第88回 甲子園ブラバン新神曲・國學院久我山「一本」誕生秘話  ~「歌」と「歌詞」の魅力を発揮させた「神曲」~2019年09月03日

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【目次】
[1]「一本出せよ!」を響かせるために
[2]聖地での感動を胸に次の「神曲」へ

 2019年夏、春夏遭わせて6回目の甲子園出場で悲願の初勝利をあげ、國學院久我山(西東京)、その大きな原動力となったのが高校野球ドットコム選定「最優秀応援団賞」にも輝いた熱き声援、そしてテレビアニメ「タッチ」挿入歌「星のシルエット」を編曲し、歌詞を付けたチャンステーマ「一本」であった。

 1回戦で2013年に初出場初優勝を果たした前橋育英(群馬)を鮮やかに逆転した時にも、2回戦・敦賀気比(福井)戦の最終回二死走者なしから得点を奪った時にも流れ続けていたまさに「甲子園ブラバンの新神曲」。今回はその誕生秘話を音楽的観点も交え、同校1989年度(平成元年度)吹奏楽部OB・コーチを務めるフリューゲルホーン&トランペットプレイヤーであり、作詞・作曲・編曲家も務めるYUHKIさんに聴いた。

「一本出せよ!」を響かせるために



國學院久我山平成元年度(1989年度)OB・フリューゲルホーン&トランペットプレイヤー・作詞作曲編曲家のYUHKI(ユウキ)さん<写真:本人提供>

 「この骨格を作ったのはすごいなあ……」
 2016年夏、西東京大会を前にした野球部応援担当と吹奏楽部の打ち合わせ。YUHKIさんは野球部から編曲を依頼されたチャンステーマに、思わすこんな声を漏らした。

 その曲とは当時野球部2年生の東 祥太郎さん(現:学習院大2年・投手)が「子どものころから見ていて気に入っていた」と自作で作成、同年春からアカペラで応援に持ち込んでいたテレビアニメ「タッチ」の挿入歌「星のシルエット」モチーフにした「一本」である。

 元の曲は志半ばで交通事故で亡くなった上杉和也が遺された双子の弟・上杉達也と恋焦がれていた幼馴染、浅倉南へ天から語り掛けるバラード。「音源を聴いても野球のシーンは思い浮かばない」スローテンポから、グラウンドで戦う選手たちに対し、スタンドから想いを託す歌詞を編み出した彼の才能に、YUHKIさんは驚くばかりだった。

 ただ同時に、このままでは吹奏楽に適さないことも事実。そこでYUHKIさんは「歌と歌詞の魅力を発揮する」を軸とし、続いて2つのテーマを決めて編曲に取り組んだ。
1.バラード性を取りながら願いを込めた曲調にする
2.シンプルにしつつ、サビの「一本出せよ!」の声がスタジアムで響くようにする

 「ですので、実はこの「一本」には本来、吹奏楽の主力となるトランペットは最後のほうにしか使っていないんです」。YUHKIさんの指摘を受け改めて「一本」を聴いてみると……確かに「一本出せよ!」を囲むようにしかトランペットが入っていないのである。

 「野球部をはじめ、みんなが全力で歌ってくれることで、全体でカッコよくなるようにしました」

 そしてYUHKIさんをはじめ、みんなの願いは届く。同年から早くも西東京大会で話題となった國學院久我山「一本」は、導入4年目を迎えた2019年夏の西東京大会で勝利を呼び込む「神曲」へと進化。準々決勝・早稲田実業戦でのサヨナラ満塁ホームラン、準決勝の大本命・東海大菅生を撃破した先にあったのは、9回表に創価を突き放しての28年ぶり3回目、夏の甲子園出場だった。

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プロフィール

西純矢(創志学園)

 本名:大坂 結城 1971年 東京都生まれ
 幼少期からトランペットなど音楽に親しみ、國學院久我山高では吹奏楽部で活躍。なお、高校時代の同級生は1990年にプロ初打席初本塁打をマークした佐伯 秀喜さん(元西武ライオンズ)、ゴスペラーズリーダーの村上 てつやさん(高校時代はサッカー部)と黒澤 薫さん、箱根駅伝3年連続区間新記録保持者の武井 隆次さん(早稲田大~エスビー食品)、明治大・伊勢丹とラグビー部で活躍し、現在動物愛護団体『Do One Good』代表理事の高橋 一聡さんなど各方面に多数。

 さらに國學院大進学後からは様々なジャンルの音楽に幅を広げ、現在はフリューゲルホーン&トランペットプレイヤー、作詞・作曲・編曲家として活躍。11年前からはOBとして國學院久我山高吹奏楽部のコーチも務めている。

公式HP http://yuhki-music.com/index.html
Twitter@yuhki_n_pop
Instagram@yuhki_n_pop

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