Column

夏の選手権、代替大会が切っ掛けとなり、高校野球新時代の方向性も見えてきた

2020.05.31

各都道府県高野連の動きは中止発表前から

夏の選手権、代替大会が切っ掛けとなり、高校野球新時代の方向性も見えてきた | 高校野球ドットコム

 今回の第102回全国高等学校野球選手権大会の中止という日本高校野球連盟のからの発表が5月20日に発表された。それを受けた形で、各都道府県連盟ではすぐに独自の開催を検討し始めていった。

 また、日本高野連からは、各都道府県高野連で独自の大会や試合を開催するにあたってのガイドラインが追って発表された。
 それによると、無観客試合を基本として控え部員や保護者に関しては各連盟判断。試合会場の入り口と三塁側と一塁側には消毒液を設置。入場者全員が検温、運営者等はマスク着用。複数の試合があるときには試合ごとにダッグアウトを消毒。さらに、試合に関しても、ハイタッチや握手の禁止、マウンド上での集合はグラブを口に当てる。そして取材に関しても、スタンドが基本ということなどが発表された。

 いずれにしても、これまでにない高校野球の光景となることは間違いない。

 それでも、この発表以前から、各都道府県連盟の動きは、地区によって差異もあったが、素早い対応のところが多かった。これは行政と同じかもしれない。政府が発信するよりも、都道府県の首長から発せられる言葉の方に説得力があり、対応力があるということに似ているのではないか。

 このことは、地方の時代ということが、令和の時代になって改めて見直されていくことの表れではないだろうか。その顕著な現象といえるのかもしれない。

[page_break:独自大会開催に向けて]

独自大会開催に向けて

夏の選手権、代替大会が切っ掛けとなり、高校野球新時代の方向性も見えてきた | 高校野球ドットコム
武井克時理事長

 高校野球で言えば、司令塔でもある日本高野連から大会中止が発せられたのが20日。それを受けて愛知県、茨城県、東京都などが、いち早く対応して次の方針をそれぞれの高野連の独自のものとして発信していった。東京都などは、日本高野連からの発表以前から、
 「甲子園が中止になったとしても、代替大会は準備しておく」ということを、武井克時理事長は公表し強いリーダーシップを発揮して動いていた。

 東京都高校野球連盟としては、「夏季東西東京高校野球大会」として開催することを発表。日程などについても、仮案ながらすぐに発せられた。こうしたことで、現場の選手や指導者たちの、次への対応はやりやすくなった。

 愛知県では、「第102回全国高等学校野球選手権大会」中止について、という表記で、
 「通知、『八田会長から高校球児の皆さんへ』を申請書ダウンロード内に掲載しました。愛知県高野連としては独自の大会(大会名未定)の開催に向けて準備いたします。運営方法・日程等は今後協議を重ねて決定していきますので今しばらくお待ちください」ということを県高野連のホームページで発信した。

 そしてさらに、「夏季愛知県高等学校野球大会」について、5月22日の臨時常務理事会にて、愛知県独自の大会(公式戦)の名称を「夏季愛知県高等学校野球大会」としました。「夏季愛知県高等学校野球大会」について、という形で「大会出場申込書」、「同意書」を【申請書ダウンロード】に掲載した。この動きの早さには驚かされた。

 また、茨城県高野連は26日、水戸市内で臨時理事会を開き、中止された今夏選手権大会に代わり、県独自の大会を無観客で開催することを決めた。4地区に分かれて予選を行った後、県大会を実施する方針も決めた。「県大会の規模や日程などの詳細は6月9日の理事会で決める」ということとした。3年生優先の大会とするということだ。

 榎戸努専務理事は県独自の大会を開く理由を語った。
 「3年生は今年は公式戦が1試合もできていない。どこかで区切りをつけさせてあげたい」

 その一案として、通常20人のベンチ入りメンバー枠を25人に増やす。あるいは3年生全員がベンチ入りできるようにすることが検討された。全員ベンチ入りとなった場合は、密集を防ぐため、ベンチに入りきらない3年生はベンチ裏やスタンドで待機してもらう。

 3年生優先は、あくまで県高野連の希望である。だから、実際のベンチ入りメンバーは各校に委ねられることとなる。地区予選を導入することで、移動による感染リスクを下げ、県大会の規模を縮小させる狙いもあるようだ。

