Column

ヤクルト・村上兄が激白 「野球は大学4年春でやめるつもりでした」。友幸を思い留まらせた安藤監督の一言

2019.11.22

準決勝でついに訪れた神宮のマウンド

ヤクルト・村上兄が激白 「野球は大学4年春でやめるつもりでした」。友幸を思い留まらせた安藤監督の一言 | 高校野球ドットコム
左:兄の友幸 右:弟の宗隆

 諦めなかったこそ訪れた神宮のマウンドだった。

 11月19日、明治神宮大会大学の部準決勝、関西大vs東海大の一戦。東海大の先発マウンドに登ったのは村上友幸(4年・東海大星翔)だった。

 この秋に浮上し、横浜市長杯の決勝戦までチャンスを与えられ、神宮大会のベンチ入りをつかんだ。

 しかし思うような結果を残せなかった。初回に3点を取られてしまい、2回は無失点で抑えたものの、この回で降板となった。安藤強監督からチャンスを与えてもらった村上にとっては痛恨の思いだった。

 「安藤監督を胴上げしたい思いでマウンドに登りましたから。負けたくない試合でしたし、悔しかったです」
 うなだれる村上。この1試合は村上の4年間だけではなく、投手人生の集大成をかけた試合でもあった。

 東海大星翔時代から193センチの長身から最速148キロの速球を投げる速球派右腕として注目された。だからこそ自分の速球でアピールしてプロに行きたい思いがあった。
 「真っすぐに対するこだわりが非常に強くて、四球を出しても150キロ近い速球を投げれればいい。今、考えれば、自己中心的で、チームのことを考えていない投手でした」

 そんな村上の考えを変えた試合が最後の夏の多良木戦だった。先発した村上は1回を投げることができず、降板した。
 「スピードだけ狙っていて、自滅して夏を終わらせてしまったんです」

 そして東海大に入学して、チームを勝たせたい。切れの良いストレートをテンポよく投げて、野手のリズムを作る考えに変わっていった。
ただ、大学ではケガもあり、思うようなピッチングもできない。4年春までリーグ戦の登板がなく、シーズンを終えた。

[page_break:弟と比べられるのはしんどかった時期が。野球は辞めさせなかった安藤監督の一言]

弟と比べられるのはしんどかった時期が。野球は辞めさせなかった安藤監督の一言

ヤクルト・村上兄が激白 「野球は大学4年春でやめるつもりでした」。友幸を思い留まらせた安藤監督の一言 | 高校野球ドットコム
高校時代の村上友幸

 そして今年初めから弟・村上宗隆(東京ヤクルト)が一軍で活躍しはじめ、自分ではなく、弟の話題にした取材が兄に集中する。

 「もう弟と比べられるのがしんどかったですね。取材があれば、弟、弟。投げていても弟だったんです。だから監督さんに4年春が終わった後に野球を辞めますと話したんです」

 しかし安藤監督は反対した。
 「監督さんから『もったいないから辞めるな。進路は俺が何とかするから、続けろ』といわれ、頑張ろうと」 
 193センチ89キロの体格から投げ込む速球の最速は147キロ。安藤監督は村上のポテンシャルの高さ、可能性の高さを評価し、思い留まらせたのだ。

 そして秋へ向けて練習を重ねた村上はリーグ戦でベンチ入りを果たし、10月21日の筑波大戦でリーグ戦初登板。先発した村上は6回1失点の好投で試合を作った。自信が描くコントロール重視のピッチングも少しずつ手ごたえをつかんでいる。

 「今も力を入れれば、147キロは出ると思うんですけど、コントロール重視でコーナーに投げれば、ゴロを打たせられる確率は高まりました」
 最後の登板では悔しい結果に終わったが、野球を諦めなかったからこそリーグ戦初登板も実現し、そして社会人野球を続ける道もできた。今では弟と同じプロの舞台でプレーすることに燃えている。

 

 村上が進む企業は、2020年から硬式野球部が創設され、その一期生としてプレーする。強豪企業と比べればずっとチャンスはある。

 振り返れば高校も、大学も、エースという立場ではなかった。公式戦でも目立った活躍をしていない。それでも自分の素質に期待をかけて起用し、さらに進路を見つけた安藤監督、そして自分を採用した企業に恩返しするために中心投手として活躍するだけである。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.22

【埼玉】花咲徳栄は伊奈学園と、昌平は正智深谷と初戦で対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【仙台六大学】東北高で4番を打った1年生・佐藤玲磨が決めた!東北工業大が“サヨナラ返し”

2024.04.22

【春季愛知県大会】日本福祉大附が4点差をはね返して中部大一に逆転勝ち、ベスト8に進出

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.17

仙台育英に”強気の”完投勝利したサウスポーに強力ライバル現る! 「心の緩みがあった」秋の悔しさでチーム内競争激化!【野球部訪問・東陵編②】

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.22

【埼玉】花咲徳栄は伊奈学園と、昌平は正智深谷と初戦で対戦<春季県大会組み合わせ>

2024.04.17

【兵庫】20日にセンバツ準優勝の報徳学園が春初戦!夏の第1シード、第2シードも出揃う予定!

2024.04.17

青森大にソフトバンク2選手の弟、青森山田の4番打者、横浜創学館大型外野手らが加入!

2024.04.09

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.14

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!