第114回 計7回出場の古豪・上尾(埼玉)を率いる高野監督は「選手に会って話をしたい」2020年06月03日

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上尾高校・高野和樹監督(*写真は昨秋埼玉大会より)

 昭和の一時代には埼玉県の高校野球を確実にリードしていた伝統校でもある上尾高校。春3回、夏4回の甲子園出場実績がある。甲子園での通算は7勝7敗だが、そのうち延長戦5試合。1点差試合9試合という記録だけでも、上尾の甲子園での善戦ぶりが窺えるだろう。県内では、一時は各校が、「打倒上尾」を掲げるくらいの、強力な存在となっていた。しかし、平成の時代となっていくとともに、埼玉県の高校野球の構図も変化が生じてきた。浦和学院春日部共栄、さらには花咲徳栄聖望学園といった野球部を強化している私立校が台頭してくることによって、伝統校の上尾といえども厳しい状況になってきたという事実は否めなくなってきた。

 それでも、復活を期待する関係者の声も多く担いながら、昭和で最後の甲子園を経験しているOBでもある高野和樹監督が鷲宮から異動して就任した。以来、徐々にチームは再建されていくようになった。一昨年の記念大会では北埼玉大会で決勝進出を果たすなど着実に“古豪復活”の兆しも示している上尾である。

 そんな上尾の高野監督に、コロナ禍で活動自粛が続いている現実をどう対処しながら過ごしているのかということを電話取材してみた。

「いや、参りましたね。こんなことになってしまうとは…」 高野監督からは、そんな第一声だった。

 自粛が始まった当初の意識としては、3月から4月の段階では、「やがて解除されるだろうから、その後は夏へ向けて突き進んでいこう」という希望を持っていたという。ところが、現実には4月になって緊急事態宣言が発せられて、夏の大会そのものも中止となってしまった。

 選手たちは、ニュース報道などを見ながら何となく「(夏の大会が)なくなってしまうのではないかということは分かっていたのではないだろうかということは思っていたのではないか」と高野監督は察していた。

「こんな時だからこそ、会って話をしたいですね。本人たちの声を聞きたいですよ」

 それが正直なところでもある。とはいえ、LINEメールなどを通じての情報確認などは、あえてあまり行っていなかったという。

「私自身が、古い人間ですから、今の時代のツールを使って、一斉に伝えていくというよりも、やっぱり直接話したいというのが本音ですよ。まあ原始的な作業かもしれませんけれども(苦笑)。それでも、何人かの子とは、電話をして話はしています。それで今の気持ちとか、他の仲間の過ごし方とかを聞いています。だけど、本当はやはり、会って話をしたいですよ。顔を見ながら生の声を聞きたいですね」

 伝統校でもあり部員数も多い上尾である。毎年、今の時期になるとベンチ入りから外れることになる3年生も出てくる。そんな選手たちに対しても、熱い思いでミーテングを繰り返していっている高野監督でもある。だからこそ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で活動が制限されていくという現状に対して、3年生に対しては気遣いをしている。

「選手たちは、こんな状況であっても、希望をもってくれていると思います。今やれることをしっかりとやっていこうという意識も感じさせてくれます。日誌にもそんな思いは綴られていますけれども…。やはり、会って話をしたいですね」 その思いは、本音でもあろう。

 学校としては6月に入って分散登校などをしながら、徐々に平常に戻っていく体制となっていく。とはいえ、部活動としてはその次の段階となることは仕方がないことでもある。現実には、6月の3週目から4週目以降からになるのではないかと思われる。

 現状、上尾の指導スタッフとしては高野監督の他には、埼玉県高野連の神谷進常務理事と片野飛鳥部長とベテランの外部指導員という上尾出身者で固められている。高野監督はグラウンドの草むしりをし、片野部長はトラクターなどでグラウンド整備を続けている。そして神谷理事からは、県高野連の動きの情報は入ってくる。とはいえ、「だからといって、先走ったことはしてはいけない」ということもある。逆に、却って一つひとつの行動に対して慎重に対処していかなくてはいけないという思いもある。

 そんな中で、グラウンド環境を整えながら選手たちが戻ってくるのを心待ちにしている。

「3年生たちに対しては、こんな状況だけれども、何かの形は残してあげたい」

 これは、高野監督が2年半、一緒に過ごしてきた選手たちに対しての熱い思いでもある。予定されている代替大会へ向けて、徐々に気持ちを高めていくつもりだ。

(記事=手束 仁

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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