「今の中西 聖輝なら任せられる」

 智辯学園との決勝戦、ピンチの場面で中谷監督は自信をもってエースをマウンドに送った。その期待を一身に背負い、エースはピンチを切り抜け、優勝に導いた。

 複数投手を擁し、万全の態勢で甲子園に乗り込んだ智辯和歌山。甲子園での4試合では豊富な投手層を活かして、3度目の日本一へ駆け抜けた。

 中谷監督は「髙嶋先生が1人でも良い投手は多い方がいいというチーム編成でしたので、それを引き継ぎました」と髙嶋 仁名誉監督の意志を継承したものだと説明をする。そのなかで最も成長を見せた男が、エース・中西 聖輝であることは間違いない。

 「本当は甘えん坊なところがあって、思い通りいかないと、すねてしまうところがありました。ですが、県予選を含めて1試合ごとに人としても、投球内容も良くなりました。

 特に準決勝から立ち振る舞いや投球術。気持ちの抑え方など別人になっていて、それを見た時に、『心から任させられるな』と思いましたので、4回途中の場面から『中西しかいない』とマウンドに送りました」(中谷監督)

 指揮官からの全幅の信頼を寄せられたエースの投球は、智辯学園相手に文句を付けることのできない投球内容だった。特にストライク先行の投球が素晴らしかった。

<中西の投球内容>
6回 打者23人 91球
被安打5、奪三振8、与四死球1 無失点
ストライク率:45.05%(91球41球)
打者1人あたり:3.96球/人

 ほぼ半分がストライクになり、打者に対して4球勝負で抑えるという結果が出てきた。この数字を含めて、どのボールでも簡単にストライクを奪い、堂々と落ち着いた佇まいはエースそのものだった。

 見ていて安心感しかなかった中西だが、中谷監督が称賛した準決勝を含めて今大会を振り返っても中西のテンポの良い投球は持ち味となっていた。

高松商戦>
8.2回 打者35人 145球
被安打6、奪三振4、与四死球4 失点3
ストライク率:49.66%(145球72球)
打者1人あたり:4.14球/人

近江戦>
9回 打者33人 124球
被安打4、奪三振10、与四死球3 失点1
ストライク率:44.35%(124球55球)
打者1人あたり:3.76球/人

 登板した3試合すべてで、素晴らしい投球内容であることを示す数字が並ぶ。なかでもコントロールの良さを活かしたストライク率の高さは評価できる。

 普段のブルペンから1球を大事にして、制球力を磨いてきたことの成果であることは間違いない。

 高卒プロを目指すだけの実力であることは十分伝わるが、高松商戦後からは、若干ではあるが打者1人当たりの球数が減少している。些細な変化とはいえ、ここにも甲子園を通じて成長した瞬間が隠されていた。

 「高松商との試合で9回二死から降板した後に、監督から厳しい一言をもらいました。そのときに思ったのが、『自分のためではなく、チームのために投げるのがエースなんだ』と再確認できたことで、決勝の結果があったと思います」

 3年間の積み重ねで磨いてきたエースの投球術。そして聖地・甲子園で学んだエースとしての心構え。どちらかだけではなく、両方を兼ね備えたからこそ中西はチームを優勝に導き、自身は優勝投手となった。

 エースとはどんな投手なのか。背中で示した中西は高卒プロ入りを目指すことを公言した。中西に吉報が届くのか、甲子園での好投が夢の扉を開くための後押しになることを願いたい。

(記事:編集部)