 日程は未定だが、案として挙がっているのは、7月11日に地区予選を開幕。同予選を11、12、18、19日の週末4日間で終える。同23~26日の4連休と8月1、2日の週末の計6日間で県大会を行うというもの。休校が続き、8月も授業を行う学校もあるため、休日だけで開催したい考えだ。8月2日までに決勝が終わらない場合、打ち切りか、複数を1位校とすることなども検討しているということだ。

[page_break:各地域それぞれの事情を配慮]

各地域それぞれの事情を配慮

夏の選手権、代替大会が切っ掛けとなり、高校野球新時代の方向性も見えてきた | 高校野球ドットコム
福大大濠ナイン(*写真は昨秋九州大会より)

 関東では、千葉県も早くから八月での開催を発表している。それに続いて埼玉県も、8月開催ということを発表して、代替大会をすぐに発表した。8月開催に落ち着いたのは、7月いっぱいまでずれ込んでいくであろうと思われる授業のことを配慮してのことである。8月に2週間ほどとなる夏休みを利用するという考え方のようだ。

 プロ野球などのスカウトについては、日本高野連からの指示を待つということになりそうだ。

 岡山県では、監督会議などで、代替大会に挑む意識も確認して「ガチンコ勝負で、今年の岡山の1位を決めよう」ということで一致した。

 佐賀県、長崎県などもすぐに代替大会を発表している。

 その一方で、福岡県では代替大会を行わないということを早い段階で発表した。隣接する佐賀県が開催することを発表している中で、開催しないという姿勢を貫いた福岡県の姿勢に、さまざまな意見が交錯していたようだ。

 ただ、今こそ、それぞれの都道府県の地理的な要素も含めた事情を考慮して、地場に根差した判断が重要になってきているということだけは確かなようだ。

 こうした動きの中で、間違いなく高校野球の新しい取り組み方、新しい時代が訪れようとしているのだという気がしてならない。具体的にどうなっていくのかということは、また、次のステップかもしれないけれども…。

 それに、今年もまた、格別暑いとされている夏の時期である。熱中症対策も必要となるだろう。長い自粛で、選手たちの体力が、どこまで回復できているのかということも考慮していかなくてはいけないだろう。もちろん、それに対しての対策も練られていくには違いないのだが…。

 ただ、そうした動きの背景には、実は100年以上の歴史があるからこそのことであるからだ。改めて、歴史の重さということも実感することとなった。

(記事=手束 仁

関連記事
監督が動く!代替大会開催に向けて現場が生み出した「石川モデル」とは?
第114回 選手、そして周りの人たちの命と未来を考えて。福岡県高校野球連盟が下した、苦渋の決断の裏側
【緊急企画】母校や応援している高校の球児たちに、あなたのエールを届けよう!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.27

【福岡】飯塚、鞍手、北筑などがベスト16入り<春季大会の結果>

2024.03.27

【神奈川】慶應義塾、横浜、星槎国際湘南、東海大相模などが勝利<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.27

青森山田がミラクルサヨナラ劇で初8強、広陵・髙尾が力尽きる

2024.03.27

中央学院が2戦連続2ケタ安打でセンバツ初8強、宇治山田商の反撃届かず

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.24

【神奈川】桐光学園、慶應義塾、横浜、東海大相模らが初戦白星<春季県大会地区予選の結果>

2024.03.23

【東京】日本学園、堀越などが都大会に進出<春季都大会1次予選>

2024.03.27

報徳学園が投打で常総学院に圧倒し、出場3大会連続の8強入り

2024.03.22

報徳学園が延長10回タイブレークで逆転サヨナラ勝ち、愛工大名電・伊東の粘投も報われず

2024.03.08

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.03.17

【東京】帝京はコールド発進 東亜学園も44得点の快勝<春季都大会1次予選>

2024.03.11

立教大が卒業生の進路を発表!智弁和歌山出身のエースは三菱重工Eastへ、明石商出身のスラッガーは証券マンに!

2024.03.23

【春季東京大会】予選突破48校が出そろう! 都大会初戦で國學院久我山と共栄学園など好カード

2024.03.01

今年も強力な新人が続々入社!【社会人野球部新人一覧】