみを増している。

[page_break:上位校の固定化進む中で、古豪復活を目指す日体大荏原]

上位校の固定化進む中で、古豪復活を目指す日体大荏原

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小金井 凌生(日体大荏原)

 最近の気になるのは、同一カードの対戦が多いことだ。日大三東海大菅生は、昨年の秋から4大会連続で対戦している。帝京國學院久我山も、東西に分かれているため夏は対戦がないものの、秋、春、秋と3大会連続で対戦している。その他、関東一二松学舎大附日大三二松学舎大附といったカードも目立つ。

 その要因として、上位校の固定化の兆しがある。2020年の秋以降、夏の大会を除き、秋と春の都大会の4強は、関東一二松学舎大附帝京日大三東海大菅生國學院久我山に固定されている。この1年の公式戦で、6強が6強以外のチームに敗れたのは、関東一が夏に都立城東、秋に世田谷学園國學院久我山が夏に国士舘に敗れた3例だけだ。それだけに、この6強の一角を崩したこの3校の健闘が光った。

 また東東京大会で日体大荏原が準優勝したのも特筆すべき出来事だ。決勝進出は43年ぶり。甲子園には46年遠ざかっているが、夏の第1回予選の準優勝校であり、古豪復活への期待も大きい。しかし、春は関東一、夏は二松学舎大附、秋は帝京に敗れており、上位校の厚い壁も実感している。その壁をどう破るか。

 いまさらではあるが、今年も高校生の成長、変化には驚かされた。この秋、東海大菅生は夏のメンバーの大半が抜け、苦しんでいた。秋季都大会の1回戦をみた感じでは優勝するとは思えなかったが、一戦一戦強くなった。

 桜美林は秋と春は1次予選の初戦で敗れ、公式戦未勝利で夏を迎えたが、夏は準々決勝に進出した。秋、春とも都大会に進めなかった都立富士森の準決勝進出も驚きであった。来年もまた、各校、成長した姿をみせて、東京の高校野球を盛り上げてほしい。

(記事:大島 裕史

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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