
関戸康介(大阪桐蔭)、中嶋太一(桐光学園)
各大学の合格者を見ていくと、その大学の強みにあったタイプの選手が入学する。國學院大であれば、遊撃手。日体大ならば投手。特に日本体育大の合格者は凄い。
来年の新入生では、150キロ前後を計測する関戸 康介投手(大阪桐蔭)、148キロ右腕・中嶋 太一投手(桐光学園)、149キロ右腕・篠原 颯斗投手(池田)の3名が、4年後、明確にNPB入りも狙える器を持った逸材だ。
台頭が早そうなのは制球力が高い松田 隆之介投手(仙台育英)。コントロール重視ながら140キロを超える。日本体育大の環境で化ける要素を持った投手だ。
昨年以前も逸材が入学している。昨年は、高1年の夏甲子園で最速143キロを投げて話題となった大型右腕・寺西 成騎 投手(星稜)、190センチを超える長身から140キロ中盤の速球とフォークで圧倒する大型右腕・橋本 拳汰投手(健大高崎)が入部。2年前の新入生では、高校時代、愛知の公立校では屈指の右腕として注目された山田紘太郎投手(西尾東)、そして最終学年では、最速150キロを誇る二刀流・矢澤 宏太投手兼外野手(藤嶺藤沢)と、楽しみな投手が多くいる。
日本体育大では有望な新入生投手の割合が、ここにきて年々増えている。18年から21年にかけて4年連続で同大学出身の投手がNPBのドラフトで指名されていることに加え、元プロの辻孟彦コーチの就任で、指導力の高さや、選手ファーストの方針、最終学年にピークに持っていく育成計画が功を奏し、それが高校野球の指導者や、選手たちにも評価されているのが要因だろう。
日本体育大の練習では、選手が主体性を持ってトレーニングや練習をしている。二刀流として注目される矢澤は、投球フォームを固めるために、メディシンボールを使って、踏み込み足(右足)の着地の安定感を求めるためのトレーニングを行っていた。また、野球部のグラウンドの地下にあるウエイトルームで1人で黙々とトレーニングを行う姿もあった。
辻氏は適宜、アドバイスを行うが、選手たちの自主性に任せられている。またブルペンで指導することはなく、キャッチボールこそ一番大事とチームでは徹底されており、矢澤もキャッチボールから足の上げ方を意識したり、かなり工夫を行っている。
西武に入団した松本 航投手(明石商出身)は、言語化する能力が高かった。遠投、キャッチボール、体調管理を含めて、目的意識を持っていた。プロの世界で試行錯誤しながら、今季二桁勝利を挙げることができたのも、そういう点があったといえる。
これほどの投手がいると出場機会は限られてしまう。しかし、大学で登板機会がほとんどなかった柴田 大地投手(日体大荏原出身)が、日本通運を経由して今年のドラフトでヤクルト3位指名を受けた。苦しいことはあっても、自分の能力に磨きをかける努力を継続すれば、道を切り開くことができることを証明した。
多くの投手がリーグ戦の活躍からNPB、社会人、独立リーグ入りが決まれば理想的だが、そうでもなくても、最終的に卒業する時に多くの投手が野球を継続する形になることを期待したい。
(記事:河嶋 宗一)