諦めない限り、夢は続く 沖縄の名将たちが球児へあらゆる形でメッセージを送り続ける
全国高等学校野球選手権大会中止の報せを、監督さんたちはどのように受け止めているのだろうか。沖縄県立美里工業高等学校野球部監督の神谷嘉宗氏に話を伺ってきた。
全体的に客観的に見ると、日本高等学校野球連盟が下した判断は正しい
神谷嘉宗監督
「言葉に表せない心模様というか、ショックは大きかったね」5月20日、日本高等学校野球連盟が下した全国高等学校野球選手権大会中止の報せ。2008年夏の甲子園で浦添商を率いてベスト4入りした神谷嘉宗監督(現美里工)は、心の内を明かした。しかしくよくよしていても始まらない。生徒たちには、次のような言葉で伝えた。
「[stadium]甲子園[/stadium]に繋がる大会は中止に決まったけど、県独自の大会は必ずあります。三年生が完全燃焼出来る舞台はもうすぐです。今まで通り、目標を見失わず頑張りましょう。諦めない限り、夢は続く。と伝えました」
生徒たちにとっては、野球を始めた小さい頃から憧れてきた[stadium]甲子園[/stadium]。その目標とゴールが一瞬で奪い去られた。指導者のショックも大きいけど、生徒たちにとってのそれは比べようも無かったかも知れない。
「インターハイの種目は、たくさんある。それらに比べて野球は3密から大分離れたスポーツ。野球だけが特別なのかという声もあるが。野球が出来なければ、他の種目は何も出来ない。それは強く思うね。」
多くの高校野球ファンなら、もう少し甲子園開催の、是非の結論を先延ばししてくれたらと思うものだが、神谷監督は視野を広げて考えていた。
「日本高野連としては全国のことを考えて発信している。神奈川県はまた独自の県大会も厳しいと発表があった」
神奈川は7月まで部活が出来ない状態。球場の確保も難しい状況。さらに福岡県は代替大会の開催を断念したことを考えると、日本高野連が下した判断は間違っていなかったと神谷監督は語る。
独自の大会さえ出来ない可能性が他にはあると思えば、甲子園という目標は無くなったけれども、7月4日開幕へ向けて動き出している沖縄県の球児たちは幸せなのだ。
「これは僕らの生徒の声です」。見せてもらったのは、美里工野球部大城稜真くんの言葉だ。
「沖縄県大会も決まったので、また気持ちを入れ替えてみんなで切磋琢磨しながら、やっていきます」
完全燃焼する夏がやってくる。
ああ栄冠は君に輝くリレー秘話
美里工・大城稜真
沖縄の指導者にリレー方式によって歌われた「ああ栄冠は君に輝くOkinawaVersion」が動画で配信されたが、
沖縄県はもちろん、全国の球児たちにもエールを送ろうと、県内の先生方がリレー方式で「ああ栄冠は君に輝く」を歌っている。その誕生秘話を今回ドットコムに話してくれた。
神谷監督「座談会をやったでしょ。あとあと帰ってきてすぐあとなんだよ」
夜の10:30頃、愛犬を連れて散歩に出掛けた神谷監督。すると一件の電話が鳴る。興南高校我喜屋監督だった。
神谷監督「神谷くん。ああ栄冠は君に輝くを、みんなで歌おうじゃないか。そして君が発信してくれないかと。」
電話はそれだけであったが、神谷監督は即座にひらめき、脳裏にイメージを広げた。
神谷監督「星野源さんが、コロナのときの自粛でコラボを作った。あれだなとすぐにピンときた。」
散歩を続けながら、教え子でもある沖縄県のシンガーソングライター「ミヤギマモル」氏へ電話した神谷監督。ピアノと三線でミヤギマモル氏が曲を、神谷監督はシナリオを描いた。
神谷監督「二人とも興奮していて。その日は寝ないで没頭したんだよ」
美里工・神谷嘉宗監督
すぐに東京のミュージシャンに連絡したミヤギマモル氏の、曲のデモが届いたのが夜中。それから「三線入れたほうが良いですよね」などやりとりしつつ、陽が登ってのお昼13時過ぎに、ああ栄冠は君に輝くOkinawaVersionの曲が完成した。
神谷監督「その昼ですね。我喜屋監督や公也監督らに、ああ栄冠は君に輝くのリレーメッセージをやろうと伝えて。彼らも積極的にやりましょうと言ってくれた」
お昼過ぎから各校の先生方で、ああ栄冠は君に輝くのパートを歌い、それを神谷監督に送った。「堅いなぁ。」何度か撮り直しした各先生方たちの映像と音源をミックスしたミヤギマモル氏。神谷監督は、その日の夜7時過ぎに動画をYouTubeへアップし公開した。
神谷監督「僕らなりのエールを、出来るだけ早く生徒たちに見てもらいたくて。」
我喜屋監督から電話が来て、48時間以内にアップした圧倒的なスピード。先生たちの思いは県内の選手たちだけでなく全国へ。週末には民放番組などでも取り上げられた。
聖地甲子園を目指すことは叶わないが、同じ思いで最後の夏を走り抜けることは可能だ。これまでやってきた自主練が、ここ沖縄では6月の中旬から校庭で通常練習を再開できる見込みだ。7月4日はアメリカの独立記念日だが、その日三年生たちにとって一生忘れられない夏の記念日が開幕する。
「諦めなければ夢はかなう!目指せ!心の甲子園!」
(取材:當山雅通)
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