第114回 群馬の実力校・樹徳の現在「何らかの試合をして締めくくらせてあげたい」2020年05月24日

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【目次】
[1]指揮官が明かした苦渋の胸の内
[2]お腹いっぱいにはならないかもしれないけど、野球はやらせてあげたい

 5月20日、第102回全国高等学校野球選手権大会・地方大会の中止が決定した。戦後では史上初の決定。今まで味わったことがない事態に、指導者、選手はどう受け止めて、次に動いているのか、各校の想いを紹介していきたい。今回紹介するのは、群馬桐生市の強豪・樹徳である。

指揮官が明かした苦渋の胸の内



井達監督の話を聞く樹徳選手たち ※写真は2019年8月から

 1991(平成3)年と翌年夏に、連続出場を果たしている群馬の実力校・樹徳である。その後には、一時的には低迷期もあったが、近年では県内2強と言われている前橋育英と高崎健康福祉大高崎(健大高崎)を同じ桐生市にある桐生第一と共に追いかけているという位置づけとなっている。

 その樹徳を現在率いるのは、92年夏の出場時の主将だった井達誠監督だ。井達監督は甲子園では2回戦で天理に接戦の末敗れるのだが、実は、その前の試合があの歴史的な「松井の5敬遠」として今も語り継がれている星稜明徳義塾の試合だったのだ。だから、騒然とした空気の中で試合開始を迎えたのが甲子園の記憶だという。

 昨夏はベスト8だったが、昨秋はベスト4に進出。その実績を持って一冬を過ごしてきた。いい手ごたえを感じながら、今シーズンを迎えた矢先での活動自粛ということになってしまった。

 それでも、群馬県の場合は感染者数もそれほど多くはなかったということもあって、3月当初は紅白戦なども短い時間ながら行えていたという。また、練習自粛となってからも、井達監督は、選手個々の家庭訪問をしていくという形で気持ちを切らさないようにということで、選手の顔を見るようにはしていたという。

 ただ、4月になって以降は、自粛要請が強くなってきたので、それもままならない状況になったのは致し方のないことか。
 「群馬県は、春季大会の開催もぎりぎりまで粘って頑張っていてくれたのですが、やはり中止となってしまいました。選手たちには、基本的には電話で話しながら、意識確認などを行っています」
 というのが4月から5月上旬の現状だったという。

 しかし先日、日本高野連と主催新聞社から、夏の全国高校野球大会の中止が発表された。
 「生徒たちも薄々はわかっていたでしょうし、覚悟していたかもしれませんでした。やはりこの現実を伝えるのに、自分としても最初は言葉がありませんでした。ただ、結果としては、(中止という事実を)受け入れるしかないのだから、そのことは強調して言いました。医療現場などでは、もっと苦労している人もいっぱいいるんだから、自分たちだけが辛いのではない、ということも伝えました」
 井達監督も、その苦渋の胸の内を話してくれた。

 それでも、群馬県の場合は、6月6日に今後の方向性が決定されることとなったという。今はその結果を待つということしかできない。

 樹徳の場合、グラウンドそのものは、学校から離れたところにあり、特に密の状態にはならないのではあるが、やはりグラウンドに一斉に集まることは控えている。それでも、やっと週3回は学校施設が使えるようになったので、その方針に沿って分散して2時間程度ずつ練習していくということにしている。これは、強豪のバスケットボール部なども同様だという。

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樹徳 【高校別データ】

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プロフィール

手束仁
手束 仁
  • 生年月日:1956年
  • 出身地:愛知県
  • ■ 経歴
     愛知県知多市出身。半田高→國學院大81年卒。大映映像事業部など映像会社で、映画・ビデオなどの販売促進、営業等を経て、編集プロダクションに10年勤務後独立。
     99年に『熱中!甲子園』(双葉社)を仕掛け、を刊行。同年に『都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社・刊)で本格的にスポーツ作家としてデビュー。99年12月に、『アンチ巨人!快楽読本』(双葉社)を企画編集・執筆。その後、『ふたりの勇気~東京六大学野球女子投手誕生物語』、『高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)などを相次いで刊行。さらに話題作となった『甲子園出場を目指すならコノ高校)』(駿台曜曜社)、『野球県民性』(祥伝社新書)、『プロ野球にとって正義とは何か』、『プロ野球「黄金世代」読本』、『プロ野球「悪党」読本』(いずれもイースト・プレス)などを刊行。
     さらには『高校野球のマネー事情』、『スポーツ(芸能文化)名言』シリーズ(日刊スポーツ出版社)、『球国愛知のプライド~高校野球ストーリー』などがある。
     2015年には高校野球史を追いかけながら、大会歌の誕生の背景を負った『ああ栄冠は君に輝く~大会歌誕生秘話・加賀大介物語』(双葉社)を刊行し18年には映画化された。

     スポーツをフィルターとして、指導者の思いや学校のあり方など奥底にあるものを追求するという姿勢を原点としている。そんな思いに基づいて、「高校生スポーツ新聞」特派記者としても契約。講演なども國學院大學で「現代スポーツ論」、立正大で「スポーツ法」、専修大学で「スポーツジャーナリズム論」などの特別講師。モノカキとしてのスポーツ論などを展開。
     その他には、社会現象にも敏感に、『人生の達人になる!徒然草』(メディア・ポート)、『かつて、日本に旧制高等学校があった』(蜜書房)なども刊行。文学と社会風俗、学校と教育現場などへの問題提起や、時代と文化現象などを独自の視点で見つめていく。 そうした中で、2012年に電子メディア展開も含めた、メディアミックスの会社として株式会社ジャスト・プランニングを設立。新たなメディアコンテンツを生み出していくものとして新たな境地を目指している。
  • ■ 著書
    都立城東高校甲子園出場物語~夢の実現』(三修社) 
    甲子園への助走~少年野球の世界は、今』(オーシャンライフ社)
    高校野球47の楽しみ方~野球地図と県民性』(三修社)

    話題作となった
    甲子園出場を目指すならコノ高校(増補改訂)』(駿台曜曜社)
    スポーツ進学するならコノ高校
    東京六大学野球女子投手誕生物語~ふたりの勇気』(三修社)
    三度のメシより高校野球』(駿台曜曜社)
    スポーツライターを目指す人たちへ~江夏の21球の盲点』(メディア・ポート)
    高校野球に学ぶ「流れ力」』(サンマーク出版)
    野球県民性』(祥伝社新書)
    野球スコアつけ方と分析』(西東社)
    流れの正体~もっと野球が好きになる』(日刊スポーツ出版社)NEW!
  • ■ 野球に限らずスポーツのあり方に対する思いは熱い。年間の野球試合観戦数は300試合に及ぶ。高校ラグビーやバレーボール、サッカーなども試合会場には積極的に顔を出すなど、スポーツに関しては、徹底した現場主義をモットーとしている。
  • ■ 手束仁 Official HP:熱中!甲子園
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