雨天順延の日程変更、頂点へ投手起用も大きなカギになる
森山 暁生(阿南光)、河野 颯(高川学園)
第103回全国高等学校野球選手権大会は14日の雨天順延により、日程の大幅変更を余儀なくされた。これまでの順延の影響を含め、3回戦、準決勝の翌日にあった1日の休養日が消滅。休養日は準々決勝翌日のみとなり、27日の決勝で優勝するためには、終盤戦で過酷な日程とも戦わなければならない。
従来の日程なら、3回戦から決勝までは6日間か7日間で、4試合を消化すればよかった。しかし、休養日が減ったことにより、組み合わせの関係で12チームが2回戦から決勝までの5試合を7日間で戦わなければならなくなった。これは何を意味するのか。この12チームは2回戦以降、1週間500球の球数制限を頭に入れた投手陣のやりくりで、さらに頭を悩ませることを指す。
1試合で投手が投げている球数は何球くらいなのか。今大会ここまで消化した7試合で、勝利したチームの投手全員の球数の1試合平均をとると125球。これを基準とすると、4試合でちょうど500球(125×4=500)。5試合だと625球となる。仮に1人の投手が1週間で全試合完投するのであれば、4試合がギリギリのラインで、少しでも平均より球数が増えれば、決勝は先発完投ができなくなり、現実的ではない。5試合は事実上、問題外となる。
2人のリレーならどうか。1週間4試合なら主力投手が先発毎試合7回100球なら400球。あとはリリーフ陣でまかなう。これはOKだろう。5試合ならどうか。同じパターンだと先発投手が毎試合7回100球はギリギリとなり現実的ではない。他の投手と先発を交互にするか、イニングを減らすしかない。やはり、複数投手制を敷いているチームでないと不利な戦いを強いられる。
組み合わせ上、優勝するためには2回戦以降、1週間で5試合を戦わないといけなくなった「不利」なチームはどこなのか。大会4日目第1試合から5日目の第2試合までの1回戦から登場する長崎商、熊本工、専大松戸(千葉)、明豊(大分)、阿南光(徳島)、沖縄尚学、鹿島学園(茨城)、盛岡大附(岩手)大阪桐蔭、東海大菅生(西東京)、近江(滋賀)、日大東北(福島)の12チームだ。優勝するには2回戦以降、投手陣の起用には気を遣わないといけなくなる。
松浦慶斗(大阪桐蔭)本田峻也(東海大菅生)
実際に今大会の投手事情はどうなのか。49代表校の地方大会で登板した投手の人数を調べてみた。1人の投手が全試合完投したのは高川学園(山口)と阿南光(徳島)の2チーム。2人が5チーム、3人が10チーム、4人が18チーム、5人が9チーム、6人が5チーム、7人が1チームだけで浦和学院(埼玉)となった。
「不利」となった12チームを見ると、阿南光が1人全試合完投パターンで一番苦しい。熊本工は2人だが、地方大会全イニングに占める1投手の投球回数の割合(依存度)で1人が約9割。盛岡大附は6人、鹿島学園は4人だが、両チームとも1人の依存度が7割から8割なので、ここまでの4チームは「事実上1人」だと言える。依存度1割以下の投手をのぞく「事実上2人」で勝ち上がったのは長崎商、専大松戸、明豊、日大東北。「事実上3人」では沖縄尚学、大阪桐蔭、東海大菅生、近江となった。
さらに見れば、大会5日目第1試合の大阪桐蔭ー東海大菅生、第2試合の近江ー日大東北の4チームは、1回戦から2回戦の間も中3日しかなく、どのチームより全体的に投手陣への負担が大きい。監督の手腕もみどころの1つになりそうだ。
今後、大会が進んでいっての雨天順延はチームにとって「恵みの雨」となる可能性はあるが、今度は逆に大会関係者が頭を悩ませることになる。やっかいなことになってきた。
(文=浦田 由紀夫)