甲子園準V校完封右腕に名将の帰還 2022年の東洋大姫路は兵庫の勢力図を変えられるか?
森健人(東洋大姫路)
2022年の高校野球で注目の一校となりそうなのが、兵庫の名門・東洋大姫路だ。春7回、夏12回の甲子園出場歴があり、1977年夏には全国制覇に輝いている。原 樹理(ヤクルト)、甲斐野 央(ソフトバンク)など多くのプロ野球選手も輩出しており、全国クラスの強豪として高校野球界を盛り上げてきた。
しかし、原 樹里を擁して8強入りした2011年夏を最後に甲子園から遠ざかっており、近年はなかなか存在感を発揮できないでいた。そんな中、今秋の県大会中に藤田明彦監督が来年3月限りでの退任を表明。選手たちはそれに奮起するように勝ち進み、3位で近畿大会出場を決めた。
躍進の原動力になったのが、エースの22876(2年)。身長169㎝と小柄だが、制球力が高く、巧みな投球術で凡打の山を築いてきた。
近畿大会では夏の甲子園準優勝校の智辯学園と対戦。旧チームからレギュラーが総入れ替えになったとはいえ、能力の高い選手が揃っているチームだ。この強敵を相手に森は6安打完封。2対0で投手戦を制し、センバツ出場に一歩近づいた。
勝てばセンバツ出場が当確となる準々決勝では大阪桐蔭との対決となった。序盤こそ互角の投手戦を繰り広げたが、2巡目に入ってから相手打線に捉えられ、0対5で敗戦。甲子園行きを確実にすることはできなかった。
近畿地区のセンバツ出場枠は6。3位校かつ準々決勝で完敗と選出には厳しい条件が揃っていたが、「厳しいかなと思いますが、信じて練習しようかなと思います」と藤田監督は試合後に話していた。センバツの出場有無に関わらず任期が終わるまでは従来通りに指導を続ける予定だという。
明治神宮大会で大阪桐蔭が優勝したことで近畿地区の出場枠が一つ増え、センバツ出場の可能性が少し高くなった。藤田監督のラストを甲子園で飾ることはできるだろうか。
岡田龍生監督
近畿大会後に藤田監督の後任として発表されたのが、履正社の岡田龍生監督だ。岡田監督は東洋大姫路のOBで、3年生時の1979年春には甲子園4強入りを果たしている。卒業後は日本体育大、鷺宮製作所で野球を続け、引退後は桜宮のコーチとなる。当時の教え子には阪神の矢野燿大監督がいた。
桜宮で2年間コーチを務めた後、1987年に履正社の監督に就任。全く無名のチームを地道に鍛えあげ、1997年夏に甲子園初出場。その後もコンスタントに甲子園に出場し、2019年夏には井上 広大(阪神)らを擁して全国制覇を成し遂げた。
昨年で60歳の区切りを迎えた岡田監督は今年3月末で履正社を退職し、今年4月からは母校の監督になる。そこで注目されるのはチーム作りにどう変化がみられるかというところだ。
今年を含め、従来の東洋大姫路は好投手を数多く輩出しており、投手を中心とする守備型のチームになるが多い。また、シートノックの最後にはファールゾーンにヘッドスライディングをして、試合前からユニフォームが泥だらけになるなど、泥臭いチームカラーという印象もある。
その一方、岡田監督のチームつくりは対照的だ。T-岡田(オリックス)や山田 哲人(ヤクルト)など強打者を多く育ててきており、2019年の夏は6試合で7本塁打の強力打線で全国の頂点に立っている。さらに指導法も選手の自主性を促す指導方針をとっており、履正社の指導法を継続するのであれば、チームカラーは大きく変わっていきそうだ。
また、岡田監督が東洋大姫路に赴任することで、選手の流れにも変化があるのではないだろうか。近年の兵庫県では神戸国際大附、報徳学園、明石商などに有力選手が集まる傾向があったが、岡田監督の指導を受けたいと有力中学生が東洋大姫路に進むケースがこれから増えていくかもしれない。これからの数年で兵庫の勢力図を変える存在となるだろうか。
(記事:馬場 遼)