第115回 「最後まで競い合う」岩倉は、夏の甲子園へ向かう戦いと同じ意識で戦える覚悟を個々に確認2020年06月13日

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岩倉の心構えとは

 学校は上野駅すぐそばにあり、グラウンドと寮は西東京市でJR武蔵境駅から徒歩15分ほどのところにある岩倉。選手たちの日々の生活では、移動距離が長いだけに、学校としても今回のコロナ騒動に対しての対応は慎重だった。さらに、クラスターが発生した永寿病院にも比較的近かったということも、慎重にならざるを得ない要素となった。

 今回のコロナ対策としては、2月28日に政府から発せられた休校要請に応じて学校は休校となり、寮も29日からは閉鎖ということで対応した。その後は、継続する自粛要請の中で、新学期の開始もままならないまま過ぎていく。6月1日になって、やっと学校が再開されていくのだが、寮生の中でも愛知県、三重県、長野県など都外からの生徒は、1日に通学のために寮に戻っていた。

 スポーツクラスは、6日に集まったので、実質はそこから寮の再開ということになった。部活動再開は6月も2週目の8日からということになり、グラウンドに選手たちが戻ってきた。グラウンドは、休校期間中にも、豊田監督が入念に手入れし整備をしていたので、すぐに活用することは出来た。

 再開後、最初に集まった時に豊田浩之監督は、活動へ向けての心構えを再確認した。

 「夏の大会は中止になってしまったけれど、都高野連の先生方が尽力してくださって大会は開催出来ることになっているけれど、コロナ感染者が出てしまったら大会そのものがダメになる可能性もある。だから、それぞれが自分の行動にはこれまで以上に責任を持っていくようにしなさい」

 そして、東京都高野連が開催してくれることになった代替大会への意識としても、従来の夏の選手権への戦いと同じように、まずは全メンバーで大会のベンチ入りを競い合うところから始めようということを伝えた。

 「(代替大会は)3年生のための大会ということになっているけれども、ベンチ入りに関しては、今までの夏の大会と同じようにも実力で選んでいく。ベンチ入りを勝ち取るということは、そんなに簡単なモノじゃないんだから、最後まで競い合ってベンチ入りを目指して頑張っていこう」

 こうしたチームとしての意識は、それ以前にもメールなどで伝えているので、意識に対してのブレはないと信じている。それを全員が集まった際に、選手たちの表情を確認しながらミーティングで話した。

 甲子園を目指す戦いではなくなったけれども、東京都の場合は、神宮球場というもう一つの学生野球の聖地で戦うことは出来る。だから、そのことも大事に思いながら与えられた時間の中で精いっぱいやっていこうということも伝えた。

 「ウチの場合は、ずば抜けた素質の選手がいるというワケではありません。毎年そうですけれども、秋から冬の練習もトレーニングなどを経て、春の試合でどこまで伸びていけたかということを確認しながら積み上げていくチームです。そして、夏へ向けてさらにプレッシャーをかけていきながら強化としていくというスタイルです」

 つまり、コツコツと時間をかけて地道にチーム作りをして行くという姿勢である。それだけに、最も伸びていかれることを実感できる期間に活動そのものが停止していたことは非常に痛いというのは正直なところである。

 豊田監督は、そのことに関して、いかに取り戻していくのかということに頭を悩ます。
「例年ですと、この時期には敢えて選手たちにも厳しく当たっていって、『悔しさは、野球で取り返せ』ということは言っていたのですが、今年はそれすらも得ないのではないかと心配もしていました。それでも、1カ月という少ない時間ですけれども、この間に失われた3カ月を取り戻していくために頑張っていってほしいです。ただ、私たち指導者は、来年もありますけれども、選手たちは1回きりだけしかありません。だから、上手に寄り添っていってあげなくてはいけないと思っています」

 そして、「こうした危機を乗り越えていった中での、生徒たちの心的な成長もしっかり見守っていってあげたい」という思いも語ってくれた。

(記事=手束 仁

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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