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明石商の春夏4強を支えた投打の2人 2019年センバツでは史上初「先頭打者&サヨナラ弾」も

2022.03.12

明石商の春夏4強を支えた投打の2人 2019年センバツでは史上初「先頭打者&サヨナラ弾」も | 高校野球ドットコム第94回選抜大会のトーナメント表
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ベスト8以上の組み合わせ

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来田が史上初男の面目躍如

明石商の春夏4強を支えた投打の2人 2019年センバツでは史上初「先頭打者&サヨナラ弾」も | 高校野球ドットコム
来田 涼斗

 2021年7月13日、日本ハム対オリックス。オリックスでは、7番左翼で高卒ルーキーがスタメンに名を連ねた。3点を奪った初回、なおも2死一塁で1軍デビューの打席に立つと、日本ハムの先発・池田 隆英投手(創価出身)の初球を右翼席に。プロ野球の1軍公式戦で、高卒ルーキーが初打席の初球をホームランしたのは、史上初めてのことだった。

 そのルーキー、来田 涼斗外野手(明石商出身)である。高校時代から、「史上初」には縁があった。神戸市生まれ。小学生時代にオリックスジュニア入りし、強豪私学28校に誘われたなかから、兄も在籍した明石商(兵庫)に進学した。するとすぐさま、50メートル5秒9の俊足と打力で、1番・外野の定位置を獲得。夏の西兵庫大会でも、1番左翼として打率.350を記録し、チーム初出場だった夏の甲子園でも初戦敗退ながら4打数2安打だから、ただ者じゃない。

 近畿大会で準優勝した1年秋の新チームでも、智辯和歌山との近畿準決勝では、特大の3ラン含む3安打5打点など、打率は低くても勝負強いバットで2019年センバツに乗り込んだ。

 平成時代の最後を飾る、第91回選抜高校野球大会。第5日第1試合で国士舘(東京)と対戦した明石商は7対1と快勝し、来田は2回の先制2点タイムリーなど3打点を記録した。13対4で大勝した大分戦も5打数2安打2打点、準々決勝の相手は、近畿大会で破った智辯和歌山との再戦である。1点を先制された1回裏、先頭の来田は同点ソロ。3対3で迎えた9回にも、右越えにサヨナラ弾をぶち込んだ。つまり…。先頭打者&サヨナラ本塁打という、史上初の大仕事となったわけだ。

 並外れた身体能力、飛び抜けたスイングスピード。「食事と筋トレで、体重が7キロ増えました。体の安定感が増したことが、飛距離のアップにつながっていると思います」とは本人で、ときに小技も求められる1番打者だが、明石商・狭間 善徳監督は、「来田には、バントよりも打たせたほうが確率が高いんです」と真顔で話す。ちなみに、この時点での来田の公式戦本塁打は3本で、前年秋も含めすべてが智辯和歌山戦というキラーぶりだ。またこれもちなみに、明石商はこの年の夏も甲子園で準決勝まで進み、来田はその履正社(大阪)戦の1回裏にまたも先頭打者ホームラン。甲子園で2本の先頭打者弾も、史上唯一である。

[page_break:整然とした思考の中森]

整然とした思考の中森

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中森 俊介

 この年の明石商は、春夏ともにベスト4の快進撃を見せるのだが、来田とともに躍進を支えたもう1人の2年生が中森 俊介投手(現ロッテ)だ。やはり1年夏の西兵庫大会、甲子園での八戸学院光星(青森)戦に登板し、この試合は来田のタイムリーエラーで敗れている。秋はエースとして公式戦2試合完封など、防御率2.30。センバツでは、国士舘(東京)との初戦に自己最速の146キロをマークして10三振、1失点で完投すると、大分との次戦ではリリーフ登板して最速を147キロに更新。強力打線の智辯和歌山戦も3失点完投など、31回3分の2を投げて自責点7にまとめた。

 中森と話していて感じたのは、整然とした対話の力である。たとえば、「まだまだ、連投できる体じゃない」という狭間監督の指摘には、

「体脂肪率が15%とけっこう高くて、筋力も全然ありません。体脂肪率と筋力の比率が合っていない気がしています。だから冬場は体幹強化に重点を置き、握力強化に取り組みました。回転数の向上が狙いです。しっかり最後まで力強い球を投げることが、勝つために必要な要素。そのためには下半身も強くしないといけないし、全体的な底上げをしていかないといけないと思います」

 課題を露呈したのは、智辯和歌山戦の完投から中1日の準決勝だ。東邦(愛知)と0対0の7回2死から、甘く入った直球が決勝3ランとなり、

「これから先、野球を続けていくなかで、高めに浮かないこと、コントロールミスをしないことがずっと課題になると思います」

 と、これも冷静に分析した。3年のセンバツは中止になったが、夏の交流試合の出場で3年間甲子園の土を踏んだ来田&中森コンビ。交流試合も含めて来田は打率.359、3本塁打9打点、中森は62回3分の1を投げて防御率2.31、6勝3敗を記録している。

 そして…。プロ野球のペナントレースでは昨年、西武・松本 航投手とオリックス・来田という明石商の先輩・後輩対決が実現した。今年は中森と来田の、同級生対決が見られるかもしれない。

(文=楊 順行)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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