東村山西の三國力監督は、一人ずつ意識確認しながら代替大会を目指す
三國力監督(東村山西)
2月末から、ほとんど練習が出来ていないという状況は、他の学校とまったく同じだという都立東村山西の三國力監督。一応の練習メニューは送ってあるものの、基本的には「冬場にやってきたことを、継続してやっていきなさい」ということにしている。
ただし、基本的には選手たちに任せてあり、それほど連絡はとっていない。主将を通じて、どういう形でやっているのか、仲間の様子はどうかということを把握はしているが、細かくLINEやメールなどで確認していくということはあえてしていないという。
3年生の中には、大会中止ということで気持ちが萎えてきている者もいるかもしれない。そこについては心配もしている。ただし、その際の言葉選び、声かけも難しいのではないかとも考えている。
当事者の高校生たちがどう考えているのか。「何故、現場の選手たちがもっと声を上げていかないのか」ということで、選手たちの生の声を吸い上げてこうと積極的に動いている都立新宿の田久保裕之監督にも相談したという。都立新宿の場合は、田久保監督の提案で「生徒たちの本音」を引き出す作業を行って、それに基づいていてのZoomミーティングも開催して、生々しい意見も出た。
「ウチの場合もやろうかとも思ったのですが、言葉だけでやると理解の違いや解釈の違いが出てしまうことも多いかなという気もしています。現実的には、学校のあり方によって、違いもあるかとは思います。以前に、メールだけで連絡して伝わったかと思っていたら、そうではなくてトラブルになったということもありました。だから、むしろ慎重になっています。やはり、(都立東村山西の場合は)顔を見てきちんと伝えられているということを確認していかないといけないかなと思っています」
そういう考えもあってのものである。
それでも、意識としては「目標を定めて、代替大会に挑んでいきたい」という気持ちは出来ているのではないかと感じている。6月に入って学校としては分散登校か開始されて、それが段階を踏んで進めていくという方針になっているという。そうした中で、生徒たちとも会えるようになっていけば、会って一人ひとり、代替大会へ向けての意識の確認をして行きたいと考えている。
「今回のことは、私たちも含めて誰もが初めてのことです。だから、それぞれの事情と状況に沿って考えていかないといけないと思っています。ただ、今の(こういう事態に遭遇している)状況だからこそ、今の自分たちにしかわからないものもあるはずです。生徒たちには、やがて、(大会が出来なかった)あの代だから…、そんな自分たちだからこそ言えることが出てくるのではないかという気がしています。それを今でなくてもいいですから、発信していってほしいとは思っています」
現実には、6月の中旬ころから部活動も徐々に再開できていくのではないかと見ている。ただ、それとともに学校の授業の兼ね合いもあり、期末試験が遅れていくことで、実際に代替大会が開催されるとした場合にも、そこに試験が入ってきた場合にどうするのかというも問題も出てくる。例年、夏の大会では部として担当している球場運営の係もどうなっていくのかという問題もある。
「甲子園に繋がっていく大会でもないという中で、果たして野球部だけが公欠としていいものか、ということもあります。そのあたりも周囲との兼ね合いを見ながら、どうしていくのがいいのか考えなくてはいけません」
つまり、学校スケジュールと都高野連とのスケジュールの日程との兼ね合いもある。そうした中で、一番いい形を求めていかなくてはいけないとい考えている。
「最終的には、決めるのは本人尊重という考えでいます。その決めたことに対しては否定も肯定もしません。甲子園に繋がるという先の目標がない中で、意味をどう見出すかということもある」
ただ、三國監督は2年前の夏の最後のミーティングでベンチ入りできなかった3年生の「ベンチに入って試合をするだけが高校野球ではないと思う」という発言があったことを思い出したという。
「アプローチの仕方は難しいとは思います。だけど、生徒個々の気持ちは汲んであげたいと思う」
そんな思いで、今後、選手一人ひとりと話していくという。
(記事=手束 仁)
関連記事
◆監督が動く!代替大会開催に向けて現場が生み出した「石川モデル」とは?
◆第114回 選手、そして周りの人たちの命と未来を考えて。福岡県高校野球連盟が下した、苦渋の決断の裏側
◆【緊急企画】母校や応援している高校の球児たちに、あなたのエールを届けよう!