絶対に諦めない戦闘集団へ変貌した帝京!復活へのプロセスを探る
この秋、4強入りした帝京。選抜が大きく前進する都大会制覇まであと2勝。特に強豪・日大三に競り勝ったことで、10年ぶりの優勝の期待も高くなっている。それが狙える位置がきたのは近年の取り組みと今年のチーム作りが生きている。
打撃の帝京と守備の帝京の融合
攻守の要・小松涼馬(帝京)
帝京といえば強打。今年のチームはその路線を引き継ぎ、夏場から徹底的に打撃を強化し、都大会ではチーム打率.327、5本塁打、33得点と強打を発揮している。
打線の中心は夏の東東京大会、秋季都大会でも本塁打を放っている加田 拓哉、強打のセカンド・小松 涼馬が控え、隙の無い打線となった。
ただこのチーム、本質的には守備のチームだといえる。守備の中心は強肩で粘り強いリードを見せる2年生捕手・新垣 煕博、投手ながら粘っこい守備を見せる武者 倫太郎、二塁・小松、遊撃・武藤闘夢、センター・加田とセンターラインを中心とした守備は鉄壁だ。
前田監督は「打線を強化したといっても、やはり波がありますから、そこは前チームを経験している選手たちが良く守っていると思います」と語るように、前チームは打撃より守備を強化していたチームで「守備の帝京」といわれていたほどだ。
だから前チームから二遊間を組んでいた小松、武藤の守備は洗練されている。そして話題となった日大三戦で光る動きを見せたのは、センターの加田。初回、4回のセンター併殺、5回の二死から中飛と再三にわたってファインプレー。日大三の攻撃の勢いを阻止した大きなプレーだった。
加田は神宮第二の人工芝に大きく滑り、左腕が擦れて、傷ができるほどの気迫あふれるプレーだった。このプレーも前チーム主将の大内智貴から学んだことが大きい。大内は守備範囲、ポジショニングが優れたセンターだったが、加田は大内から前方への打球処理の追い方を学び、それが日大三戦のダイビングキャッチにつながったのだ。
つまり打撃強化した今年のチームの取り組み、守備を強化してきた昨年のチームの取り組みが上手く融合して、攻守ともに隙の無いチームへ成長したのだ。前田監督はいう。
「もう今は140キロ、150キロを投げて、ガンガン三振を奪える投手はいないからね。確かに力強いピッチングは求めているけど、強い攻めの中で内野ゴロを生んでいるから良く守っている」と技巧派の左腕・田代涼太、右腕・柳沼勇輝を盛り立てた守備ができている。
戦闘集団に育てた主将・加田の存在
チームを牽引する加田 拓哉主将
また今年のチームで欠かせないのが主将の加田の存在だ。大阪・住吉ボーイズ出身で、170センチ70キロの加田は人一倍気持ちが強い。加田は前田監督に誘われ、「あまりいけていないからこそ、自分たちで甲子園に行きたかった」と帝京に入学。そこで感じたのは選手たちのおとなしさだったそう。
「関西に比べて関東の選手はおとなしい感じがしました」
そして主将に就任した加田はOBから「最近の帝京は馴れ合いになっている。もっと厳しく指摘しあえ」と指摘され、加田は人一倍、チームメイトに厳しく当たった。
「1つのミスでも許さない雰囲気にしました。その結果、お互いが指摘しあうようになりました」
その結果、今年のチームはプレッシャーに強くなったと語る。
「練習から簡単なミスを許さない雰囲気になっているので、そういうところは勝負所の守りにもつながっていると思います」
今年は守備練習の割合が減ったが、それでも堅い守備を見せているのは、常日頃から緊張感を保って練習していることが大きいだろう。そんな加田の存在について前田監督は「僕が言わなくても加田が言ってくれることから大変助かりますよ。加田を主将にして正解でした」と大絶賛。
そして[stadium]神宮第二[/stadium]のラストゲームとなった日大三戦では2対1で辛勝。前田監督は「いいゲームだった」と選手たちをたたえた。でも選手たちも満足していない。前田監督は「選手もまだまだと声を出し合っている。また1週間、いい練習をしてきます」
準決勝へ向けてさらにレベルアップすると誓った。準決勝の相手は創価は総合力でいえば、東京都ナンバーワンの優勝候補だ。日大三以上に強敵である。大観衆が集まる[stadium]神宮球場[/stadium]で復活した姿を示すことができるか注目が集まる。
記事=河嶋 宗一