球数を見れば納得。智辯和歌山が圧倒的有利な理由
左から左から武元 一輝、塩路柊季、中西聖輝、伊藤大稀、高橋令
「1週間500球」
球数制限が適用されて以降、複数投手の育成の重要性は高まった。今夏の甲子園も同様で、1人のエースにすべてを託すチームは減ってきた。様々な投手を繋ぐ、もしくは先発に起用出来るように2人以上の投手が求められる時代となった。
時代のニーズに応える必要があることは。準決勝に勝ち残った4校の投手事情を見ればよくわかる。
23日以降の投球数
23日以降の試合で登板した投手たちの球数から考えると、近江・山田 陽翔の293球を除けば、残り2試合で球数制限にかかってきそうな投手はいないだろう。
そんな状況を作れているのも、4チームすべてが甲子園で投げられる投手を2人以上育て、起用しなければ実現しなかった。4校の投手育成が素晴らしいことを、まずは称賛したい。
そのうえで、最多5投手を登板させている智辯和歌山は、どの投手も球数はもちろんだが、体力にも余裕がある。顔ぶれを見てももっとも球数の少ない武元 一輝がチーム最速148キロを計測しており、ここからの2試合は剛速球を武器にフル回転することが出来る。こうした投手が控えにいることや、連戦でありなおかつ神経をすり減らす準決勝、決勝を戦うことを考えれば、非常に有利な状況だ。
球数だけを見れば2試合とも完投できそうな智辯学園の西村 王雅、小畠 一心の2人。ただ準々決勝の明徳義塾戦の死闘は心身ともに疲労を蓄積しているだろう。その当たりをケアすれば、2人のリレーや他の投手の起用も状況によっては十分考えられる。
左右の2年生エースが軸である京都国際も2戦連続での完投が不可能の数字ではない。しかし、エース・森下 瑠大は全試合で登板しており、準々決勝での投球には力がなかった。体力にも余力がある平野が準決勝、決勝のカギを握る。
試合日程が詰まっていた近江は、決勝まで考えると、これまで必勝パターンだった山田が6回、岩佐が3回という継投プランを変更する可能性もある。これまで甲子園の登板実績のない投手の起用や、継投のタイミングの見直しなど真の投手力が試されることになりそうだ。
これから先、甲子園で優勝するようなチームになるには、好投手を2人以上育てることが至上命題となるだろう。その最重要課題をクリアしつつ、4投手を登板させ、もっとも球数において余裕がある智辯和歌山は、他の3校に比べてやや有利といってもいい。このアドバンテージをどのように活かすか。
(記事:田中 裕毅)