Column

令和2年度、東京都の異動で勢力構図に変化はあるのか

2020.04.07

 今春の高校野球は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、例年とは全く異なる状況になってしまっている。第92回センバツ大会も中止。春季都道府県大会も、軒並み中止が相次ぐという非常事態となっている。東京都も、一次ブロック予選も本大会も中止となってしまった。そんな中でも、教員の異動が発表されて、野球関係者でもいくつか新天地への異動が発表された。そんな異動状況を探ってみた。

西悠介監督が都立小岩に残したもの

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西悠介監督

 公立校の場合、教員の人事異動は避けられないものである。中には、その学校で取り組んでいこうとしていた事案の志半ばで異動を申し渡されたということもあるかもしれない。しかし、いずれにしても新天地では、新たな気持ちで迎えることであろう。それは、部活動としての野球部の指導においても同じではないだろうか。

 また、多くの野球部指導者は、それぞれ自分なりの理想の指導スタイルというのがあり、そこにもこだわりを示していくというところもある。それを異動先でどう伝えていくのかということもまた、指導者としての使命かもしれない。

 そんな指導者たちの動向も含めて、主な異動の様子を探り、そのことによってどんな展開になっていきそうなのか、希望的にイメージしてみたい。

 大きなところでは、都立小岩で実績を作っていた西悠介監督が、雪谷に異動となる。永山から都立小岩へ移動して6年、早稲田実→早稲田大という経歴の西監督は、自信が学んできた質の高い野球を都立小岩でもしっかり伝えていった。

 当初は、受け入れる選手たちの側にもやや戸惑いもあったようだが3年目以降には、かなり浸透してきて手ごたえも感じてきていたようだ。

 昨夏の東東京大会、都立広尾との3回戦などは8回まで1対4とリードされていながら、8回に一気にひっくり返して9回にもダメ押しの2点を加えて7対4で逆転勝ちした。
 「『公式戦の1勝は、100日分の練習に値する』ということは、早稲田実時代にもよく言われていたことですが、この1勝は本当にそのことを実感させてくれました。チームとしての成長を感じて、ここまでよくついてきてくれたと思うと、とても嬉しい」
と、素直に喜びを表してくれた。

 雪谷では当面、芝浩晃監督を支える責任教師という立場で指導していくようである。昨夏はシード校として戦った雪谷。指導体制がより整っていったことで、さらなる躍進が期待できそうだ。

[page_break:他にも気になる指導者たちの異動]

他にも気になる指導者たちの異動

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茶川剛史監督

 その都立小岩では、西監督とともに指導していた沖山敏広部長も淵江へ異動となった。そして、都立小岩へは淵江から茶川剛史監督が異動してきた。茶川監督は、都立城東の出身で2001(平成13)年夏に梨本浩司(現・文京)監督で2年ぶり2度目の甲子園出場を果たした時の主将でもある。その後、早稲田大の準硬式野球を経験して東京都の教員となった。

 西前監督の大学の先輩でもあり、年齢的にも近く、都立小岩に根付きかかったイズムは上手に引き継いでいかれるのではないかと期待が持てる。

 沖山氏は、都立小岩の前には葛飾野で監督を務め、時に大物食いをするチームとして注目を集めたこともある。淵江でどんな手腕を見せてくれるのか楽しみである。

 この地区では、もう一つ気になる異動があった。四商の園山蔵人監督が地元ともいえる江戸川への異動となったことだ。園山氏は、四商の前任だった王子総合時代には、試合前のアップの独特なパフォーマンスや特殊な色とデザインのユニフォームを考案するなどして選手たちの意識を高めていた。

 「地元民なので、江戸川高校が伝統のある学校であるということは承知しており、そこで指導に当たれるというのは、大変身の引き締まる思いです。感染症騒ぎで、きちんとした形でのスタートはなりませんでしたが、今、出来る準備をしっかりとして、1日でも早く生徒たちとグラウンドで会えるのを楽しみにしています。そして、江戸高旋風を巻き起こす手助けをしていかれればいいかなと思っています」
 と、思いを伝えてくれた。

 他には、注目される異動としてはかつて都立日野で指揮を執り、現在の都立の雄の基礎を築いた佐藤賢司氏が都立青山から、昨夏は10人で戦った都立八王子桑志へ、また四商から硬式野球部のない杉並総合に異動していた益子久氏が総合工科に異動し硬式野球の現場に復帰しそうだ。総合工科からは部長などを務めて会場校としての業務で手腕を発揮していた扇原進氏が武蔵丘に異動した。

 コロナウイルス感染拡大によって、今年度の高校野球は先行きが見えない状態になってしまった。それでも、少しでも明るく希望を持てるような意識で、それぞれの指導者たちは立ち向かっているはずだ。今は我慢、辛抱の時間かもしれない。それでも、思いは失わないで欲しい。

 1日も早く、グラウンドで球児たちの声が響き渡る、いつもの日常が戻ってきて欲しい。そのことを願ってやまない。

(文=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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