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群雄割拠の宮城は甲子園Vの仙台育英だけじゃない 2022年の宮城県高校野球を総括!

2022.12.23

群雄割拠の宮城は甲子園Vの仙台育英だけじゃない 2022年の宮城県高校野球を総括! | 高校野球ドットコム
秋季大会を制し安堵の表情を浮かべる仙台育英ナイン

 2022年、宮城の高校野球は大きな転換期を迎えた。仙台育英が悲願の甲子園初優勝を果たし、深紅の大優勝旗を杜の都に持ち帰ったのだ。仙台育英を中心に繰り広げられた今年の戦いを振り返る。

仙台育英、東北の「2強」が躍動

 春、夏はいずれも仙台育英が制覇。昨夏は県大会4回戦で敗れる屈辱を味わったが、一冬越え、強い仙台育英が戻ってきた。春は4試合すべてが7点差での勝利と、盤石の勝ち上がりを披露。特に3年生左腕の斎藤 蓉投手、古川 翼投手を中心とした投手陣は他を寄せ付けなかった。夏は2年生右腕の高橋 煌稀投手、湯田 統真投手も実力を伸ばし、鉄壁の投手陣はさらに厚みを増した。

 一方、夏の県大会では打線がつながらない場面が散見され、接戦も多かった。それでも甲子園初戦の鳥取商(鳥取)戦で10得点を挙げると、その後も聖光学院(福島)との準決勝で18得点を奪うなど、聖地では野手陣が奮起。投打がかみ合い、東北勢初優勝の快挙を成し遂げた。

 新チームで迎えた秋は県大会こそ準優勝に終わったが、東北大会を制し明治神宮大会に出場。初戦の沖縄尚学(沖縄)戦で最終回に4点差をひっくり返すサヨナラ劇を見せると、準決勝は敗れたものの大阪桐蔭(大阪)を苦しめた。来年も快進撃が続くことを予感させる戦いぶりだった。

 春準優勝だった東北は、夏は新型コロナウイルス感染者が複数出たことも影響し、準々決勝で敗退した。佐藤 洋新監督を迎えた秋はハッブス 大起投手、秋本 羚冴投手(いずれも2年)の二本柱を軸とした投手力が光り、県大会で仙台育英の10連覇を阻止し頂点に立った。東北大会も決勝まで駒を進め、来春のセンバツ出場を当確としている。長年、宮城の高校野球をリードしてきた両校の強さが際立つ1年だったと言えるだろう。

[page_break:「2強」の背中を追う私立校の勢力図は目まぐるしく変わる/止まらない公立校の成長]

「2強」の背中を追う私立校の勢力図は目まぐるしく変わる

群雄割拠の宮城は甲子園Vの仙台育英だけじゃない 2022年の宮城県高校野球を総括! | 高校野球ドットコム
新沼 櫂我(日本ウェルネス宮城)

 全国の舞台を狙える私立校は仙台育英東北の2校だけではない。古川学園は春、夏と連続で4強入り。エースで打線の中軸も担った三浦 龍政投手(3年)が、投打の活躍でチームを引っ張った。2020年創部の新興校・日本ウェルネス宮城は春、夏ともに8強入り。1期生である早坂 海思投手(3年)、菅井 惇平外野手(3年)らを中心に、3年間で着実に成長を遂げた。前田 直哉投手、今野 悠貴内野手と投打に2年生の逸材を擁した東陵も、同じく春、夏ともに8強に入った。

 聖和学園は夏、ノーシードながら佐沼東北学院榴ケ岡仙台東北古川学園、と次々と実力校を撃破し、2004年創部で初の決勝進出を果たした。決勝は仙台育英に敗れたが、1対3と善戦。エース阿部 航大投手(3年)は6試合中5試合で完投し、5割超の打率をマークした三浦 広大外野手(1年)、高橋 拓英内野手(3年)らが引っ張る打線は準々決勝で東北の好投手・伊藤 千浩投手(3年)を攻略するなど機能した。

 春、夏と奮闘した私立勢だが、新チームで戦った秋は苦杯をなめた。16強に入った私立校は東北仙台育英東北学院の3校のみ。春、夏は16強に進出していた古川学園日本ウェルネス宮城東陵仙台城南は2回戦までに敗退し、夏準優勝の聖和学園、上位に食い込む実力を持つ東北学院榴ケ岡大崎中央東北生文大高も初戦であっさり姿を消した。県内私立校の勢力図は毎年のように変化しており、来年はどこが「2強」を脅かすか、注目だ。

止まらない公立校の成長

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加藤 光志郎(仙台三)

 県内の勢力図を変える要因となっているのが、近年著しい公立校の成長だ。春、夏は16強のうち半分の8校が公立校(市立や高専を含む)で、秋は実に13校が公立校だった。一方、4強入りしたのは春の仙台三、夏の仙台南、秋の利府仙台三で、決勝に進んだ公立校はゼロ。全国の舞台を見据える上では、私立校の壁はまだまだ高いとも言える。

 県内屈指の進学校である仙台三は、春、秋と4強に入った。昨夏は準優勝するなど上位常連校となりつつあり、実績を認められ宮城の21世紀枠推薦校にも選出された。夏は仙台南が1977年の創部以来初の4強入り。3回戦で仙台三を破った名取北は36年ぶりに8強入りを果たした。仙台南名取北はともに接戦を勝ちきる粘り強さがあり、強豪ひしめくトーナメントの中で強烈な存在感を示した。

 秋は利府が3位に入り、東北大会に出場。東北大会は初戦の聖光学院戦に6対9で敗れたが、強豪相手に一時は3点のリードを奪うなど健闘した。秋は利府のほか、仙台三石巻工仙台南仙台二柴田仙台商松島仙台仙台東古川佐沼塩釜が16強入り。この中から決勝、そして全国に高校は現れるか。来年も公立校の躍進から目が離せない。

(記事:川浪 康太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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