左腕の夏は、沖縄セルラースタジアムで終わった。2019年7月21日。真夏の太陽が容赦なく照りつける沖縄では、夏の甲子園を決める決勝戦が行われていた。優勝候補筆頭で3連覇を狙う興南と沖縄尚学。激戦は延長戦にもつれ込み、13回の末に、沖縄尚学が優勝した。一塁側ベンチで3年夏を終えた興南の絶対的左腕エースは、涙をこらえながらプロでの「雪辱」を誓っていた。

 宮城 大弥。中学時代はジャパンにも選ばれ、1年春から名門興南でベンチ入りした。夏から登板し、3年夏まで興南を引っ張った。繰り出される剛速球の評判は沖縄を飛び出し、九州、日本全国へと広まった。そして、ドラフト1位でオリックスに入団。今や、パ・リーグの最多勝、防御率でタイトル争いを繰り広げチームの優勝への道をけん引している。173センチの恵まれた体格ではないものの、そのタフな体力と強心臓ぶりは高校時代に培われたものだった。

 高校球児時代は「逆境人生」というにふさわしい。

 時計の針を4年前に戻そう。2017年夏、1年生だった宮城が強烈な「デビュー」を果たす。ベンチ入りしていた左腕は準決勝まで救援で登板したが、甲子園がかかる決勝で「高校公式戦初先発初完投勝利」をやってのける。「強心臓左腕」として一気に注目選手となった。しかし、甲子園では1回戦で今夏優勝した智辯和歌山に6対9で敗戦。8番投手で先発。3回まで無失点も4回に2失点、5回は先頭から3連打を許し降板した。のちに広島からドラフト3位指名される林 晃汰には、それまで三振、投手併殺に打ち取るも、3打席目に2ランを浴びた。

 華々しい沖縄での「デビュー」も甲子園という全国の舞台で鼻をへし折られた。秋季大会も沖縄2位で九州大会に出場も2回戦で東筑に1対4。センバツには届かなかった。2年春は九州大会にも出場できなかった。しかし宮城はこの「逆境」から、直球を磨き、さらにハートを強くする。

 2年夏は甲子園出場を決めた。屈辱を味わった聖地に戻った左腕は借りを倍にして返す。1回戦の土浦日大戦。5番左翼でスタメンした宮城は、8回無死満塁と大ピンチでマウンドに上ると、三振と投手併殺で仕留め、わずか9球でピンチを脱出した。

 チームの初戦突破に大きく貢献した。しかし2回戦で0対7と木更津総合の前に敗退する。宮城は5番左翼でスタメンし、5回途中から2番手で登板。8回途中で左翼へ回り、9回二死二塁から再びマウンドに上るも力は発揮できなかった。再び「逆境」からの再起を図ることになる。