目次

[1]次なる快挙を目指す仙台育英
[2]仙台育英に負けじと、全国の舞台を狙う私立強豪校/公立校が今年も宮城を席巻するか


山田 脩也(仙台育英)

 「負けて心が晴れやかとは言わないが、嬉しい気持ちがある」。仙台育英の須江航監督は、昨秋の宮城県大会決勝で東北に敗れた直後のインタビューで、意外な言葉を口にした。続けて、「東北高校だけでなく、初戦から戦ったすべての学校が夏までより前向きで積極的な野球をしていた。(仙台育英の)甲子園優勝が宮城県の多くのチームに勇気を与えて、『自分たちにやれないことはない』と思って野球をしていることの証ではないか」と、その心情の真意を説明した。

 仙台育英の甲子園優勝により、例年以上に関心を集めた昨秋の宮城県大会。新チームが出揃い、今年を占うこの大会では、ハイレベルな戦いが繰り広げられた。須江監督が言うように、宮城の高校野球は進化を続けるのか。秋の戦いをもとに、注目の2023年を展望する。

次なる快挙を目指す仙台育英


 仙台育英は甲子園優勝を経験した2年生が多く残っていることもあり、今年も日本一を狙える戦力を誇る。特に「140キロクインテット」の一角を担った高橋 煌稀投手、湯田 統真投手、仁田 陽翔投手(いずれも2年)は昨秋、変化球の使い方や制球力など、球速だけでない投手力の成長をそれぞれ示した。今年も他チームの脅威となるだろう。

 一方の打線は東北大会まではつながりを欠く試合も多かったが、明治神宮大会では本領を発揮した。初戦の沖縄尚学(沖縄)戦は0対4で迎えた9回に5点を奪いサヨナラ勝ち。最後は夏から4番を打つ斎藤 陽外野手(2年)の適時打で試合を決めた。続く大阪桐蔭(大阪)戦は4対5で惜敗したものの、好投手・前田 悠伍投手(2年)の立ち上がりを攻め、最終回には1点差に迫る粘りの攻撃を見せた。

 明治神宮大会の2試合ではいずれも、最終回に上位打線が機能した。1番・橋本 航河外野手(2年)、2番・山田 脩也内野手(2年)、4番・斎藤は夏から続く布陣。そこに1年生の3番・湯浅 桜翼内野手が加わり、勝負強い打撃で得点を生み出している。この上位打線を中心に得点力を向上させ、強力投手陣を援護したい。センバツ初優勝、そして夏の甲子園連覇へ。さらに強くなった仙台育英を見るのが、今から楽しみだ。