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アメフト経由の150キロ右腕・吉村優が明かす後輩・清宮幸太郎の素顔と「早実野球」

2022.01.14

 150キロの剛速球が光る吉村 優投手(早稲田実業出身)。1学年後輩には高校通算111本塁打を記録した清宮 幸太郎内野手(現日本ハム)がいて、2年生夏には甲子園ベスト4を経験した。最後の夏はエースとして名門・早稲田実業の看板を背負ってマウンドに登り、西東京大会ベスト8まで勝ち上がった。

 吉村をはじめ、1学年後輩の清宮や、2学年後輩の野村 大樹内野手(現ソフトバンク)に加え、吉村が憧れた斎藤佑樹さん(元日本ハム)など、数多くの名選手を輩出している早稲田実業と指揮官の和泉実監督の指導はどういったものだったのか。

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アメフト経由の150キロ右腕が明かす「早実野球」と後輩・清宮幸太郎の素顔

気づきの野球こそが早稲田実業の野球

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吉村優、高校時代の清宮幸太郎

 1人のOBでもあり、1人の教え子である吉村は、「気づき」というキーワードを用いる。

「文化として、気づきの野球を大事にされています。監督も『日常から何かに気づく力は、野球に生きてくる』と何度も指導してくれまして、その辺りをかなり見られていました」

 吉村自身、2年生の夏に初めてベンチ入りを果たす。硬式のクラブチームで実績がある選手が多くいる中で、中等部の軟式野球部出身ということもあり、些細なところからアピールを始めていた。ボール渡しをはじめ、練習試合ではアナウンスやスコア記入など、和泉監督にインパクトを与えようと必死だった。そんな吉村の頑張りに和泉監督が気付いたからこそ、チャンスをもらい、ベンチ入りをつかんだ。

 要因として、余計な四球を出さない安定感抜群の制球力もあったが、何より「監督に評価されていました」というベンチワークが鍵を握っていたと振り返る。

 ベンチワークは、吉村のなかでも大事にしていたことだった。

「自分の武器は何なのかと考えた時に、周りを見るのが得意だったので、ベンチワークは大事にしようと無意識に気づいたんです」

 吉村の言う通り、周りを見て気づいて行動をすることがベンチワークでは求められる。早稲田実業の文化が垣間見える瞬間といっていい。

 「気づく力」をもって、どう目標を立てて、そこに向かって考えて行動したから試合で結果が出たのか、と自分ですべきことを日常生活から実行することが求められた。

 八王子ボーイズのときに河合雄也氏から教わった「目標達成に関する指導」に近いものだろう。それについて「すごくマッチしていた」と振り返るように、通ずる部分も多かった。そのうえで「野球以外の部分でどうあるべきか大事にするようになりました」と、恩師への感謝の思いを言葉にした。

[page_break:周りを巻き込む底抜けの明るさも111本塁打スラッガーの魅力]

周りを巻き込む底抜けの明るさも111本塁打スラッガーの魅力

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高校時代の清宮幸太郎(早稲田実業)

 「気づく力」を土台に、考えて行動する。これが和泉監督から求められる能力であり、できる選手ほど、「試合に出ていたと思います」と自身の経験談から早稲田実業の特徴を改めて語る。それは1学年後輩の清宮も例外ではなかった。

「清宮も自分の目標をしっかり持っている選手だったので、決めたことはぶれませんでしたし、考えて気づくことができる選手でした」

 清宮といえば早稲田実業とU-18の代表で主将を任されるなど、「優等生キャラ」の立ち振る舞いを見せていた。吉村は加えて「愛されキャラ」だともいう。

「当時は先輩に加藤雅樹さん(現東京ガス)がいて、練習から緊張感をもってやっていたんですけど、清宮はそのなかでも明るく盛り上げるんです。それに乗っかって周りも明るくなっていたので、甲子園でベスト4に行けたのは、チームを明るくしてくれたからだと思います」

 甲子園で初ホームランを放った東海大甲府(山梨)戦では、ベンチで笑顔の絶えない清宮の姿が何度もテレビに映されていた。

 大事な場面で見せる集中力の高さや、高校通算111本塁打のバッティングは、言うまでもない。それらに加えて周りを明るくする人柄もあり、吉村も「優等生キャラでもあり、愛されキャラですね」と目を細めた。

 可愛い後輩・清宮のいるNPBの世界へ入るため、吉村は2022年より独立リーグへ挑戦する方向で準備を進めている。先日、徳島インディゴソックスから特別合格を受け、これから入団に向けてチームとの話し合いをしたうえで、正式に決定することになる。

 最速150キロを計測する剛腕に変貌を遂げた吉村と清宮が、同じグラウンドに立ってプレーする。想像しただけでワクワクしてくる。

(文=田中 裕毅)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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