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「日没コールドゲーム」の定義と「その前」は?

2019.08.28

「日没コールドゲーム」の定義と「その前」は? | 高校野球ドットコム
中村剛也(埼玉西武ライオンズ)

 8月28日(水)、[stadium]釧路市民球場[/stadium]で行われた北海道日本ハムファイターズ(以下・北海道日本ハム)vs埼玉西武ライオンズ(以下、埼玉西武)・第23回戦は非常に珍しい結末となりました。

 時折雨も降る曇天模様の空が球場を覆いつくす中、試合は7回までに埼玉西武が中村 剛也選手の24号2ラン・25号3ラン本塁打を含む13安打9得点、対する北海道日本ハムも11安打8得点を奪う大乱戦に。そして8回表・先頭打者の埼玉西武・森 友哉捕手が石川 直也投手からセンター奥深くに18号ソロを叩きこむと、審判団が集まって何やら協議を始めました。

 数分後、森 健次郎主審がマイクによって場内に告げたのは「この試合を日没コールドとします」。なんと10対8の2点差にもかかわらず16時32分。試合を唐突に終わらせてしまったのです。

 ただ、映像を見れば「これは仕方がない」といえます。森選手のホームラン時にセンターを守っていた北海道日本ハム・西川 遥輝選手は一瞬、ボールを見失っていますし、そもそも釧路市民球場にはナイター設備がありません。この日の釧路市の日の入り時刻は18時5分でしたが、雨交じりの曇天となれば1時間以上暗くなる時間も早くなります。

 パ・リーグとしては同じくナイター照明のない[stadium]札幌市円山球場[/stadium]で開催された1999年6月20日のオリックス・ブルーウェーブvs近鉄バファローズ以来、20年ぶりの珍事とはなりましたが、選手たちのケガ防止や平日にもかかわらず11,305人が詰めかけた観客の皆さんに安全な帰路を提供するためにも、審判団の判断は「ナイスジャッジ」でした。

 ただ、実は公認野球規則には「日没コールド」の条項は存在しません。あるのは試合続行が難しくなった時点で試合を止め、翌日以降にその状態から再び試合を始める「サスペンドゲーム」のみ。この日没コールド規定は1994年にパ・リーグ内で決められた「照明設備のない球場で日没により試合続行が不可能と判断した場合には日没コールドゲームを採用する」アグリーメント(試合協定事項)によって定められた日本独自のルールなのです。なお、セ・リーグや交流戦では以前からサスペンデッドゲームは採用せず、日没コールドゲーム規定を採用していることも書き加えておきましょう。

 では、それ以前にプロ野球(NPB)で「サスペンデッドゲーム」はあったのか?実は直近では32年前にありました。それは1987年5月23日・新潟県柏崎市の柏崎佐藤池野球場の球場開きとして開催された南海ホークスvsロッテオリオンズ7回戦です。

 この試合は13時試合開始予定が雨によって30分試合開始が遅れ、さらに試合中に1時間雨天で中断。そして17時44分。8回表・ロッテオリオンズの攻撃中、4対4の同点でついに照明設備がないため試合続行が限界となりサスペンデッドゲームが宣言されたのです。

 この試合には珍しい続きがあります。続行試合は後に同カードの次回開催となる7月7日に決まったのですが、球場は新潟から1000キロ以上離れた福岡県福岡市の平和台野球場(1997年閉鎖)。さらにこの日も雨で流れ、7月8日に南海ホークスのサヨナラ勝ちでようやく決着しました。ちなみにホークスが福岡にやってくるのはこの一年数か月後のことです。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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