
森 迅央(日本航空)
2年ぶりに「夏甲子園」が戻ってきた。コロナ禍の影響で昨年は春夏ともに中止。今年はまだ完全に払拭できず、さまざまな制約こそあるが、春に続き夏も開幕を迎えた。高校野球ファンにとっても待ちに待ったイベントだろう。五輪は終わったが、高校野球が始まった。また、感動のシーンに巡り合うことを期待したい。
初日の「開幕」ゲームは、日大山形が序盤の得点を投手陣が守り切って勝利した。3打数2安打1四球で4打席中、3度出塁した新田 大樹内野手(3年)がチーム4得点中、2得点をマーク。チームの勝利に貢献した。2試合目は新田に「夏初勝利」をもたらす決勝の2点適時打を放ったのが、入山 雄太内野手(3年)だった。そして3試合目、終盤で日本航空の勝負を決める一打を放ったのは森 迅央内野手(3年)だった。
この3人には共通点がある。すべて「2番打者」だ。
日大山形の新田は1回、1番打者を一塁に置いて打席へ。二盗失敗でチャンスは途切れたかと思われたが、しっかり四球を選んで出塁すると、3番打者の際に二盗に成功。一死二塁を作ると、3番打者の適時打でホームを踏んだ。3回の第2打席では3番の左翼越え二塁打で、一塁から一気に本塁を陥れた。山形大会7盗塁の「快足」ぶりは本物だった。勝負はここで決まっていた。
対する米子東の2番藪本 鉄平遊撃手(2年)は1、2打席は安打をマークするも0ー3で迎えた5回二死一、三塁で右翼フライ。同じく0ー3で迎えた7回二死一、三塁で遊撃ゴロに倒れた。9回も一死満塁で三振に終わった。下位打線が作ったチャンスをものにできなかった。
2試合目は、新田の入山が同点で迎えた8回一死満塁で右翼線を破る決勝の2点適時二塁打を放った。それまでの4打席は無安打(犠打1)といいところはなかったが、最後に大きな仕事をやってのけた。
対する静岡の2番打者、主将でもある金子 裕人外野手は2打数1安打も、投手交代の影響で6回途中でベンチに下がった。8回には代打が告げられた打順でもあった。
3試合目、1ー0とリードしていた日本航空が8回にダメを押した。ここまでの3打席で安打がなかった2番打者の森が、2点目を叩き出す左翼越えへの適時二塁打を放った。結局この回に3点を奪って4ー0として勝負を決めた。
対する東明館の2番打者、久保 諒太内野手(2年)は3打数無安打(犠打1)に終わった。
海の向こう、メジャーではエンゼルスの大谷 翔平が「2番指名打者」で大活躍を遂げている。アメリカでは2番打者に最強打者を置く流れは定着している。初回から得点できる可能性が高まり、チャンスに回ってくる確率も高いなどの理由もあり、日本のプロ野球でも、その流れは定着してきた。
高校野球では2番に「最強打者」を置くチームはそう多くないが、19年に春夏連続で甲子園に出場した福岡・筑陽学園の江口 祐司監督が話していたことを思い出した。長打も打てる2番打者を起用していることを質問したときだ。「あいつを最強の2番打者に育てるために、4番として使っていた時期もあった」。
この日の3試合だけで、めぐり合わせもあるだろうが、2番打者がカギを握る可能性は高いのだと感じる。クリーンアップへのチャンスメークはもちろんだが、下位打線からのチャンスをものにできる打順でもある。どこからでも得点が取れる打線へ。「2番打者」が重要視される時代に入った。
(記事:編集部)