平幕力士が、横綱に土俵際まで追い詰められながら押し戻す。期せずして、国技館が拍手に包まれる。そんなようなもの、か。

 8月18日、第104回全国高校野球選手権準々決勝第3試合の9回表、大阪桐蔭(大阪)が4対3とリードしての守りだ。下関国際(山口)の先頭・赤瀬 健心外野手(3年)がヒットで出塁し、松本 竜之介内野手(3年)が続き、仲井 慎内野手(3年)がバント。1死二、三塁とチャンスが拡大する。その一手ごとに、球場内の拍手の音量が増幅し、エリアも拡大する。三塁側アルプスから三塁側内野席へ、そしてネット裏へ。

 そのBGMに乗せられたように、賀谷 勇斗内野手(3年)のたたきつけた打球が、前進守備の二遊間を高いバウンドで抜けていく。逆転2点打。下関国際には失礼だが、平幕力士が5対4で横綱をうっちゃった。

「いまの3年生は、春夏連覇に強いこだわりを持って入ってきた世代。勝ちに結びつけられなかったのは監督の責任ですが、連覇を目指して戦ってくれたのは誇りです」
 と敗軍の将・西谷浩一監督はいう。

 だが、そこまでの戦いぶりは3度目の春夏連覇、そして秋、春、夏の3連覇も十分ありうると思わせた。旭川大高(北北海道)との初戦こそ、序盤に先行されたものの、海老根 優大外野手(3年)、伊藤 櫂人内野手(3年)のホームランなどで6対3と寄り切り。聖望学園(埼玉)との2回戦は、松尾 汐恩捕手(3年)の2本塁打など、打線が25安打と爆発し、7回以外は毎回の19得点。投げては前田 悠伍投手(2年)以下、4投手が2安打無失点に封じ、大勝したのだ。

 現チームは昨年から秋季大阪府大会、近畿大会、明治神宮大会、そして今年のセンバツと無敗で優勝。明治神宮大会が現行の「秋の日本一決定戦」になってから3校目の秋春連覇は、中身が圧巻だ。準々決勝からの勝負どころ3試合すべてが2ケタ得点と、1試合不戦勝の4試合で51得点。チーム打率.386の打線は爆発力がすさまじく、大会を通じてのホームラン18本中、なんと11本を占めた。これは従来の8本を大幅に上回る新記録で、1チームで7人がホームランを打つのも最多だ。市立和歌山(和歌山)との準々決勝では6回、伊藤の1イニング2本を含む3本塁打、チーム1試合6本塁打ともに大会2度目のタイ記録で、1試合チーム43塁打は新記録だ。投げても川原 嗣貴投手(3年)、2年生左腕・前田を中心とした4人のチーム防御率は0.75…。

 春の大阪を制して臨んだ近畿大会は決勝で智辯和歌山(和歌山)に敗れ、無敗の連勝は29で止まったが、夏の大阪大会もまた敵なしだった。7試合で7本塁打の54得点に対し、失点はわずか1なのだ。で、誰が呼んだか「絶対王者」。甲子園での3回戦は、川原が二松学舎大附(東東京)を6安打で完封。スコアは0対4ながら、二松・市原勝人監督は「点差以上の力の差があった。2ランク以上レベルを上げないと勝てません」と、横綱の力量にお手上げだった。