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9人が大学野球部の幹部へ…。大阪桐蔭の礎を作った17年の福井世代のその後

2021.08.17

9人が大学野球部の幹部へ…。大阪桐蔭の礎を作った17年の福井世代のその後 | 高校野球ドットコム
山本ダンテ武蔵(國學院大)、岩本久重(早稲田大)、福井章吾(慶應大)、泉口友汰(青山学院大)、坂之下晴人(関西大)

 17日、西東京の強豪・東海大菅生との初戦に臨む大阪桐蔭。現在の大阪桐蔭の原型を作り上げたのは2017年の大阪桐蔭世代と呼ばれている。前編ではセンバツ優勝するまでの流れを描いた。後編では、選抜から現在に至るまでの話となる。

センバツ後もモチベーション高く臨むことができた

9人が大学野球部の幹部へ…。大阪桐蔭の礎を作った17年の福井世代のその後 | 高校野球ドットコム
福井章吾(慶應大)、岩本 久重(早稲田大)

 選抜優勝したチームでよく聞かれるのは注目される重圧の高さから思うようなチーム作りができなかったと聞く。ただ当時の大阪桐蔭ナインは無縁だった。エース・徳山 壮磨は「自分たちは下手くそから始まりました。

 優勝したからと言って、強いチームになったというより一人一人に自信が付いたというか、自分たちはこれくらいやれるんだという自信が付きました。

 その自信が春以降の試合で 経験を積む中で、勘違いではなく良い自信に変えられていたので負けないチームになっていきました」

 その言葉通り、春の大阪大会、春季近畿大会も優勝を果たす。徳山の思いはレギュラー選手も同じ、しっかりと自分を高め合うことができたという。

 センバツではベンチを外れ、優勝した瞬間をスタンドでみていた東本 直樹はベンチに入れなかったことを悔やんだが、気持ちを切り替え、捕手としてチームを支えた。投手が投げるボールを受けて状態を確認しながら、西谷監督へ報告を行った。そしてベンチ入りするために努力を重ね、個人練習でも夜遅くまで行った。そうした姿はレギュラーたちにも届き、一歩ずつチームとして、人としてチームを高めあった。

 最後の夏は苦しい大阪大会を制して、二季連続の甲子園出場。しかし3回戦で仙台育英に敗退し、春夏連覇はならなかった。悔しい気持ちはゼロではない。それでもやりきった思いが強かった。福井は夏が終わった時の思いを語る。

 「西谷先生を胴上げしたかったですし、史上初の二度目の春夏連覇もしたい思いもありました。でも改めて振り返ると、高校野球でやり残したことはないですし、長く野球をやり続けることを考えれば、あそこでの敗戦は自分の野球人生の中でも意味があって、ターニングポイントになったかなと思います」

 そして多くの選手が大学野球でプレーし、各リーグで活躍を収めた。だが、それだけではなくこの世代は9人が大学野球部の幹部(主将・副主将)となっていたのだ。

捕手 福井 章吾(慶應大)主将
捕手 岩本 久重(早稲田大)副主将
捕手 東本 直樹(同志社大)副主将
内野手 坂之下 晴人(関西大)主将
内野手 泉口 友汰(青山学院大)主将
内野手 小林 大介(富士大)副主将
内野手 加藤 大貴(中京大)主将
内野手  坂本 義生(平成国際大) 主将
内野手  稲田 晃大(甲南大)副主将 ※任期は春季リーグ戦まで

 これは改めて快挙であり、これからの大阪桐蔭の野球部史でも語り継がれるべきニュースだといえる。

[page_break:17年の福井世代は後輩たちに大きな影響を与えた]

17年の福井世代は後輩たちに大きな影響を与えた

9人が大学野球部の幹部へ…。大阪桐蔭の礎を作った17年の福井世代のその後 | 高校野球ドットコム
泉口友汰(青山学院大)、山本ダンテ武蔵(國學院大)

 青山学院大の主将・泉口はそんな同世代の選手たちを誇りだと思っている。

 「めちゃくちゃ誇りです。当時から思っていましたが、同期は良いやつが多いなと思います。ふたを開けてみるとこれだけ幹部になっている選手がいるので、いいやつが多かったと再確認できました」

 また岩本は大阪桐蔭で学んできたことを大学野球の舞台で生かしているからだと考える。

 「3年間で西谷先生の教えをみんなが吸収して大学で頑張った結果と思います
個人が生まれ持ったものというよりかは、学んだことを生かして大学で頑張ったから多くの主将が生まれたのだと思います」

 山本ダンテ武蔵(國學院大)は、チーム側の配慮であえて役職につかず、一レギュラーとしてチームを引っ張るが、その存在感はリーダー級だ。練習では仲間たちに声をかけ、配球の読み方のアドバイスを送り、リーグ戦では三塁ベースに到達したダンテが打席に立った主将・福永 奨横浜出身)に声援を送っている姿も見られた。ダンテも西谷監督の指導があったからこそ、周りを引っ張れる人間性が身についたと分析する。

 「西谷先生自体がどこに行っても恥ずかしくない人間性を作るということを、目指してやっていました。僕たちはそれを信じてやってきたので、自然とそういう道になったのかなと思います」

 同志社大の副主将・東本は「レギュラーはもちろんですが、今回、大学で幹部となっている選手はみんなしっかりしていて、なるだろうと思っていました」と全幅の信頼を置く。

 この世代のまとまりは大阪桐蔭の後輩たちのお手本となった。春夏連覇を経験した青地 斗舞は「僕らの代の特徴は我が強くて、下級生の時はまとまりがなかったのですが、福井さんの代をお手本にすることで、チームとして個の力だけではなくチームとしてどうやったらいいのかを影響を受けました」

 今も福井は母校に熱いエールを送る。大学選手権優勝を果たした翌日、福井は大阪桐蔭のグラウンドまで赴き、現役選手たちを激励した。主将の池田 陵真は「最後の夏、自分たちの代では勝てなかったことを言われ、とにかく勝ちたいと思うことを、どこの高校よりも強く持つようにと言われました」と日本一への思いを強くした。

 この夏、苦しみながらも大阪大会を勝ち抜いた今年の大阪桐蔭。これまでの先輩たちが体現した束になって戦う姿勢を貫き、3年ぶりの日本一を目指す。

(取材・文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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