秋の鹿児島大会初優勝を果たした大島

「目標は甲子園ベスト8」。いつの頃からか、塗木監督、選手たちが異口同音に語るチームの共通目標になった。そのために「得点7点以上、失点2点以下」という県大会1試合の具体的な数値目標を定めている。塗木監督曰く「甲子園でベスト8以上の成績を残したチームの県予選での1試合平均得点と失点」が7得点と2失点だという。失点を2以内に抑えるために「1イニングの失点を1以下に抑えられる」ように計算できるバッテリー、守っているところに打たせる守備を作り、7得点以上挙げるためにバントではなく、打ってつなぐ打線を目指す。この8年間、県大会を勝ち上がる中で試行錯誤しながら「甲子園に行く」ための野球を作り上げてきた。この秋の鹿児島大会6試合の平均失点は2.06、得点は5.15。攻撃面はまだまだ粗削りだが、守備面では大野という抜群の勝負強さを誇る好投手を中心に、目標に近い数字を残せた。

 13年春まで21年半、ご無沙汰をしていた4強入りを、21年春までに8回果たしている。夏は17年、93年以来24年ぶりに8強入りして以降、19年、21年と準々決勝に勝ち進んでいる。毎回、フェリーで鹿児島入りし、勝ち進むたびにホテルでの滞在は長期になる状況は変わらない中で、これだけの成績を残しているだけでも見事なものである。

 ただ彼らの目指すのはあくまで甲子園であって、8強、4強入りすることではない。春、秋、NHK旗は決勝に、夏は4強に勝ち上がれない悔しさを味わいながら、果たせなかった目標達成を次の後輩たちに託し続けていた。地元紙・奄美新聞の記者でもある筆者はかつて「快挙」と表現していた4強、8強入りが、いつしか「決勝ならず」「4強ならず」へと変化し、壁を乗り越えられれないもどかしさを感じながら、記事を書いていたのを思い出す。

「1つ壁を破れば、ぐんと勝ち上がっていきますよ」

 秋の九州大会前、大島OBの奥裕史コーチが予言めいたことを話していた。秋準決勝で強豪・樟南を相手に延長13回タイブレーク、3時間を超える死闘を制してようやく「壁」を破ると、県大会初優勝、九州大会初戦突破、初の4強入りと決勝進出…過去の先輩たちの思いも乗せて一気に勝ち上がった。

 22年春は掲げた「甲子園ベスト8」への挑戦となる。全国の猛者を相手に彼らがどんな野球を繰り広げるのか、興味は尽きない。

(記事:政 純一郎