森、会沢に続く次世代「強打の捕手」は九鬼隆平に期待!
20日、ソフトバンクやMLBのマリナーズなどで活躍した城島健司氏が、15年ぶりに古巣の福岡ソフトバンクホークスに復帰し、新設される球団会長付特別アドバイザーに就任することが発表された。城島氏と言えば、強肩を活かした捕手としての能力はもちろん、そのパワフルな打撃から「強打の捕手」の代表格として知られた選手だ。
近年は減少傾向にある「強打の捕手」だが、今季パ・リーグMVPに輝いた森友哉(西武)や、広島の捕手としては史上最高額の3年6億4000万円(推定)で契約を結んだ会沢翼など、存在感を示す捕手も増えてきた。彼らに続く次世代の「強打の捕手」になりうる存在はいるのだろうか。
セ・リーグこそ必要としている強打の捕手
九州学院時代は捕手をしていた村上宗隆
90年代から2000年代にかけては城島をはじめ、古田敦也(ヤクルト)、谷繫元信(横浜・中日)、阿部慎之助(巨人)、里崎智也(ロッテ)など、多くの捕手が打撃でも活躍し、同時にそれらのチームが優勝争いを繰り広げていた。しかし近年は、彼らに並ぶような打てる捕手の存在は減ってきた。
守備力に不安がある捕手の打力を活かすためにコンバートをしたり、そもそもドラフト上位での捕手指名が減るなど、もしかしたら現場レベルでは打てる捕手の需要そのものが、以前ほどないのかもしれない。
特に、パ・リーグであればDH制を採用しているため、多少捕手が打てなくとも、指名打者の打力でカバーできてしまう。どちらかと言うと、DH制のないセ・リーグの方が、打てる捕手による影響が大きいと言えるだろう。その証拠に、セ・リーグ3連覇を果たした広島には会沢がいて、その前に覇権を争った巨人には阿部が、中日には谷繫がいた。
上記の選手たちが引退してから、プロ野球界をけん引してきた阿部も、故障のため一塁手にコンバートされるなど現役の終盤は「強打の捕手」としての活躍は見せることができなかった。
コンバートの例を見ていくと、広島の坂倉将吾は高卒1年目からファームで99試合に出場し、リーグ2位の打率.298を記録。未来の正捕手として期待されたが、その年のドラフトで中村奨成の獲得などもあり、今季は外野手としてのプレイも増えている。
また、今季新人王を獲得した村上宗隆も、九州学院時代は1年時から4番を打ち、高校通算52本塁打を放った捕手だった。プロ入り後、1学年上の古賀優大が捕手として力をつけていたこともあり、打力を活かすために内野手にコンバート。結果として2年目の大ブレイクにつながったが、強打の捕手誕生とはならなかった。
オリックスの頓宮裕真も、亜細亜大時代は大学日本代表の4番を打ったスラッガーだったが、プロでは内野手登録となっている。ここに挙げたのは一部だが、アマチュア時代に打撃で知られた捕手の多くは、その打力を活かすためにコンバートすることが少なくない。では、「強打の捕手」は本当にいなくなってしまったのだろうか。
[page_break: 森友哉、会沢翼に続く新世代の「強打の捕手」]森友哉、会沢翼に続く新世代の「強打の捕手」
首位打者とMVPのダブル受賞に輝いた森友哉
そんな心配を吹き飛ばすような活躍を見せてくれたのが、森だ。ルーキーイヤーから一軍で通用する打撃を見せてきた森だったが、それゆえに外野手としての起用も多かった。しかし捕手としても徐々に力をつけ、2018年には炭谷から正捕手の座を奪うと、今季は首位打者とMVPのダブル受賞に輝いた。
会沢も、2014年に規定打席未到達ながら打率3割を記録すると、少しずつ出場機会を増やし、今季は自身初となる規定打席に到達。大型契約も結び名実ともに強打の捕手としての地位を得た。
上記の二人にはまだ及ばないが、巨人の大城卓三も期待の存在だ。小林誠司、炭谷銀仁朗らの壁に阻まれてはいるが、プロ入り2年間で531打席、打率.265を残している。「強打」と言うにはまだ物足りないが、捕手としては十分と言える数字だ。今後の成長次第では花開く可能性もあるだろう。また、今季途中に日本ハムに移籍した宇佐見真吾も打力が長所で、移籍後は出場機会を増やしている。
高校時代の九鬼隆平
また、ファームや来季のルーキーにも目を移すと、楽しみな存在がいる。その一人が、城島氏が復帰したソフトバンクの九鬼隆平だ。秀岳館時代には通算26本塁打を放ち、4番として春夏連続で甲子園4強に導いた。3年目の今季はファームで93試合に出場、打率.259はリーグ5位の数字だ。加えて長打率.404はリーグ3位と、光るものを見せたシーズンだった。
九鬼以外にも、大学日本代表の4番を務め今秋ドラフトでロッテから2位指名を受けた佐藤都志也や、高卒1年目ながら一軍で初ヒットを放った中日の石橋康太など、期待が持てそうな選手は少なくない。
捕手と言えば、育成に時間がかかる上にどうしても守りが重視されるポジションではある。しかし、プロ野球ファンの多くはロマンを求め、夢を見たいと願っている。城島氏が活躍した頃のように、「強打の捕手」がひしめき合うような時代がまた来ることを、楽しみにしたい。
記事:林龍也