
杉本倫太郎(立命館守山)、大槻虎生(近大新宮)
強豪校が集う近畿地区ではあるが、2021年は京都国際(京都)、2022年には和歌山東(和歌山)が自力で甲子園初出場を果たしており、2023年も彦根総合(滋賀)がセンバツ初出場を決める可能性が高い。新たな強豪校が次々と登場する土壌が近畿地区にはあるのだ。
上記以外の学校でも今後が楽しみな甲子園未出場校は数多く存在する。そんな中でも今回は2023年に甲子園初出場が期待できる2校を紹介していきたい。
まずは滋賀県にある立命館守山だ。野球部の創部は2016年と歴史は浅いが、社会人野球の新日鐵住金かずさマジック(現・日本製鉄かずさマジック)のコーチとして2013年の日本選手権優勝に導いた実績のある秋武祥仁監督が一からチームを強化。2019年秋に早くも近畿大会初出場を果たすと、それからは県大会上位の常連に。ここ2年は夏の滋賀大会で準優勝という結果を残している。
近江が4大会連続で夏の甲子園に出場している中、あと1歩の立ち位置にいる立命館守山。秋は3回戦で瀬田工に延長11回サヨナラ負けを喫したが、夏からの主戦投手が複数残っており、1年生にも有望選手がいるため、春以降に大きく成長する可能性がある。
投手陣は旧チームから主戦として投げていた加藤 優芽投手(2年)と杉本 倫太郎投手(1年)が軸となる。左腕の加藤は球速こそ120キロ台後半だが、回転数が多い直球を武器にフライアウトを量産。相手打者は打てそうで打てないといった感覚に陥ることだろう。
杉本は130キロ台中盤の直球を投げる右腕で、1年春から公式戦のマウンドを経験している。入学時点での素材は歴代トップレベルと秋武監督も認めており、今年には140キロに到達していてもおかしくはない。
野手陣は小畑 颯諒内野手(2年)と熊井 啓太内野手(2年)が旧チームからレギュラーとして出場しており、秋は小畑が1番、熊井が3番を任されていた。彼らを差し置いて4番にするのが1年生の田中 暖人内野手。大阪柴島ボーイズ出身で、カル・リプケンワールドシリーズ U12日本代表に選出された実績もある。今後、滋賀県を代表する強打者として名を馳せていくのではないだろうか。
1年生大会では準々決勝敗退に終わるも近江を相手に4対5と善戦。全国クラスの強豪校と対等に戦える力は秘めている。今年の夏に甲子園初出場を果たしたり、秋にセンバツを当確にするような結果を残す可能性は十分にありそうだ。
もう1校は和歌山県の近大新宮。昨秋には県大会準優勝で近畿大会初出場を果たした。現チームは投手力に優れており、春以降も上位進出が期待できる。
エースを張るのは大槻 虎生投手(2年)。130キロ台中盤のノビのある直球とチェンジアップを武器に巧みな投球術で相手を翻弄する。春には智辯和歌山相手に6回1失点の好投を見せた。
大槻以外にも荒木 壮太投手(2年)や岡 良将投手(2年)と計算できる投手が控えており、夏の過酷な戦いも乗り切れる陣容だ。
打撃面では長打力のある選手こそ少ないが、ここぞの場面での集中打が光る。この冬でパワーアップできれば、甲子園を十分に狙えるチームになっていくのではないだろうか。
近大新宮はその名の通り、近畿大の付属校で、卒業後は近畿大に進む生徒が多い。有名大学に進学できる可能性が高いということで、近年は人気も上がってきているようだ。近畿大会に出場したことで、今後は有望選手の入学が増えてくるかもしれない。
学校が所在する新宮市は三重県との県境にあり、和歌山県のメイン球場である紀三井寺公園野球場までは車で約3時間かかるというハンディはあるが、昨秋はそれを乗り越えて決勝まで進むことができた。
近年は智辯和歌山、市立和歌山、和歌山東と和歌山市にある学校の活躍が目立つ中で、近大新宮が勝ち上がれば、地元も盛り上がるだろう。今夏に悲願の甲子園初出場を成し遂げることができるだろうか。
(記事:馬場 遼)