変則左腕が甲子園のトレンドに!22年以降も注目の変則派左腕たち
吉村優聖歩(明徳義塾)
第103回甲子園は智辯和歌山の優勝で幕を閉じた。今年は左の技巧派左腕がクローズアップされる大会だった。そんな大会で、ひときわ目立った2年生の技巧派左腕たちを紹介したい。
現在、プロ野球では巨人・高梨 雄平(川越東出身)北海道日本ハム・宮西 尚生(市立尼崎出身)、福岡ソフトバンクの嘉弥真 新也(八重山農林出身)と左の技巧派たちが、第一線で活躍している。
まず今年の甲子園では1人の変則左腕が脚光を浴びた。明徳義塾・吉村 優聖歩である。エジプト人の父を持つ吉村は馬淵監督の勧めでサイドスローへ転向。県立岐阜商、明桜戦で好リリーフを見せ、評価が急上昇した。準々決勝の智辯学園戦では、完投負けを喫したものの、打者に背中を向けるトルネード気味のフォームから繰り出すストレートは独特の角度があり、智辯学園の打者はタイミングが合わなかった。
サヨナラ打を放った岡島 光星も、「出所が見えにくく、タイミングが取りにくい投手でした」と振り返るように、かなり苦労したのが伺える。
また、吉村だけでなく、現校名でベスト8を初めて勝ち残った石見智翠館には、2年生の山本 由吾がいる。サイド気味のフォームから打たせて取る投球を武器に、3回戦の日大山形戦で好投を見せ、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。
さらに、今大会ベスト4まで進出した近江にも2人の左の変則投手がいる。準決勝で登板した外義 来都と副島 良太は智辯学園打線に立ち向かっていた。今大会で大ブレークした山田 陽翔が本格派投手であることからしても、外義、副島の存在は近江にとってなくてはならない存在だ。
2人以外にも近江には星野 世那、横井 海音の左投手がいる。継投を大事にする多賀監督も彼らについて期待の高さを表している。
「林(優樹)に憧れて入学した左が4人でして、今大会はベンチに3人入りました。フォームについては、特徴を持たせようとそれぞれ考えて、今の形になっていますが、彼らの奮起がこれからの鍵になると思っています」
プロ野球界では重宝される左のサイドスローといった技巧派投手たち。高校野球の世界でも、140キロを超えるスピードボールを投げる投手たちが増えたことで、こういった変則的な投手の需要は高まっている。
今回紹介した投手はいずれも2年生。新チームでは主力投手として登板する機会も増えるだろう。これからも勝利に貢献する投球を見せることで、左利きの選手の励みになるはずだ。
(記事:田中 裕毅)