県立岐阜商相手に11回完封 東海地区にいる楽しみな逸材
静岡・吉田 優飛投手
吉田 優飛(静岡)
昨年夏の選手権大会前、新型コロナの感染拡大によって、県内の高校野球では、5月~6月のチーム作りとして、もっとも大事な期間に対外試合などができなかった。県立校の場合、基本的には県の要請に従っていくが、静岡高の場合も例外ではなかった。
池田 新之介監督も、「大事な時期に練習試合がやれないという状況を、逆手にとってと言っては何ですが、その間には、チーム内で徹底して練習試合をやり続けていった。そうした中で収穫もあった。一番大きかったのは投手の成長」と言っていた。紅白戦で投げていきながら、経験値として、球速もぐんと上がり、成長していったのが吉田 優飛投手(2年)だった。
1学年上にはプロ球界からも注目された本格派の高須 大雅投手(明治大進学予定)がいたことも大きかった。同学年では、この時点で経験では上回っていた鈴木脩也投手(2年)もいた。そんな二人を一つの目標としながら試合で投げ合っていくうちに、自分で掴んだものがあって、昨夏後の新チームからは、頼れる投手の柱となっていった。
紅白戦ながら実戦を通じて投げていくうちに、投球のコツを覚えていった。自校の強力打線を抑えられたことで、自信にもなり、そのことで思い切って腕を振れるようになり、スピードだけではなく球の切れも増してきた。
3位校として出場した東海地区大会では、「守りのミスを引きずった形で、また次のミスが出てしまった」(池田監督)という形で大垣日大に敗れた。吉田自身も本塁打を浴びるなど、本来の投球ができず課題を残した。それだけに、一冬を越えた春以降に期待したい。
[page_break:岐阜第一・弘川 泰暉投手]岐阜第一・弘川 泰暉投手
弘川 泰暉(岐阜第一)
圧巻は、岐阜県大会3位決定戦の県立岐阜商との試合だった。東海地区大会進出をかけた大事な試合でもある。試合は0対0のまま延長に突入したが、先発した岐阜第一・弘川 泰暉投手(2年)は、9回まで県立岐阜商打線をわずか4安打に抑え、三塁へ走者を進められたのも1度だけだった。
相手投手が140キロ台のスピードボールを武器に、力でぐいぐい押してくる投球に対して、弘川はタテの緩いカーブを巧みに駆使して、上手に打たせて取る形で対応した。まさに「柔よく剛を制す」と、力のある県立岐阜商打線を抑えた。さらに10回も3人で抑えて、11回は死球とポテン安打で三塁まで進めてしまったものの、最後は三振で切り、その裏に味方がサヨナラ勝ちして東海地区大会進出を決めた。
田所 孝二監督は弘川投手の好投を称えていたが、「緩い球はより緩く行け、そうしたらストレートも速く見えるやろ、ということは言いましたが、その通りに投げてくれた。自分で考えながら投球ができるので、安心して任せられる」と信頼も厚い。
東海地区大会では、至学館のトリッキーな野球にやや翻弄されたようなところもあった。しかし、負けて学ぶところもあったであろうし、考える投球術の、さらなる進化を期待したい。
(文=手束 仁)