【宮城県高野連 リーダー研修会・後編】仙台育英・郡司 裕也捕手がU-18で学んだこととは?
12月12日、「第12回宮城県高等学校野球連盟リーダー研修会」が仙台工で開催され、県内の硬式野球部、軟式野球部で主将を務める79名が参加。体験発表では、仙台育英の佐々木柊野前主将が甲子園の経験を語った。後編では、U-18ワールドカップに出場した仙台育英の郡司裕也捕手(関連コラム)が日本代表での体験を話した。今回、2週間という短い期間で急造チームをいかに団結力ある集団にしたのか。それは自分達の高校野球部に置き換えても参考になるものだった。
1日1回必ず会話をすること
仙台育英・郡司 裕也捕手
冒頭で「その場で思いついた」と言うクイズを出した。
「日本代表は急増チーム。結成して最初にやることは?」
挙手を求めたが、なかなか手は上がらず。そこで仙台育英の現主将である瀬戸泰地を指名した。「お互いに知らないことがあるので、コミュニケーションをとって、その人がどんな人なのかということをチーム全体で話す必要があるのかなと思います」と瀬戸が答えると、「その通りですね。素晴らしいです。さすが仙台育英ですね」と郡司。会場からは笑いが起こり、場が和んだところで本題へ。
「みんな、知らない人の集まり。まずはコミュニケーションをとって仲良くなることから始めないといけません。高校野球であれば、3年間を通じ、1年、1年、積み重ねて仲良くなり、最後の夏に照準を合わせられます。しかし、日本代表は急増チームで2週間しか期間がありません。自分たちがやってきたのは、1日1回、全員と必ず会話をすることでした。そうすることでコミュニケーションをはかり、結果、いいチームになり、最後は準優勝まで行くことができました」
次に国際大会ならではの視点から活躍する選手のタイプを話した。ヘッドホンをしてベンチに入ってきたり、ベンチでカップラーメンを食べたり、ベンチ前で写真を撮って遊んでいたり……。
「そういうことをしているのにも関わらず、試合になった瞬間に凄まじい集中力を発揮してとてつもないプレーをします。日本の高校野球ではありえないことですが、そういう切り替えの上手い人が土壇場やいざという時にいいプレーができるんじゃないかなと感じました。日本の高校野球だと日々の生活や過程を大事にし、それが試合につながるとされていると思うのですが、外国人選手を見て、オンとオフの切り替えをできる選手が本番で自分の最大限の力を発揮したり、ここぞで活躍したりできるのではないかと感じました」
アメリカとの決勝戦も振り返り、「1球の重み」を話した。
「予選で一度、佐藤世那(2015年インタビュー)と自分の育英バッテリーで完封(試合レポート)していますが、決勝になった途端、アメリカの選手たちは闘志をむき出しにして襲いかかってきました。予選は手を抜いていたなと感じました。決勝は1対2で負けたのですが、甲子園決勝でホームランを打たれた1球のように、世那がちょっと気を抜いてサードに投げたボールが悪送球になって失点しました。
先ほど、柊野が『気を抜いてはいけない』『油断をしてはいけない』と言っていましたが、本当にそれは大事。甲子園決勝もW杯決勝も気を抜いた1球で負けてしまったので、1球の重みを身を以て感じました。その1球で涙を飲んでしまうので、ここにいる皆さんには1球たりとも気を抜いてほしくないと思います」
U-18ではみんながリーダーのようだった
U-18で活躍した仙台育英・郡司 裕也捕手
自身の日の丸経験を話すだけでなく、日本代表を通して、チーム論も伝えた。
「柊野が『みんながリーダーである集団がいい』と言っていたのですが、日本代表も同じでした。キャプテンは敦賀気比の篠原涼(関連コラム)でしたが、振り返ってみると、いい意味で誰がリーダーだったか分からなかったと思います。影が薄いということではなく、みんながリーダーみたいだから、誰がリーダーか分からない。そういう集団が最後は勝つのではないかと感じました。
ここにキャプテンが集まっていると思いますが、柊野が言ったように『自分がやらなきゃ』ではなく、仲間から信頼してもらって、仲間の意見、特に試合に出ていない人たちの意見を尊重することでチームの輪が作られていくと思います。リーダーが誰か分からないようなチームを目指していけば、最後、いいことが起こるんじゃないかなと思います」
最後に宮城の後輩たちへ、「自分は甲子園もW杯も決勝で敗れてしまいました。宮城県の後輩たちに自分たちが果たせなかった、(甲子園の)東北勢初優勝、世界大会優勝をしてほしいと期待しています」とメッセージを送った。
講演では、宮城県出身でパキスタン代表監督の色川 冬馬氏(関連コラム【前編】 【後編】)が「夢中力とレジリエンス」と題し、海外の体験を話した。講座は、スポーツプログラムスの鈴木 哲也氏が「成長志向~成長志向力を磨いて自分自身とチームを強くしよう~」と題して話した。
午後からは8つのグループに分かれて分科会が行われ、チームの運営や練習メニューに関して議論された。
2014年、15年と2年連続で全国に駒を進めた仙台商軟式野球部の佐藤 優大主将は「午前中はキャプテンとして必要な考え方を学べた。分科会ではいろんなチームの練習メニューを聞いて真似したいと思うメニューがあったので早速、やってみたい」と有意義な時間になった様子。現在、仙台商軟式野球部は2年生が12人ながら、1年生は5人。「(来年の)新入生にたくさん入ってほしい」と話し、目標は「3年連続で全国に行って、日本一になりたい」と力を込めた。
県の21世紀枠の候補となった石巻の千葉 大誠主将は「東北地区では選ばれなかったが、地域からの期待は増えたと思う。練習時間を多く取れないのが悩みだったが、分科会で(他校の主将が)考えて答えてくれた。チームに持ち帰りたい」と話した。
やはり年齢が近い先輩たちが語るものこそ、実感がこもっている。今回の2人の言葉が宮城県高野連のチームの主将へ響いたことだろう。この積み重ねが宮城県の高校野球のさらなる発展になることを願いたい。
(取材/写真・高橋 昌江)