甲子園初出場を果たした平田が掲げる「攻めの守備」とは? 創成館戦で見えたもの
ピッチャーが投げるボール1球ごとに野手陣が少しずつポジショニングを変えていく。「(平田にとっては)当たり前のことですかね」とエース・古川雅也は語る守備位置の移動こそ、チームの特徴の1つ、「攻めの守備」だったのだ。
チームの悲願であった春夏通じて初めての甲子園出場となった平田。11日の創成館戦に登場し、全国レベルの相手を前に堂々たるプレーを見せた。その中で光ったのが初出場とは思えないような平田の果敢な「攻めの守備」だった。
裏付けされた平田の武器である「攻めの守備」
甲子園初出場を成し遂げた平田
これまでに平田に取材をしてきてチームのウリを聞くと「攻めの守備」というフレーズを掲げていた。その全貌が創成館との一戦で明らかとなった。
ピッチャーが投げるボール1球ごとに野手の守備位置が変わる。打者によって守備位置を偏らせることはプロ野球でも珍しくはないが、高校野球のレベルでピッチャーが投げる1ボール1球ごとに動くのは非常に高度な守備体系だ。
その一方で少し大胆とも思える取り組みだが、確かな裏付けをもってやっている。古川に聞くと「相手打者の特長を掴むためにビデオを10回くらいは見て、打球の方向はどちらに飛びやすいのか。またどのコースが苦手なのか。各打者の特徴と、それに基づいた配球を頭に入れたうえで守備位置を動かしています」
「攻めの守備」を武器にしている平田にとっては、このミーティングこそが全ての軸となっているのだ。それは扇の要を担う三島毅輔も理解している。
「自分たちの鍵を握っているといっても過言ではないです。そこで相手打者の苦手なコースや打者の傾向を把握します」
創成館戦ではセカンド・黒田泰司が頻繁にポジショニングを変えていたが、そこで大事なのは「決め事に合わせてチームで揃えて動く。統一感をもってポジショニングを変えることです」と黒田は語る。三島も「センターへ抜けることが多かったので、黒田は良く動いたんだと思いますが、ある程度統一して動くようにしています」とチームが連動して守備位置を動かすことをポイントに掲げる。
また外野陣を見るとあまり深く守らず、浅めに守っているのも目に留まった。これは、「創成館さんはミートを大事にするチームだったので、長打は少ないと思ったんです。だから内野と外野の間に落ちる打球を取れるように、前に守るようにしました」と語っており、こちらも事前のミーティングに基づく守備体系だった。
[page_break:3つの要素がかみ合って初めて「攻めの守備」は完成する]3つの要素がかみ合って初めて「攻めの守備」は完成する
エースの古川 雅也 ※2019年の秋季大会より
だが、この守備体系の根幹はデータと配球。つまり創成館戦であれば、古川と三島バッテリーの出来が肝になっている。この配球に関しては三島はこのように語る。
「基本的には相手打者の苦手なコースを突いて打ち取れるようにしています。その上で監督とコミュニケーションをとって、自分が理解できるまで話し合いました。なので、監督の存在は僕にとっては大きいです」
キャッチャー・三島の配球は、植田悟監督の力も借りて準備されたたものだった。そして、その配球をエース・古川がしっかりと投げきることで「攻めの守備」は成立する。つまり、事前のミーティングに基づくデータと配球。そしてピッチャーの投球の3つが上手くはまって、初めて平田の「攻めの守備」は完成するのだった。
甲子園でも「攻めの守備」発揮した平田。三島に「攻めの守備」の成果と手ごたえを聞くと「初回の先頭打者・田中 雄大はインコースにボールを投げ込んでファーストゴロにできたのは、こちらの作戦通りでした」と全国区相手にも通用した。
その一方で、「思った以上に低い打球を打たれました。また、粘られた末にヒットを許すなど、相手チームのやりたいことをやらせてしまったと感じています」と全国レベルの高さを感じる瞬間もあった。
それでも高校野球最後の試合を甲子園で出来たことは、これからに繋がるはずだ。古川は「悔しい気持ちもありますが、やり切ったという思いが強いです」と語れば、三島は「これだけの人が来てくれた中で試合ができて、改めて1人ではできなかったと思いました。ですので、『ありがとうございました』と言いたいです」とコメントした。
今回は勝利を掴むことはできなかったが、再び「攻めの守備」を武器に甲子園に戻ってきて、次こそは全国での1勝を掴むことを楽しみにしたい。
(記事=田中 裕毅)
関連記事
◆「今だからこそ両親に感謝しなさい」 帝京の前田三夫監督が3年生たちへメッセージ
◆9年ぶりの甲子園を狙う帝京。復活の予兆を見せた裏側に迫る
◆3年生に託した9回の攻防 臼井の執念のサヨナラ打で東海大菅生 東京の頂点に立つ!